最終話 選択
「……ヨウイチ。……要一。聞こえるか?ワシじゃ。グレイじゃ」
俺は光に包まれ、 気がつくと黒い闇が永遠に続く空間の中に居た。
目の前には黒と白の一対の翼を持つ半天使、グレイが居た。
そして。自分の体付きを見て分かった。これはニムトの身体じゃない。
「ここは……俺は……死んだのか……?」
俺はグレイに聞いた。
「逆じゃ。生き残ったんじゃ。エリスとの戦いに勝利したんじゃ。お前は!」
「ゲームクリアおめでとう!よくぞ我らが用意した、敵、エリスを討ち倒した」
「なぁ、おい。ゲームのクリア条件は生き残ることだよな?じゃあ天寿を真っ当するまでゲームクリアにはならないんじゃないの?」
俺はグレイに言った。
「バカめ。お前は不死になっとったじゃろ。お前を唯一殺せるのがエリスだったんじゃ。そのエリスを倒した今、お前を殺せる者はおらん。永遠にあの世界で生きたいのか?」
「とにかくゲームクリアおめでとう。上の者から話があるようじゃ」
「上の者?」
「バカめ!早く頭を垂れんか!」
グレイは跪いていた。
天上から光が差し込んだ。誰かがこっちを見ている。どんな人物かは確認できない。
「君は、自分は何事も成すことができないと、長い間感じていたね」
天上の人物はそう言った。
「しかし、君は成し遂げた。何かを為すのは強い情動なんだ」
「それを君には知って欲しかった」
俺は黙って聞いていた。
「そして、あの時信号を操作したのも私」
「あの時に戻って見る気はないかい?」
俺はーーーーーーーーーーーーーー。
◆◇◆◇
夏。余りにも暑い8月のある日。
俺はとある会社の面接に来ていた。
待合室で座り、
「御社の志望理由は……。御社の志望理由は……」
と、俺はブツブツと必死で考えてきた志望理由を諳んじようとしていた。
「あら、あなたまた会いませんでしたか?」
女の人に声をかけられた。
スーツに身を包んだ、長い髪の、端正な顔立ちの女性。
俺は、その顔にどこか見覚えがあるような感じがしていた。
「どこかで……会いましたっけ?」
俺は尋ねる。
「ホラ。前の会社でも会いましたよね?私はここで7社目です。この業界で未経験可のところだけ受けてるんですけど大変ですよね。なんだかんだでキャリアを聞いてくるし。もしかして、同業種からの転職ですか?」
「わ、私はフリーターだったので……」
俺はキョドっていた。
「奇遇ですね。私もフリーターだったんですよ」
にこやかに笑う女性。
「でも、落ちても大丈夫!なんて言えませんけど、受けることが大事なんですよ。きっと」
「だって受ける。落ちる。だって、何かを為したことには変わりないじゃないですか。そこには何かが生まれます。」
俺は、この先何かを為せるだろうか、そう漠然と不安に思っていた。
何かを為すなら。
そこにあるのは、強い思いだけ。
きっとそれが一番大事なんだろう。
8月の暑いある日のことだった。
異世界復讐譚 たくのしん @morethana
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます