第4話 俺の日常(ふつう)はこれにて終わり!

「思った! 思った!! 昨日そんなことを思った俺は大馬鹿野郎なのかよ!?」

 またまたいきなりの補足説明になってしまうのだが、状況を再確認する意味でも読者さん達に説明始めるぞ!


 朝目覚めると簡単に身支度をして眠気を噛み殺しながら、ついでに欠伸をしながらも『あぁ~今日もアイツらと楽しくともまた、はた迷惑な1日が始まるのか~』っとやや憂鬱な気持ちを抱きつつも、若干心踊りながら通学路をダンシングしながら学校まで来んだわ。

 ここまではOKだよな? そして学校の門まで着いて一歩踏み出しその門を潜ると、なんとそこには『RPGに出てきそうなお城』が建っていたのだった! まぁいきなりそんな説明されても意味分からねぇだろうが、説明している俺だって意味が分からないから安心してくれ!


「それにしてもこれは……ホンモノのお城なんだよな?」

 俺はいかにもな木で作られた洋風の立派なつり橋を渡ると、存在感満載の大きな城の門前へと歩いて行く。ご丁寧にも橋の下にはちゃんと川が流れており、これだけでも異世界ファンタジーモノ……いや、昔風のRPGっぽい感じが漂っていた。


「いやいや、アイツらこれは凝りすぎじゃねぇか? 大体学校の敷地内に城だけでなく、橋と川まで作りやがって、ほんとやることが大馬鹿すぎんだろうアイツら。もしかしてこの壁も……って、これも本物・・だしさぁ~(笑)」

『コンコン♪』と強度を確かめるようにノック調で壁を叩き、反響音とその重量感からこれが本物であると確信した。お城の外壁は張りぼてではなく、ちゃんとしたレンガ作りの頑丈な外壁である。これならば仮に敵が攻めてきたとしても容易には突破できないだろう。その妥協なき半端ないクオリティに対して、ただただ笑うことしかできなかった。


「あはは~っ、アイツらどんだけ金かけてんだよ? まったくもうよぉ~こりゃ金かかってるわぁ~。もしかしてまた静音さんの新しい策略か何かなのか?」

「んっ? おいそこのオマエ! 一体そんなところで何をしてるだ? 壁なんぞを触りおって……」

『ペタペタ♪』と興味津々にお城の外壁を触りながら、へらへらっと笑ってる俺に対して後ろから声がかけられた。


「へっ? あ、ああ……俺のことですか?」

 他に誰かいるかと思いながら辺りを見回ってみたが、生憎と俺以外に人はいないようだ。

「オマエ以外に誰もいないだろうが! 俺の事をからかっているのではあるまいな!?」

 隣にいたもう一人の門番が俺の態度に対して、今まさに激おこぷんぷん丸状態らしい。


「このエルドナルド城に何か用なのか?」

 最初に声をかけてきた門番は冷静なのか、再度俺に声をかけてきた。

「えっ? える……なんですって? ぷっ、アヒルさんの親戚か何かですか?」

 城の名前が某アヒルっぽいこの城の名前に笑わずにはいられなかった。


(何アイツら門番のおっさんらエキストラさんだけじゃなく、学校名まで変えてやがんの? おいおい、ここは国立の高校なんだぜ。しかもなんだよ『える~なんとか城』って、超ドキュンな名前を学校に付けてんじゃねぇよ。今流行の中二病かってぇ~の(笑) きっと名前付けたのあの静音さんクソメイドだろうなぁ~。あの人パッと見で中二病っぽいし。

 やっべ、今日は特に楽しそうな1日が始まりそうな予感するわ。さながら今日の催しは学校自体が異世界ファンタジーの世界に迷い込んで、『RPGごっこ』でもするのかと思うとちょっとだけ心が躍るわ♪)

 俺はまるでアニメやゲームの主人公にでもなったかのように、ハシャギ嬉しくなってしまっていた。


「(オイ コイツは何いってるんだ? 何だか怪しくないか?)」

「(ああそうだな。服も見たことのない変わったモノだしな)」

 門番のおじさん二人がひそひそと何か話してる。どうやら二人は俺についてを話しているようだ。

「(臨時のエキストラさんでもすっごく雰囲気出てるぁ~。ほんと『実写版RPG』にいてもおかしくないもん。よ~し、どうせだったらここは俺もそのノリに乗っかるとするか!)」

