第7話 この世界の摂理について……
城門を通り過ぎると地面にはレンガで舗装されている大通りがあり、またその道の両脇には所狭しと綺麗な花々がたくさん植えられていた。そして街を訪れた冒険者がお店を見つけやすいようにと、木で作られたレトロで大きな看板がいくつも掲げられていた。
それは誰にでも分かりやすいよう
「っと、言うわけでアナタ様! エルドナルド城の城下町に着きましたよ♪」
やや強引に話しを逸らしながらも静音さんは『これがこの世界の街だよ♪』っと胸を張り、両腕を大ぴらに広げまるでオペラを歌うように自慢気にしていた。
「すっげっ。この世界ってほんとRPGの街並みそのものなんだ! これはベットの絵だよね? ってことは、ここは『宿屋』なのかな!」
俺達から見て右手にはベットの絵が描かれた大きな宿屋があった。これは最重要な施設である。何せRPGの序盤で体力を回復できる手段と言えば、回復アイテムか宿屋くらいなものである。そして道を挟んで反対側、つまり俺から見て左側の建物の看板には『剣』と『盾』そして『袋』の絵が描かれていた。
「ここもそのまんま『武器屋』と『防具屋』にそれと『道具屋』だね! ほんと分かり易いな!?」
こちらもまた宿屋と同様に重要である。RPGの序盤ではLvが低く主に戦闘では武器と防具に全てがかかっていると言っても決して過言ではない。また道具も戦闘で傷を負ったときに素早く体力を回復できる『やくそう』などが売っていて、宿屋がない街の外ではまさに生死を左右する貴重アイテムと言えるだろう。
そして両脇に立ち並ぶ店を通りすぎると中央には大きな噴水があり、その周りを男の子と女の子の幼い子供たちが走り回って遊んでいた。
「わーい♪ わーい♪」
「まて、まて~♪」
「こんな光景もいかにもだな! やっぱりRPGの世界といえば噴水の周りを無駄に子供が走ってるのは定番中の定番だよなぁ~♪」
俺は元気に走る回る子供達を眺め、暢気にもそんなことを口にすると横から補足説明が入ってくる。
「ええ、そうですね。ですがあの子供たちは朝起きるとすぐに噴水の周りをずっと走らされ、日が暮れると家に帰りまた次の日の朝にはまた走らされる。あの子達は大人になろうと関係なく永遠にその繰り返しなんです」
「子供の時だけじゃなく、
静音さんのその言葉を聞いてギョッとし、噴水を走り回っている子供たちに注目した。よくよく子供たちの足を見れば特に
「ま、あんまりこの世界の事をお気になさると正直キリがありませんので、あまりお気になさらずに」
そう言って静音さんは俺の心中を察し諭してくれた。そして中央の噴水を直進、つまり街の北側には例の大きなお城が聳え立っていた。また左手には大きな十字架を屋根に掲げた『教会』があった。
「さて、街の主な建物はこれくらいですね。あとは民家や農家などのちゃっちな建物がちらほらあるくらいですね」
「そ、そうなんだ。まぁまだ序盤の街だから案外建物は少ないんだよね? そういえば聞いてなかったけどお城の名前は確か『エルドナルド城』だよね? だったらこの街の名前はなんてゆうの?」
「えぇっ!? 街の名前……ですか?」
「名前聞いちゃまずかったかな?」
静音さんが固まってる。どうやらただのシカトのようだ。
「この世界で唯一『最後の街』ですので、それが名前でいいんじゃないですかね?」
「はぁ~っ!? えっなになに? それはどうゆことなの? 最後の街ってことはこの世界はこの街オンリーってことなのか!? そんなのって普通あるのかよ!?」
「実は先の戦争で魔王軍の攻撃に遭いまして言いづらいのですが、他の町や村も軒並みその被害で全滅を……」
そう語る静音さんは暗い表情になってしまった。
「そうだったんだ。てっきりまた作者が考えるのを
今まで疑問に思っていたことをたぶん知っているであろう静音さんへとぶつける。
「こほんっ。この世界についてですが……まずワタシも詳しいことはよく知らないのです」
「えっ? それじゃあ……」
詰め寄ろうとする俺を静音さんは手で静止すると言葉を続ける。
「詳しいことは分かりませんが、この世界の原因はどうやらアナタ様にあるようなのです」
「はぁ~っ!? この俺がぁ~っ……何でだよ!!」
なんだろう……俺は寝てる間に学校に忍び込んでグラウンドに象形文字でも描いて変な力でも得てしまったのだろうか?
「この世界を作ったのが誰かは分かりません。ですがアナタ様は天音お嬢様の婚約宣言を断りましたよね? どうやらそれが
静音さんの詳しい話によれば学園の門に現実世界とこの異世界とを繋ぐ亀裂なようなモノが出来てしまい、二つの世界が繋がってしまったのだと言う。あとついでに作者の野郎が『最近のラノベって異世界モノさ、流行ってねぇべか?』っと言って、急な作品変更したらしいとの事。ってかさ
「そしてこれはワタシが独自に色々と調べたのですがどうやらこのRPGの世界以外、つまり現実世界の事を記憶としてちゃんと覚えているのはワタシとアナタ様だけのようなのです。これは現実世界とこのRPG風の世界とが
「魔王軍が現実世界を征服!? で、でも現実世界には『自衛隊』があるよね? なら例え魔王軍が攻め込んで来ても平気なんじゃ……」
「先程ワタシが言いましたようにこの世界は誰かに『創られた世界』なのです。現実世界には存在しないモノを果たして倒せるとお思いなのですか? それは幽霊や空想上のモンスターを相手にするようなものなのです。またこちらの世界から現実世界には干渉をしていますが現実世界からこちらの世界は干渉できず、そもそも物理的繋がりが存在できないのです」
なんだかすっげぇややこしい説明なのだが、静音さんの話を要約すると魔王軍からは現実世界への攻撃が通用するが、逆に現実世界からの攻撃は魔王軍には一切通用しないということらしい。
「そ、そんなの反則もいいところだろうが……」
これで静音さんが神妙な面持ちで焦っている理由がよく分かった。もしも魔王軍が現実世界へと来てしまったら、それは即ち世界の終わりを意味するのと同義だろう。なんせこのRPGの世界でもこの街が一つ存在するだけで、他の村や町は魔王軍の攻撃によって滅ぼされてしまっているのだから。
「おいおい、作者のヤツめ。物語の冗談設定も大概にしろよな……」
そうこの物語の作者に苦情を呟くが当たり前だが返答は聞こえてこなかった。
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