第14話 モンスターの代表格登場!

 バサバサッ、バサバサッ……ドッスーン!!

 そして上空にいた巨大なドラゴンは大きな土煙と音を立てながら俺の目の前に地上へと降り立った。そのドラゴンの大きさは今出てきたばかりの家よりも倍以上の大きさであり、今にも俺を食べようと口からヨダレを垂らし見つめていた。


「ぐっ!? そ、そうだ!! アルフレッドさんも一緒に戦ってくれ! って、あのおっさんどこ行ったんだよ!? 何でいなくなってんだよ、もしかして……逃げたのか!?」

 俺はこの危機的状況下において先程まで敵だったアルフレッドにも共闘することを提案しようとしたのだが、どうゆうわけかアニメのように『テンテン……』という謎の効果音と共にそこにいたであろう事を指し示す囲み枠が残るだけで、本人の姿は見えなくなっていたのだ。


「あ~貧乏人の農夫ですか? あの人ならアナタ様が解説していた時にその大きなドラゴンに丸呑みされちゃいましたね。いやぁ~人ってあんな簡単に飲み込まれてしまうもんなんですねぇ~」

 静音さんは何故か他人事のようにアルフレッドのおっさんが食べられた事を語っている。


「おいそこのクソメイド。何か他人事のように言ってるけどさ、自分だって危ないんだぞ!! ほんとに状況理解してんのかよ!? そもそもアンタこの世界の管理人なんだろ? どうにかしろよ!」

 俺は吐き捨てるように静音さんへと叫び、助けを求めた。だがしかし……である。


「確かにワタシは管理人でもありますが、どうやらこのドラゴンはの存在のようなのです。つまりこの物語の『枠の外』から来たようなのです。ですからそんなの無理に決まってるでしょ(笑) それにこのドラゴンのターゲットはどうやらアナタ様だけのようですし、私と天音お嬢様には関係ないもん♪」


「何をいけしゃあしゃあっと言っていやがるんだよ、このクソメイド。ってか天音はどうしたんだ!?」

 まったく会話に参加してこないので、この物語のメインヒロイン兼勇者である天音の存在を忘れてしまっていた。


「ふふっ。どうやらようやく私の出番が回って来たようだな。キミ達、ここは勇者であるこの私に任せてくれないかな? な~にすぐ済むさ」

 天音は俺を押しのけるように前に出ると自分の存在をアピールしつつ、ゆっくりと左の腰に携えた剣を鞘から出そうと手にかけていた。どうやら天音は目の前にいる巨大なドラゴンとり合うらしい……レベル1の分際でな。


「静音さん静音さん。天音のヤツさ、このドラゴンと戦うみたいだけど大丈夫なの? そもそもドラゴンってボスクラスのモンスターだよね?」

「あ~そうみたいですね。ま、天音お嬢様は一応腐っても勇者なので大丈夫でしょ(笑) それにこの物語でのドラゴンは最弱キャラを拝命されているはずですしね」

 何か静音さんがさりげな~く天音の事をディスった感じがしたけど、この際捨て置くことにしよう。


「がるるるるるぅっ」

 どうやらドラゴンも天音のことを敵として認識したのか、唸り声をあげながら今にも襲い掛からんばかりに前屈みになり俺達を見下ろしていた。正直この場に天音達がいなければ俺は漏らしていたかもしれない。


「もきゅ~?」

 下にいる子供ドラゴンは『何が始まるの?』っと可愛らしく首を傾げ、俺のズボンの裾を引っ張っている。

「ふっ。そのような声をあげれば私が引くとでも思っているのか? どうやら私も随分舐められているようだな……いいだろう、この私『勇者天音』の本気を見せてやるぞ!! 覚悟しろドラゴンめっ!!」

 そう言って天音は名乗り上げると鞘から剣を引き抜くとまるで目の前にいるドラゴンに見せ付けるよう空高く掲げ、そして両手で持って腰を落とし姿勢を低くして攻撃する体制に入ったのだ。


「ご、ごくりっ……マジで戦闘が始まっちまうのか?」

 俺は極度の緊張感から生唾を飲み込み、状況を見守ることにした。そしてその瞬間は訪れた。

「はあぁぁぁぁぁーっ」

「へっ? えっ? えっ? えぇーっ!?」

 何を思ったか、天音は突如として俺の方へと振り返ると斬り込む動作のまま向かい走って来た。俺は突然のことで何が起こったのか理解できず、ただ驚きの声を上げるだけで精一杯であった。


