小川のそばで
三角や四角の並びはすぐにまばらになり、木立がやがてふかふかとした森林になりました。どの木もめいっぱいに秋を着こんで、赤や黄をした毛糸の
あなたもブルームも、きょろきょろと辺りを見まわして
そのうち、こんもりとした葉のなかに
「なにかの実だ、きっとそうですよ」
よろこんで、もっとよく見ようと
「ひゃあ、おどろいた!」
ブルームが思わず身を引きます。けれども大丈夫。あなたを落とすようなことは決してありません。それよりも枝のうえで、みじかく高く鳴いているものがいます。
「おどろいたのはこちらですよ。羽の音もしないのに、どなたか空からいらっしゃるんですもの」
それは
――光っていたのはこれですね。
あなたは手をのばして梢のどんぐりに
「どうも失礼。ぼくたち、林檎の木を探してここまできたんです」
「林檎! いいですね」
りすが
「林檎はわたしも大好き。それなら、この先の小川をこえたところで見ましたよ」
――少しもらってもいいでしょうか?
「いいでしょうね。だれだって少しはとりますよ。特に今日みたいな日は」
あなたが聞くと、りすはまたうれしそうに
「ああ、いけない。わたしはもう少しこれを集めなくちゃあ。……向こうまでいくのならお気をつけて。今日は日暮れが早いですからね」
あなたたちがお礼を言ううちに、りすはさっと
梢の先をいくと、りすの言った通りに小川が見えてきました。さらさらとした流れが紅葉のなかを銀のすじになって走っています。
そのうちの、丸太の橋がかかっているところへ、あなたたちはおりていきました。橋のそばのやぶの手前に白くてふわふわしたものがいたからです。
「あのう、おたずねしますが」
ブルームが言いかけて、けれども言葉を引っこめました。
「ああ困ったぞ、困ったぞ」
白くてふわふわしたものは、なにごとか
「ああ、ああ困ったぞ、困ったぞお」
それがあまりにせわしなくて必死なようすでしたので、あなたはたずねました。
――どうしたんですか、うさぎさん。
「やあやあやあ人間さんにほうきさん」
白いうさぎは今気がついたように、あなたたちのそばへ寄ると、息つぎもせずに言いました。
「ちょうどいいところへきてくれた」「うさぎを見なかったかしらね」「わたしの連れなんだが」「丸々としていてけれどもそれほど大きくなくて」「黒と茶と灰の毛で」「きまじめでにぎやかでねぼすけなやつなんだ」
「待って、まってください」
ブルームがあわててとめます。
「よくわからないよ、ねえ店主さん」
――すみません、もう少しゆっくりお願いできますか。
あなたも
「なんだってちっとも通じないんだ、いいかいよく聞いて」
それから、うさぎはいちいち
「まず黒いのがいる……これがきまじめ。次に茶がいる……これがにぎやか。最後の灰が……ねぼすけなんだ」
とても辛ぼう強く、注意ぶかく話しているらしいのですが、そのあいだにも足ぶみをして落ちつきません。
「このうさぎさんは白くてせっかちってところだね」
ブルームがあなたにだけ聞こえるように言いました。あなたはちょっと笑って、またたずねます。
――みなさんばらばらに、どこかへいってしまったんですか?
「そうだよそう……。祭りの
「祭り? この森でも収穫祭をやるんですか?」
「……しゅう、かく、さい?」
うさぎは耳をぴんとして聞きました。
「町では明日、収穫祭があるんです」
――秋のお祭りですよ。
ブルームが言って、あなたがつけ足すと、うさぎの耳がぴくりとします。一言おきに息を深くして、
「へえ人間もなかなか……しゃれたことをするもんだ。だがこれは違う……、お月さまのお祭りだよ」
「お月さま?」
「そうそう、ここでは今夜やるのさ……
それで、とうとうたまらなくなったように、
「それなのにみんなちっとも帰ってきやしない!」
一言さけぶと、うさぎは目を回して転がってしまいました。
――ああ、大変。
あなたは両手から手袋を外して、ちいさな頭のしたに
「う、うーん」
うさぎはうっすらとまぶたを開けたり閉じたりしています。ブルームができるだけ、やさしい声で言いました。
「ぼくたち、これからずっと森を進んでいくんです。うさぎさんたちを見かけたら、きっと伝えておきますね」
「そうかい
せっかちうさぎはやっと安心したとみえて、またまぶたを閉じました。
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