第8話 設定雑すぎんだろ……

「まだ本題に入っていないんですよ。実はですね、魔王軍が現実世界へと攻め入るまでには期間が定められているのです。もしもそれを過ぎてしまったら……」

「さっき言ってたように魔王軍が世界を征服する……ってことなんだな?」

 コクリっと静音さんは頷くと俺の言葉を肯定した。


「ちなみにさ、その期間はどれくらいなんだ? 一年くらいか?」

 正直一年でも足りるか分からないが世界を救うのにそんな悠長なことは言っていられないだろう。

「いえ二十日間のみです。ちなみにあと一週間切ってますね」

(えっ? 一週間ホワイ? 世界を救うのにあと七日間だけだと? ちなみにそれを英語でいうと……いや英語では言わないわ!)

 俺はとりあえず英語を知らない事を誤魔化すためにオーバーリアクションをとってみた。


「い、一週間だってぇ~っ!? だ、だって最初は二十日間もあったんだよね? それがなんでそんなに減ってんのさ!!」

 そもそも二十日間ですら絶対的に足りないと思うのに、一週間やそこらで魔王を倒すのは不可能だと抗議の言葉を口にする。


「まぁそうなのですが、作者の方が文字数的に二十日間も・・・・・物語描くのは無理じゃねぇ? っと無理矢理一週間に縮めたらしいです(笑)」

「ま、マジかよ。作者の都合で世界を救う期間が追いやられちまったのかよ。それはあまりにも設定雑すぎんだろ……」

 それはあまりにも理不尽すぎる内容だった。物語はまだ序盤も序盤である。レベル1どころか、そもそもその表示すらされてなかったのだ。これでは例えどんな物語の主人公がこの世界に来たとしても、誰もこの世界を救えるわけがない。


「またその魔王を倒すまでの期限についてですが、どうやらアナタ様の『出席日数』と大きな関わりがあるようなのです!」

「はい? 出席日数? それって学校のやつだよね? 何でそんなのがこのRPGの世界と現実世界との世界平和に関係あんだよ?」


「実はこうしている間にも現実世界ではいつもどおりの時間が流れておりますが、アナタ様はこちらの世界に来ているので学校には登校していないことになっております。ま、早い話が無断欠席中なんですね。ですので21日間無断欠席してしまうと、その理由の如何に関わらず即『留年』という形になってしまうのです。この世界崩壊までのリミットが『二十日以内に……』というのはオマケのようです」


「ほげらぁ~」

 俺はその説明をアホ面下げて聞いていた。傍から見ていたら本物に見えた事だろう。だがそれもそのはず、話の内容もアホみたいなのだからそれも仕方ない。

(だってさ、俺の出席日数不足による留年案件と現実世界及びこの異世界との世界平和が同列なんだぜ。いや、むしろ世界平和はオマケ・・・設定なんだぜ。物語の根底がそんな雑でいいのかよ。後で読者からクレーム来ないの?)


「またワタシがそれらを知っている理由なのですが、実は僧侶と兼任しまして『この物語の管理人のアルバイト』をしているからなのです」

「はぁ。物語の管理人のアルバイトを……静音さんが、ね」

 確かに登場キャラの正体が『実は物語の管理人でした!』ってのはあるけどアルバイトっていう雇用体系の設定はあまりにも斬新すぎるだろ!? そしてこれを読んでる読者さんに平気でバラすんじゃねぇよ。


「またこの異世界には『営業時間』もありますので」

「営業時間っ!? そんなの聞いたことないんだけど」

「はい。異世界発生の営業時間は平日の午前8時~午後3時までとなっており、土日祝祭日などはお休みと設定されておりますね」

 えっなに? この世界は銀行員みたいな間隔で学校の門に発生してんの? そのうちATMみたく時間外には手数料とか発生させる気じゃないだろうな?


「いやぁ~最近は何かとうるさいですからねぇ~。異世界発生装置も今の流行を取り入れて雇用の改善しているみたいです。じゃないと労働基準監督署から業務改善命令ペナルティーを受けるみたいですしね」

「そ、そんなんで魔王軍ほんとに世界を征服できんのかよ……」

 だってさ、要は魔王軍は役所の言いなりになってるわけだろ? ってか魔王のクセに役所に配慮すんなよな!! そもそも役所的には魔王軍による世界征服は業務の扱いなのかよ!?


「ま、それだけ厳しい世の中と言うわけなのですよ。最近では魔王様が直接ハローワーク赴いて求人募集かけても、なかなか魔物が集まらないようですし。今の魔物は衣食住付きの高給取りですからねぇ~」

「ま、魔物たちにも、この不況の波が影響してるなんて……」

 そもそも魔物ってハローワークの求人募集で集まってたのかよ。今度新聞の求人広告をしっかりと見ることにしよう(笑)


「この世界については大体こんなところですね。アナタ様ちゃんと理解できましたか?」

「あ、ああ。たぶん、ね。いや、ほんとはしたくもないけどさ」

 正直この世界についてあまり理解したくないところが満載でツッコミまくりだけど、もうこうなったらやるしかないよな? 主に俺の出席日数留年の問題でな!


「分かったよ静音さん! 頑張って魔王を倒して世界の平和を、そして何より自分の留年をかけて全力で戦うから見ててくれよな!!」

「いえいえアナタ様は役柄が『村人C』とモブ未満ですので、正直言ってそこいらの雑魚敵野生スライムにさえも勝てませんからね。あんまウケ狙いで面白いこと言って人を笑わせないで下さいよ(笑)」

 すっげぇディスられた挙句、クソメイドに草生やされまくったぞ!?

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