「あーっ! どうやら天音お嬢様のターゲットはそこにいるその子・・・になっているようですね」

 静音さんは俺の脚にしがみ付いている子供ドラゴンへと目を向けながらそう言った。どうやら最初から天音の目標はこの子供ドラゴンに向けての言葉だったらしい。


「そ、そんなのってアリかよ……ってマズイ!? は、離せよ!」

 喋ってるのも束の間、天音は目前まで迫っていた。俺は逃げようとしたのだが子供ドラゴン脚にしがみ付いて身動き一つが出来ない。


「もきゅもきゅ♪」

 一方天音に狙われている子供ドラゴンはというと、何故か楽しげな声をあげながら俺の脚を登っていた。どうやら俺はこの子に気に入られたらしい。また俺もそんな登ってる姿がめっちゃ可愛いな(ハート)っと少し胸キュン状態になってしまっていた。


「この覚悟しろ、魔物めっ!!」

 天音は最後の情けだと言わんばかりに声をかけ、剣を振り下ろそうとして……

「「「あっ!」」」

 小石につまづきコケた。そして剣を突き刺して支えにしようとたのだが剣先が地面に刺さると柄の部分が天音の腹へと当たってしまい、それが何故か攻撃判定・・・・となって天音は棺の姿になって死んでしまった。


「あ、天音??? 静音さんこれは一体……」

 いきなりコケたっと思ったら、いきなり天音が黒っぽい棺の姿になってしまい俺は困惑してしまう。そして状況を確認する意味でも静音へと声をかけた。

「これはですね……」


『勇者天音は死にました。……ぶっ! ま、またのご利用……こ、こ、心よりお待ちしておりますので……ぶふっ……はははっ』


 説明役ナレーションのお姉さんにメッチャ笑われてるね。まぁあんな死に方したら笑うしかないもんなぁ。

「……のようですね。まぁぶっちゃけこの『聖剣フラガッハ』には呪いがかかってたんですけどね。それも真の所有者でない者が引き抜くと『必ず死ぬ』という呪いが……」


「呪いの剣だってぇ~!? 何でそんなもん勇者なのに天音のヤツは持っていやがったんだよ? そもそもあれは伝説の剣じゃなかったの?」

「えっ? な、何故でしょうねぇ~……てへっ」

 静音さんはすごく言葉を言い淀ませながら俺から目を逸らして自らの頭を軽めに叩いていた。この剣渡したの絶対静音さんだわ。少しショックを受けるのだが、それでも現実は止まってくれる気配がなかった。


「ガアアアアアアーッ!!」

 自分の存在を誇示するかのように巨大なドラゴンは咆哮した。

「やべっすっかり忘れてたわ!! 早く逃げるぞ……って天音の棺どうすんだよ静音さん!?」

 正直ドラゴンから逃げるのにこんな重たい棺は足手まといもいいところだった。だが一応はメインヒロインである天音をこんな所に放置してゆくわけにもいかず、静音さんに叫び助けを求めた。


「よいしょ、っと。ふぅ~これでロープが繋がりましたね。はい、アナタ様準備が出来ましたよ♪」

 静音さんが何か作業してるなぁ~っと思ってたら、どうやら棺の頭部分にロープを引っ掛けるハテナマーク状の輪っかを取り付けていたようだ。そしてロープを繋ぐと俺へと手渡してきた。


「人力なのかよ……せ~のっ!! こんなくそぉ~~~っ。はぁーっ。全然動かねぇよ。静音さんこんなの無理だよ」

 俺は試に少しだけロープを引っ張ってみたのだが、思いの外重量があり手には縄の食い込み痕が残り手は真っ赤になっていた。これでは俺一人の力で到底引いて逃げられないだろう。


「あっそうかもしれませんね。棺だけでも三十キロ以上ありますし、そこに天音お嬢様の体重も加わると……たぶん七十キロ以上になるのでお一人引っ張るのは無理でしょうね(笑)」

 何か知らないけどクソメイドにすごくめっさ笑われてるんですけど。俺は不満の表情で静音さんを見つめると、つかつかと棺下の方へ歩いて行った。


「ちょっと待って下さいよ……確かこの辺に……あっこれですね!」

 静音さんは棺の底辺りを触り何かを探しているようだが、俺には彼女が何したいのか理解できなかった。そして静音さんが何か言葉を口にすると『ガチャンガチャン、ビーーーーッ』っと変な機械音が聞こえたきた。


「えっ……な、何の音だ???」

 突如として聞こえてきた正体不明の機械音に俺はきょろきょろっと周囲を見回してしまう。それは目の前にいる巨大なドラゴンも同じなのか、俺達を襲うことも忘れその大きな体に似合わず可愛らしく首を左右に振って『他に誰かいるの?』っと不思議そうな顔を浮かべていた。


「あっ、やっぱりこのボタンで良かったんですね」

「へっ? 今の静音さんが何かしたの? ……ってかこの音の正体は???」

「アナタ様棺の底の部分をご覧になって下さい」

「はぁっ? 底の部分ん~? ってなんじゃこりゃ!?」

 俺は静音さんに言われるがまま棺の底を見る為に地面に手を着いてそっと覗き込むとそこには信じられない光景が広がっていたのだ! 棺の底から変な支え棒みたいなのが四本飛び出して地面に接地すると棺を地面から浮かせていたのだ。

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