ヴァリアッテの一日 その2 朝食


 ヴァリアッテが鈴の音を鳴らすと、オークのメイド長・アッサンと、エルフでメイド長補佐のリーネ・アーシュタインが朝食を運んで来ました。


 外見はいかついですがメイド長のアッサンは、とても繊細な上、几帳面な女性です。

 それに引き替え、メイド長補佐のリーネはおおざっぱな性格をしていて、繊細そうな美しさのある外見とは対照的であったりします。


 ヴァリアッテの食事はアッサンが机の上に置き、久能の食事はリーネが地面に置きました。

 二人の食事を置いた後、アッサンとリーネは一礼して、部屋を出て行きました。

 今日の朝食は根菜類のスープ、目玉焼き、パン、それと、ジュースでした。


「余が『良し』と言うまで食べては駄目だぞ」


「分かっているよ」


 これはいつもの事です。

 ヴァリアッテが食事を終えるまで、久能は朝食を食べる事ができません。


「久能、来い」


 ヴァリアッテは久能を呼びました。

 久能はヴァリアッテが何をしたいのかすぐに分かりましたが、あえて何も言わずに、ヴァリアッテのそばへと行き。ひざまづきました。


「口を開けよ」


 久能は言われるまま、口を開けました。


「余からの褒美である」


 ヴァリアッテはスープの中からにんじんをフォークで刺すと、それを久能の口の中へと運びました。

 久能はにんじんが口の中に入ってきたのを確認してから食べました。


「うむ、よろしい」


 ヴァリアッテはにんじんが嫌いでした。

 そのため、にんじんが入っていると、褒美と称して久能に食べさせているのです。



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る