食後



 食事が終わると、ヴァリアッテは食事の合図をしたのと同じようにベルを鳴らしました。

 ベルが鳴ると、アッサンとリーネが再び部屋に入ってきて、食器などを片付けていき、一礼して出て行きました。


「さて、そろそろ行かねばならんな」


 朝食を食べ終えてから、ヴァリアッテは仕事をしにお城へと向かいます。

 本当は魔王であるヴァリアッテはお城に住むべきなのですが、広い上に冷たくて物寂しい場所だと感じてしまうので、近くに館を作り、そこからお城に行くようにしています。


 惑星ヴァルにおいて、お城は魔王の居城であると同時に、政治を行うシンボルのような場所であったりします。議決権を持つ十二使徒も定時になると入城してきて、ヴァルのこれからの事などを話し合いをしますので、お城は特別な場所として見られています。


 十二使徒とは違い、ヴァリアッテは必ず遅れて入城します。

 大物ぶりたいだとか、重役出勤だとかそういった理由ではなく、朝が弱いので定時に行けない上、お城にあまり長くはいたくないだけです。甘えだとか言われそうなのですが、ヴァリアッテに意見する者は、今のところ久能以外に誰もいません。魔王であるヴァリアッテに意見をしようなどとは恐れ多きことだとして誰もできないからです。


「今日もゆっくりしすぎだし、また遅れちゃうよ」


 久能がそう言うと、ヴァリアッテはキッと睨み付けて、


「余のしつけが行き届いていなかったな。そこになおれ」


 久能は言われるまま、その場に正座をしました。


「余に意見するとは百年早い」


 ヴァリアッテは足の裏で久能の顔をぐりぐりといたぶるのでした。


「……は、はい」


 久能の顔を踏んだりすると、しびれるような喜びがヴァリアッテの中を駆け抜けます。

 ヴァリアッテにいたぶられた久能の方も、しびれるような悦楽が全身を駆け抜けます。


 二人はそれで満足すると、部屋を出て、お城へと一緒に向かうのでした。

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