第16話 ドラゴンが仲間になった!
「アナタ様大丈夫ですか! 一体何があったというのです!? (ちっドラゴンのヤツめ。ちゃんと役割を殺ればいいものを……この役立たずが!)」
わざとらしく俺を心配しながら肩を貸し立たせてくれた。何か小声で言ってたのは気のせいだよな? だが残念ながら俺の耳にはしっかりと聞こえていたのだ(泣)
「あのドラゴンはきっとお腹を空かせているんだと思います。ですからアナタ様はこうして道の真ん中にぼへらぁ~っとアホの子のようにお口をアングリっと開け放って立ってて下さいね。その隙にワタシとこの子は逃げますので。な~に丸呑みされると思いますから痛みなんてありませんから心配なさらないで下さいね!!」
「もきゅもきゅ♪」
奇しくも静音さんはまだ俺をドラゴンの生贄にして自分だけ逃げ遂せるつもりのようだ。また傍に居たもきゅ子も何故だか楽しげにしている。
「人間ヨ……」
「えっ? い、今の声は一体? ま、まさか……」
いきなり俺を呼ぶ声が聞こえたかと思って周りを見渡したが、誰もいなかった。そして一応こっちの方から聞こえたよねぇ~っとは理解していたけれど、敢えて見逃そうとしていた方を見てみる。
「ソウダ……我ガ呼ンダノダ」
そう俺を呼んだのは巨大なドラゴンだったのだ。どうやら人間の言葉を話せるみたいだ。そもそもアルフレッドのおっさんも俺と普通に会話してたのだが、あれはいいのかな?
「ああ言語ですか? あれはぶっちゃけ他所の言語考えるのが面倒で……いえ、今流行の
「み、未完成な世界に俺は連れて来られたのかよ。ってだから勝手に俺の説明文を
もはや俺の心の中の声は誰にでも閲覧できる状態となり、もはやドラゴンの声表記がカナだろうが何でもよくなっていた。
「それでは失礼ですが普通にお願いできますか?」
静音さんは読者に配慮して普通の文字で喋るようドラゴンさんに申し出ていた。
「面倒ダガ……承知シタ……」
その願いが通じたのか、ドラゴンは普通に喋ってくれるようだ。たぶんドラゴンも自分で言ってて疲れたんだと思う。
「こほん。あ~どもどもぉ~ワテの名は『
「……はあ~っ!?」
ドラゴンの言葉がいきなりの関西弁になったので戸惑ってしまう。しかも何故か人間道を教えられてしまった。まぁ言ってることは正論なんだけどね。
「とりあえず兄さんら姫さん攫ったんや、それ相応の覚悟できてるんやろうなぁ~」
ジズさんは先程とは打って変わり『がるるるる』っと唸り声をあげ睨みを利かせ、今にも俺を食い殺さんばかりに憤っている。
「も、もきゅもきゅ!」
「えっ? も、もきゅ子? お前俺を助けてくれるのか?」
もきゅ子は慌てて俺の前に出るとその短い腕を広げて守ろうとしてくれていた。
「なんや姫さん、その人間を庇うんでっか? なんで……ふーむ、なるなる。なんやそれやったら姫さんが勝手に兄さんらに付いて行っただけですやん! 兄さん、すんまへんでしたな~。どうやらワテの勘違いやったみたいですわ」
『ほんま、すんまへんでした……』っとジズさんはその大きな体を無理無理折り曲げて俺に向かって頭を下げようとしていた。
「いや、大丈夫だよ。誤解だったんでしょ? ならもういいからさ……」
先程まで敵認識だったとはいえ、数あるドラゴンを束ねる『冥王』に頭を下げられては俺の立つ瀬がない。すぐさま頭を上げるように言ってなんとか和解することになった。
「ほんなら誤解も解けたようやし姫さん、ワテらもウチに帰るで~」
「きゅ~っきゅ~っ」
ジズさんは自分と家に帰るよう声をかけたのだが、もきゅ子は俺のズボンの裾を掴んで悲しそうに鳴いていた。
「も、もきゅ子? お前家に帰りたくないのかよ?」
どうやら俺はもきゅ子から相当気に入られているようだ。何が何でも俺のことを離さないという姿勢がその手に込められた力からもみてとれる。
「なんやウチの姫さん、兄さんにえらい懐いたようでんな~。ウチの姫さんもこう見えて頑固やさかい、こりゃ離そうとしても離れてくれまへんわ。ちなみに兄さんら冒険者やんな? だったら姫さんも一緒に連れてってくれまへんか? 頼んますわ!!」
ジズさんは再び俺に頭を下げようとして慌てて止める事にした。
「いや、いいっていいって! 別に俺達も魔王を倒すのに仲間が増えるのは嬉しい事だしさ。むしろこっちからお願いしたいくらいだからそんな頭下げなくてもいいから!」
俺は魔王を倒し元の世界に戻るため、もきゅ子とジズさんの力を借りる事にした。
正直もきゅ子の存在はただ可愛いだけなので戦力外なのだが、その護衛のジズさんは俺達の中でも一番強そうだからである。まぁそれも当然といえば当然、何せジズさんはドラゴンなのだから。そして俺はほくそ笑み『これで魔王を倒せるぞ!』っと浮かれ調子でニヤケてしまうのだった。
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