終章......WIZARDWARE
暗闇にジジジという機械音が響いている。数人の男たちが周囲に群がっていた。
「おっ、サーバーのプログラムが
「……
「
「そりゃすごい!
「……宮沢さん、何か用っスか?」
「サーバーの状況を常に確認するように言っておいただろう。ゲームクリアだ。自分の仕事に対してもっと責任を持ってくれよ」
「え、本当っスか? あ……すみません。すぐにバックアップとります」
「……やれやれ、
「面目ないです。
「頼むよ、ホントに。……それにしても新作ゲーム初のクリアは感慨深いな」
「今までベータテストで5回挑戦して、5回ともゲーム世界は影の王に
「そうなんだよ神野さん、プレイヤーが唯一介入できるのは主人公キャラクターを作成してゲーム世界に放り込むだけだから、思い切って一風変わったパラメーターを設定したんだよ」
「どんな割り振りですか?」
「男主人公は知力と好奇心だけを極限まで高くした。他の能力は最低のままだな。女主人公は弱点を失くしたうえで、容姿と魔法力が高くなるよう配分したんだ」
「へぇ、それじゃあ、アキムの方は完全な研究者タイプですねぇ。コミュニケーション能力やカリスマ性も全く割り振りなしとは人生破滅型だなぁ」
「ははは……。じゃ、私は各サーバーの定期チェックをしてくるんで後よろしく」
「宮沢さん、了解です」
「……神野さん、ちょっといいっスか? 僕をモデルにしたNPCキャラクターは活躍したんスか?」
「……ん? え~と、終了データを見る限り、生き残ったのは主要キャラクターでアキムとティータだけ。他はデスティンもレッドベースも戦死。リューゾーも残念ながら戦死だなぁ」
「今回からすごく高い能力にしたんスよね?」
「……うん、そりゃ~もう、魔法研究所で期待の新星と呼ばれる能力にしてある。プレイヤーが投入したキャラクターの活躍ぶりをログデータで保存し、携帯端末のアプリからゆっくり鑑賞できるようにしたのが『
「前回までひどい脇役だっただけに残念っス。同じ能力で次回に期待ですね……」
「そういうことになるねぇ……あははははは」
「……まずいな」
「宮沢さん、どうしました?」
「オフィス内の
「えーと、ウイルスの仕業ですかねぇ?」
「それはないだろう。閲覧先ホームページの内容は『C言語のデータ構造』に関するものと『ネット百科事典』だけだからな。感染者に勉強させようとするウイルスなんて聞いたことがない」
「
「やめておこう。リリース前に取り乱すとたいへんだ。発売前のクリアリプレイを文章媒体にしてネットで公開するとか、書籍で売り出すとか意気込んでいるくらいだからな。プログラマーの誰かが閲覧した
「……ログを小説みたいにするんですか? アプリだけじゃないんですねぇ。プロデューサーも商魂たくましいなぁ」
「けれどゲームの製作日程がシビアなんだよ。倉さんからは世界観をできるだけリアルに作るよう指示されている。次から世界設定で犯罪の発生もオンになる。太陽と星の運動についてはベータテストにも関わらず製作中だ」
「倉プロデューサーは、天体の年周運動まで再現するように言ってましたねぇ」
「気づくユーザーはいないと思うんだけどな。作業自体は難しくないんだが、新たにプログラムを追加した時に目を覚ますかもしれない水面下のバグが怖い」
「あはは……わかりますよ」
「――ヨシっと……。神野さん、バックアップ終了OKっス」
「リューゾー、ご苦労さーん。じゃあ、
ジジジジ……。機械音のひとつに止まっていた新しい音色が加わった。
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