第13話 初めての仲間を呼ぶ!
「静音さんに一つだけ聞きたいんだけど……果たしてコレは
「ええ、そうですよ。何かご不満な点でもありましたか?」
うん、すっごくご不満ダラケだわ。何故にゲームのコントローラーが武器的
「…………」
俺は不満を露にするよう無言でじっと見つめて抗議の態度を示す。
「うん? ああ、そうですよねっ! これは肝心なことに気が付かなくてすみませんでした」
静音さんは誤魔化すように可愛らしく少し舌を出しながら頭を軽く『コツン♪』と叩く真似をして、ようやく俺が言いたい事に気づいたようだ。だが静音さんは何を思ったか、スカートからハサミを取り出すと有り得ない行動をした。
「チョキチョキチョキ~っと。はい、これで出来ましたよ♪ これなら立派に今風の無線仕様のコントローラーになりましたよね♪ これでもう配線を気にせず自由になれましたよね?」
静音さんはコントローラーから伸びている有線ケーブルを根元から1cmほど残してハサミで切ってしまったのだ。
「いやいや、これのどこが今風の無線コントローラーなんだよ!? ただハサミで配線を切っただけでしょが! そもそも切っちゃったら機能しなくなるよね……」
何気に根元から1cmだけが残り中の配線が剥き出しになってるコントローラーを見ると得も言えぬ哀愁が漂ってしまい、俺自身でさえもとてつもなく悲しい気持ちになってしまう。
「そんなことよりもアナタ様、コントローラーの『Startボタン』を押してメニューを開いてコマンドの『仲間を呼ぶ』を選択して下さいませ! とりあえず『戦闘のチュートリアル』を急いで終わらせないと世界が大変なことになりますよ!!」
『早く早く!』とまるでそれを誤魔化すかのように静音さんは俺を捲くし立ててくる。
「(ええいっ! そんなことを言えばこの俺が何でも素直に言うことを聞くと思うなよっ!!)」
などとは思ってもそんな不満を口には出さず、言われるがままにコントローラーの操作することにした。『Startボタン』を押すと戦闘中にも関わらず、目の前の空中にいくつものメニュー画面文字が浮かんでくる。
「お~っすっげぇな、おい! 文字が
ローテクなRPGのクセにさながら最新のハイテクRPGのようでちょっとだけ心が躍った。メニューには『
「…………なくね?」
だが静音さんが指示してくれた『仲間を呼ぶ』というコマンドだけは当たらなかったのだ。ってかさ『ゲームを終了する』のコマンドが見えるんですけど? これ押せば魔王倒さなくても元の世界に戻れるんじゃねぇのか???
「あっ間違えました。え~っとその右にある『Yボタン』を押すんですね、はいそれです」
『ボタン配置』をうろ覚えなのか、俺が持っているコントローラーを覗き見ながら静音さんは自信なさ気に指示をしていた。俺はとりあえず指示された『Y』とアルファベットで書かれた黄色いボタンを押すことにした。
「え~~っと、要は黄色のボタンで良いんだよね? ポチっとな」
するといきなり世界が灰色一色の世界となり、天音や農夫のおっさんだけでなく空や雲もそして空を飛んでる鳥などすべてのモノが止まったかのようになってしまった。
「……あ、あれ?」
「あ、アナタ様ぁっ!? それは違います!! それでは『適用』となり決定と同じになってしまうのです! まず最初に『緑色のAボタン』を押して一旦裏メニューを『
静音さんは今世紀最大クラスに慌てながら俺の間違いを訂正する。
「あ、アンタが押せって言ったんじゃんか! 俺そのとおりにしただけだよ!?」
「ワタシはそんなことを言ってませんよ! 言ってませんとも、ええっ!! ちゃんと『緑色のAボタンで解除してから!』と言いましたからぁっ!」
俺が押し間違ったとはいえ、本来なら見てはいけないモノを見てしまい静音さんは慌ててしまっている。そもそも見られたくないんだったら、こんなチート設定メニューなんか付けるんじゃねぇよ。