 俺は意を決し、与えられたであろう役をこなそうと画策することにした。

『門番に対し、なんと答えますか? 選択肢からお選びくださいませ♪』


『あっ、通りすがりの怪しいモノですけど……』ただいま怪しさ120%祭り

『いえ、ただの学生です』まったく面白味がない。はん! 面白くない男

『俺がお前らの勇者様だ!』イケる♪ イケる♪ ←煽り


「(ふむ。俺はこの物語の主人公なんだからやっぱりここで名乗るとするなら『勇者様』がセオリー・・・・だよな? もはやテンプレートで出がらし状態だとは思うが、そこがイイ! 読者のみんなもそれでいいよな? でも嫌とは言わせないぜ! なんせこの俺はこの物語の主人公なんだもん♪ それにさ一度でいいからRPGに出てくる『勇者役』をやってみたかったんだよなぁ~♪)」

 俺は勝手に自己完結して自らの役柄を『勇者』と名乗ることにした。そしてちゃんと声通るよう軽く咳払いをして息を整えると、こう声高らかに宣言した!


「んっんっーっと。いえいえ、俺は決して怪しいモノではありませんよ。何を隠そう……なんと俺は『勇者様』なのです!(ドヤッ)」

「「…………」」

 あれ? あれあれーっ? 盛大に外しちまったのか? とりあえずもう一回だけ言っておくか?


「え~っと聞こえませんでしたか? 俺は何をかくそう、この世界の『勇者さ……」

「オマエ……それだろ?」

 左手に居た門番のおじさんは俺のすべったネタに対して一切笑わず、真顔でそう言った。即座に嘘を見抜かれてしまい何て答えたら……っと一瞬動揺してしまったが、誤魔化すため無理矢理言葉を続けることにした。


「や、やだなぁ~、ほんとにこの俺がこの世界の勇……」

「勇者様ご一行なら既に・・この門をお通りになり今は王様様に謁見している最中なのだぞ!」

「へっ? す、既に通った・・・・・? 誰が? 王様と謁見の最中? ……あ、あれ? あれあれーっ???」

 門番のおっさんらが何を言っているのか、理解できずに更に混乱してしまう。


「怪しいヤツめ! 勇者様の名前を騙るとはなんたる不埒な輩かっ! 狼藉者め、これでも食らいやがれ!!」

 ザッシュ。右にいた門番のおっさんが手に持っていたモノを突き出した。

「いや、だから俺は全然怪しい者じゃ……えっ? ……え゛っ゛!? うぐっぶはっ……いたいたいっ!!」

 いきなり体を襲った衝撃と痛さによって体がくの字となり、体の中心が熱い鉄のようなもので貫かれている感覚になっていた。目線を下げるとその痛さの原因であろう右の脇腹付近には、細長い槍が刺さっていた。


「(な、何だよこれは槍だよな? 何でこんなものが腹に刺さってるんだ? これっておっさんが持ってたやつか? まさか刺されちまったのか!?)」

 遅ればせながら自分が置かれた状況を理解すると、門番のおっさんに槍で刺されたと認識がより痛さを助長してしまう。


「ぐぉ~っ……な………んで……ぐはっ……おえっ」

 門番のおっさんにそう抗議したかったのだが、文字表現できないくらいの痛さと脇腹に刺さった槍の隙間から血がポタポタっと地面を濡らし、また口からも大量の血が溢れ出てしまい、そもそもまともに喋れない。いや喋れないどころか血で気道が詰まり満足に息もできない状態だった。


「(く、くるしい……い、息が……息ができない……いたいいたい)」

 お腹に槍が刺さっているせいで地面に倒れることもできず、ただただ串刺し状態のまま痛さと『何で槍で刺されたんだ』っという思考が頭の中を埋め尽くしていた。

「コイツまだ生きてるのか!? ついでにこれも食らいやがれ!!」

 ザッシュ。もう一人の門番のおっさんが悶絶する俺へと槍を突き刺した。二本目の槍はちょうど鳩尾に深々と突き刺さってしまった。


「~~~っっ!?」

 今までに体験したことのない痛みから悶絶してしまい、もう声……いや、音すら出せなかった。唯一出来る事と言えば口と突き刺された二箇所の穴から大量の血を吐き出すのみ。

「……死んだか?」

 そう言うや否や門番のおっさんは右の腹から勢いよく槍を引き抜く。グチュッ。槍が引き抜かれた右の脇腹から肉とも血の音とも言えぬ音が俺の耳に届けられる。だが何の反応もできずただ悶絶することしかできない。


