ヴァリアッテの一日 その1 朝


 魔王ヴァリアッテ・スノーホワイトは朝が非常に弱かったりします。

 地球時間でいうところの午前八時に起きないといけないはずなのなのに、二度寝したり、ベッドの上でごろごろしていたりで起きるのはだいたい午前九時前だったりします。


 久能はヴァリアッテと同じ部屋に飼われているので、ヴァリアッテを起こそうかどうしようか毎朝悩んでいます。

 そろそろ起こそうかと決意するのは、だいたい午前八時二十分頃です。


「ヴァリアッテ様、そろそろ起きないと」


「余はねむいの」


 久能が起こそうとすると、ヴァリアッテの第一声は必ずその言葉でした。

 そう答えて、声をかけてきた久能を足の裏で軽く小突くように蹴りました。

 ヴァリアッテに蹴られた久能は、これでようやく今日一日が始まったと感じるのでした。


 久能を蹴ったヴァリアッテは、それで充実感が生まれ、気分がしゃっきりとしてきて、起きてもいいかなと思い始めます。

 でも、ヴァリアッテはまだ起きません。


「そろそろ時間ですよ、ヴァリアッテ様」


 起きているのは分かっていても、ベッドを出ようとしないヴァリアッテに久能はそう言いました。


「起きるには、まだ早い」


 ヴァリアッテはもう一度久能を蹴りましたが、今度は足先でした。

 すると、頭の中がすっきりとしてきて、ヴァリアッテは頃合いを見て、起きようと思うのでした。


 久能はというと、その蹴りで何故か安心するのでした。


 そして、次に久能に起こされた時にようやくヴァリアッテはベッドを出るのでした。

 もちろん、久能を足蹴にした後に。




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