「と、とりあえず『緑色のAボタン』を押して『
『チュンチュン♪ チュンチュン♪』空中で静止していた鳥達が一斉に動き出した。ほっ、どうやら無事に世界が再び動き出したようだ。
「はぁ~っ。ちゃんと気をつけてくださいませアナタ様。この世には触れてはいけないボタンもございますので」
「だ、だったらそんな危険でチートなコントローラーを俺に預けないでよね」
武器は武器でも、このコントローラーは『
「まぁある意味この世界を手にした気分に浸れますよね♪」
「あ、うん。というよりも完全にこの世界そのものだよね? だって『このゲームを終了する』とかヤバ気なもんまであるんだもんさ。
「まずは気を取り直して『黄色のYボタン』を押して『メニュー』を開き『仲間を呼ぶ』を選択してくださいませ。早くしないと文字数規定オーバーで選考対象外になってしまいますからね!」
「何だよその『文字数規定オーバーで選考対象外』ってさ……」
俺は文字数節約のため今度こそ間違わぬようちゃんと『黄色のYボタン』を押した。するとメニュー一覧が表示され、その中には『たたかう』『にげる』『作戦の変更』『仲間を変える』『仲間を呼ぶ』『家に帰る』『情報』『装備』『道具』など次々に様々なコマンドが目の前の空中に表示された。その中の『仲間を呼ぶ』を選び押してみた。
「……ん? 何も起こらないけど???」
「あっ……アナタ様、これを使い仲間を呼んでくださいね」
静音さんは思い出したかのようにスカートから笛らしきモノを取り出し俺に手渡してきた。
「あっセルフサービス方式で
『ピ~ヒョロロ~ヒョロピ~ッ♪』俺は思うがまま渡された笛を吹いてみる。だがこのとき、目の前に
『あなたは笛を吹き仲間を呼んだ!』
ガサガサ、ガサガサ……もきゅぅ? 茂みから可愛らしい容姿と鳴き声と共に小さな生き物が出てきた。
「えっ? な、何あのファンシーで可愛い感じの生き物は!?」
その生き物は俺の膝下くらいの身長でクリっとした大きな瞳が特徴的で、全体的には赤色の肌に頭には二本の角があり背中には小さな羽としっぽが付いていた。それはファンタジーモノやRPGのゲームなどでお馴染みの……バサッバサッ。んんっ? 俺の説明補足途中にも関わらず上空から何か大きな羽音と共に咆哮が聞こえたぞ? 俺は不安になりながらも思わず空を見上げてしまった。すると上空には……
「ガアアアアアアーッ!!」
「ドラゴーーーーッン!?!?」
そうそれは超有名モンスターの代表格『ドラゴン様』だった。どうやら子連れだったのか、地上にいる
『この世界にドラゴン先生が降臨なされました! 素早くコマンドを入力してください』
『にげる』しかしまわりこまれてしまい、結局食べられます
『たたかう』空から
『防御』頭から足まで一口でペロぺロリン♪
『死んだふり』ちょおまっ!? たぶんそのまま食われますよ(笑)
「相変わらずまともな選択肢が一切ないぞ!?」
だってだって『にげる』を選んでも既にオチがついてるし、残りの選択肢だって焼かれるか食われるかだけなんだしな!
『時間内にコマンドを選択していただけなかったので、ただ呆然と突っ立ってるだけにいたしますね♪ ……この次は早くコマンド入力しやがれよ!』
俺は迫り来る恐怖から何も出来ず、ただ突っ立っていることしかできなかった。決して選択肢の操り人形ではないので誤解無きように。
「アナタ様!? 何故仲間がいるのに『
「それはあんまりにも理不尽すぎるだろうがっ!? アンタから指示されて渡された笛吹いたんじゃんかよ!」
俺と静音さんは迫る来る命の危機を前でさえも怒鳴り合いながら責任転嫁をしていた。
やはり人間同士の争いというものは、何時如何なる時にでも無くなるモノではないのだろう。
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