「ふん! まったく魔物風情が手間をかけさせおって……」 

 グチャッ。続いて二本目の槍も勢いよく引き抜かれた。それと同時に俺はまるで糸が切れた操り人形のようにお辞儀をするように前屈みとなり、グニャリっと地面に倒れこみ、そのまま横へと倒れこんでしまう。どうやら側頭部から地面へと落ちてしまったようだ。


「お~い、不審者が出たぞ! 西門と東門からも応援を呼べ~っ! 勇者様にも……」

 門番のおっさんが何かを叫んでいるが、生憎俺の耳には気味が悪い砂嵐のような雑音ノイズしか聞こえず、何を叫んでいるのかさえ理解できなかった。


 おいおいなんだよこれ?

 人が死ぬときってこんなもんなの?

 昨日までの楽しい日々はどこいった?

 俺を愛してた日常ふつうは?

 そして本当は・・・俺が望んでいた非日常の日々は?


 天音は?

 静音さんは? 

 ビッチさんは? 

 みんなは一体どこに行っちまったんだよ?

 俺はもしかしてこのまま死んじまうのかよ……


「(パクパク)」

(チクショー勇者だなんて名乗るんじゃなかったなぁ~。でも何で主人公の俺が勇者じゃねぇんだよ)

 何か声を出そうとするが、もはや音すら出す体力すらない。陸にあげられた魚のように、口をパクパクと辛うじて動かしてただ酸素を取り入れるのみ。それすらももう終わりを告げるだろう。何故なら既に痛みすら感じることができないのだ。俺はこんな最後を露ほども望んではいなかった。そう思うと自然に目から涙が溢れてきてしまった。


「おおっ応援だけでなく、勇者様一行まで来て下さいましたか!?」

 門番のおっさんがそう言ったのが聞こえたような気がした。その言葉を聞き途切れる意識をなんとか繋ぎ止め顔を動かそうとするのだが、既に一ミリ足りとも体が動かずもうすぐ地面とお友達になる俺は目線だけをソイツへと差し向けた。


「ご苦労様です。ワタシ達が来たからにはもう安心ですよ」

「おおっ勇者殿だけでなく僧侶様も一緒でしたか。これは心強い限りです!」

「(そ、僧侶? 誰だよソイツは?)」

 僧侶様と呼ばれたソイツは地面に倒れ、もうすぐ死ぬであろうこの俺を見下しながらニタニターッ♪ っと楽しげな笑顔を見せていた。


「(人が死ぬのがそんなに面白いか? やっぱ、アンタはクソだな。あとモーニングスターそれは僧侶が装備できる武器じゃねぇだろうが……)」

 ソイツは艶やかな長い黒髪に全身黒服を身に纏い、右手には武器であろう鎖付きの鉄球いわゆるモーニングスターを持っていたのだ。

 ジャラリッ。ソイツはモーニングスターに付いている鎖を鳴らすと、勢いをつけながら鉄球をぶん振り回し『ブンブン♪』っと良い音を響かせ、今まさに死にゆくであろうこの俺へとトドメを刺そうとしていた。


『どうしましょう? 今の状況ではとても選択肢が出せませんよ! この次からはもっと早めの対処を心掛けましょうね♪』

 最後の砦である選択肢さんにすら拒絶される始末。


「(これが俺の最後だなんて……あんまりだろ)

「それではまた来世にて、ですよ……ア・ナ・タ・さ・ま♪」

 ブゥンッ! そんな鈍く重い音を響かせながら勢い良く頭目掛けモーニングスターの鉄球が振り下ろされると、この物語の主人公である俺は頭を潰されてしまい死んでしまったのだった。


『You are dead.あなたは死にました。またのご利用を心よりお待ちしております(ぺこりっ)』

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る