ヴァリアッテの一日 その3 朝食その2
ヴァリアッテの食事が終わるまで、久能は朝食を食べられません。
床に正座をして、ヴァリアッテが食事を終えるまで、その様子を見ているしかないのですが、久能的にはさほど気にしてはいませんでした。
ヴァリアッテは嫌いなもの以外は美味しそうに食べていて、好物のデザートを前にして目を輝かせ、口に入れた瞬間、とても幸せそうにしている姿は何度見ても飽きないものでした。
そして、食べ終えて、満足している表情もまた一段と愛らしいのです。
そんなにも愛らしいヴァリアッテの下僕になれて、と久能は満たされるのでした。
「もう良いぞ」
「では、いただきます」
その一言で、久能は朝食を食べ始めます。
もちろん正座したままで、お皿を持ち上げてお箸を使って食べます。
ヴァリアッテはお箸を使った事がなかったので、久能がお箸を使って食事する姿を最初は物珍しそうに見ていたのですが、便利そうだと分かると久能のを取り上げて使い始めました。
一回目は、久能よりも上手く扱えなかったので拗ねてしまいましたが、すぐに久能よりも起用に扱えるようになり、小豆であろうとも普通にお箸でつかめるようになりました。
その後すぐ、ヴァリアッテはすぐに自分用の箸を職人に作らせたのです。
「可愛いし、持ちやすい。これは良いものだな」
久能が住む日本のサクラをモチーフにした模様の入ったお箸でした。
スプーン、フォーク、ナイフ、お箸がヴァリアッテの前に並べられ、それらを巧みに使い分けながら食事をするようになりました。
「……まだか?」
ヴァリアッテはつまなそうな顔をしながら、久能の食事姿をじっと見守っています。
そんな目で見られていながらも、久能はゆっくりと食べます。
かき込むように食べると、食べ方が汚くなるせいか、ヴァリアッテが不機嫌になります。
なので、不快に感じさせないよう所作に気を配りますが、急いでは食べません。
「まだ食べ終わらぬのか? お前は本当にダメな奴なのだな」
ヴァリアッテにそうなじられるように言われるのが嬉しいからです。
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