名族朝倉に栄光あれ

マーマリアン

第1話 勝ち組と負け組。俺は超絶勝ち組!かと思ったら

若い人の勝ち組と負け組とはなんだろうか?

パッと思い付くのは資産の有無や容姿の優劣だろうが、それだけが決め手となるわけでもないだろう。


金持ちのボッチ、無能なイケメン。

人によっては一つでも優れた部分があればそれだけで勝ち組だと言う人もいるかもしれないが、他者との繋がりや能力せいのうなどの他の要因も混ぜ合わせてから考慮するべきだと俺は思う。


そうやって色々と加味すると組分けの基準は将来性、もとい未来の安定性なのではないだろうか?



とまあ、何故俺がいきなりこんな話題を提示したのかと言うと、今の俺の立場や状況がかなりぶっ飛んでいるからだ。



スイーツ(笑)とか言われるのは癪だが、まず言えるのは俺は死んだ。その記憶は鮮明に残ってる。




小学生の頃から愛読しているとある連載漫画。

作者の病気によって長期に渡り休載と連載を繰り返していたその漫画の新刊が発売されたのだ。


本誌派によるネタバレを躱かわし、SNSやネット閲覧中にその漫画に関連する情報は意図的に避けてきた。

その頑張りのお陰で本屋からの帰りはウキウキだったんだ。



だけどそれがいけなかったんだよなぁ。帰宅を急ぐあまり駅の階段から足を踏み外して後頭部を強打したんだよ。


待ってくれよ!

「私が止める」ってイケメンが言っていた続きが見たいんだ!それに主人公の少年はどうなったんだ!?今の話は彼をそっちのけで進んでいるがせめて動向くらいは...



痛い痛いと感じながらも声が出ないし瞼が凄く重くなって眠気に襲われた。そんな暗闇に溶けていく感覚がもの凄く怖かったのは覚えてる。



まどろみ中で「あぁ、俺も家族の元に向かうのだろうなぁー」って考えた直後にさ。

いつの間にかオギャアオギャアーって俺が声を出してたんだよ。自分でも叫んでいると分かっているけど口が閉じれない。

俺ウルセーとか思ってたら回りも「徳!でかした!」「おめでとうございます!殿!」とか「元気に泣いてますね。」

とか声が大きいの大きいの。



まっ!瞬時に理解したね。これは転生したと。

本当にあるんだなぁーとか神様に会ってないけどチート貰ってないよな?とか周りを確認して、そもそも剣と魔法の世界なのか?

と順に考えてたら「この子の名はろくろうだ!」とかまた大きな声で男が叫んでいた。


モロに和名だった。

視界がボヤけてるが先程から声の大きい男性が俺の父親なのだろう。

良くある中世様式ではなく和風な世界で少ししょんぼりしたが、聞こえてくる声の数や、言葉使いからするとかなり裕福な家なのだろうと察してきた。



侍女と思われる女性達から「殿」と呼ばれる立場の人の子供という事を考えると、将来性という点で見ればかなりの勝ち組なのではないか?不思議な力が無くても意識はしっかりしているんだし。



凄ぇラッキー!



なーんて思ってた時期が僕にもありました。


まず、生まれて1年近くでわかったのはこの世界が戦国の世であること。たまに可愛がってくれる男の子がいて、その子が7つ離れた長夜叉という兄貴だということ。

決めてだったのは俺のパピーは御偉いさんにも関わらず基本的に在宅ワーカーなので、家にいながら色んな人の会話が聞こえる時がある。「石山が一揆を煽ってる」「まだ畿内は荒れるだろう」という内容から戦国だと判断した。


まぁ基本動けないからね。こんなもんよ。



魔法なんてないと確信したのもこのくらいの時期だったと思う。回りも使ってないし、俺もそんなパワーを感じ無かったしさ。結構ショックだった。



だけどそれを上回る衝撃は別にあったんだ...

色々不便な赤ちゃん時代も終わりに近付き、一度目の冬が終わった位に乳母が言ったんだ。「六郎様は落ち着きがあっていいですね。長夜叉様もお元気ですし、これで越前朝倉家も安泰ですね」

ってさ。


少しビビったさ。

越前の朝倉家と言えばかの風雲児の踏み台だ。

乳母の話を聞いて不安になり、それを否定するかのように情報を集めた。違って欲しいと。

この頃には不安定ながらも歩ける様になったし、たどたどしいが多少は喋る事が出来た。

それにより活動範囲が広がったから、色んな事についてバンバン聞いて回った。家族も乳母も活発になったことを喜んでいたが俺はそれ処じゃ無かった...


情報を集めれば集めるほど不安が現実になっていったよ。

お隣の近江にある浅井家は当主の名が亮政、そして現在の将軍が12代目ということ。さらに甲斐の国では国主である父親を追放して息子が家督を乗っ取った事件が起きたらしい。

その下手人の名は晴信という名のようで...

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