第3話 その男は 橘 竜矢
俺の名前は
それは高校2年になった春の出来事だ。俺はアニメ漫画ゲームが大好きな高校生だ。
寝るのはゲームやアニメを見ていたら、毎日2時を回る、朝は高校生のため早いので寝ぼけた体に鞭を打って登校していた。
その日もそうだった。
5月も後半になり、ゴールデンウィークという休みを終え、これから体育祭だの始まる時期だ。
俺は寝ぼけた頭のまま家を出た。そこまでは良かった。
だがそれ以降の記憶がない。
俺はどうやら走行中のトラックとぶつかったらしい。
らしいというのも現在俺の目の前で起きている夢のような出来事を話すこいつ自称神からその話を聞かされた。
「理解できましたか?えーとつまりリュウヤさんは死んでしまって輪廻転生されるわけなのですが、そうなると来世は
そう言い放つのは髪の無い神様。
男か女かわからん。声は女だが、肉体美は男なんだよな。
「あーこれですか?これはストレスです。いやぁ〜私の世界の魔王が強すぎててですね?勇者御一行が敗北してしまったわけですよ。実に辛い」
頭を指差しながらハァと溜息をついた。
うん?今聞き捨てならないこと言わなかった?勇者御一行が魔王に負けた?
それでその代わりに?
「そーです!そーです!いやー理解が早くて助かる!では転生の準備をするのでしばらくお待ちください」
そう言って神様は見えない空間を操作パネルでもあるかのように触り出した。
「いやいや!俺転生するなんて言ってないけど!」
「はて?私が聞いているのは心の声。要は本心を聞いているので隠し事は無駄ですよー。ちなみに、嘘だと思うならですけど、リュウヤさんの前世での好きな人は親友の妹さんでしたか?また面白いところを狙っていましたねー親友の家に遊びに行く振りをして、妹さんと交流するですか〜。まああれも面白かったのですが、死んでしまうとは仕方ありません。他の遊び方......いえ!切り替えてこちらの世界で楽しんでください」
おい。心の声が聞こえてるならアレだけどよ。
ふざけんじゃねぇえええええぞ!
てめぇ!オラ!返事しろ!
「完成しました。リュウヤさん属性は風が最も適正ですので、そのまま風属性のスキル与えておきますね〜あ、この辺の武器もあげちゃいますね!」
そう言って空間を操作し終え、そしてこちらを向いてにっこり笑うと、俺の周りが白く輝き始めた。
「では行ってらっしゃい!」
神様に手を振られ俺は異世界へ行くこととなった。
ーーーーーー
「実感がない!」
あれから約1ヶ月。
俺は必死で金を稼ぎ、ギルドへ加入したはいいが、1月1金貨ギルドへ払わなければならないという厳しい条件に俺はギルドを抜け、すぐに王都を出た。
転生先は王都だった。
金は掛かるは、煩いわ、冒険者達みんな強いわ。金稼ぐにはクエストをしろって言われたがクエストがそもそもギルド監視の下その実力にあったものしか受けさせてくれないから、俺の場合魔物退治しかないから死ぬ可能性あるし、無理ですって言ったら、ライ・チナメとかいうやつに勝てば10金貨ギルドがくれるっていうから挑んだら即負けるわでもうやってられるか!
ちなみに1金貨は日本で言うところの1万円くらいの価値らしい。
転生者が何人もこちらの世界へ来ているそうだ。
その中には強盗のようなことをしているものもいると言う。
俺はしない。俺はもう活躍することを諦めた。そうだ田舎へ行こう!
思い立ったが吉日!俺は馬車を借りすぐに田舎街へ向かった。
一人旅の予定が弟子にしてくれとミューヤ・トレブルという女の子に言われ、空返事をしてしまったらしく同じ馬車に乗って田舎まで来てしまった。
ミューヤ・トレブルは金髪碧眼の小柄の可愛い女の子だ。何処かの貴族らしく、家出がしたかったから、好都合ですと言われた。俺は大変な事をやらかしたのではないだろうか。
歳は11歳だそうだ。
手を出したら犯罪になるし、そもそも俺にそんな気は無い。
まずは生活して行くために、家と金だ!
つーか異世界系ってもっと主人公補正チートあるんじゃないんですかね。
いちおう言語理解や文字理解といった生活に必要なスキルは、神様に与えられていた。
この無限収納型のアイテムボックスという腕輪。最初はドヤ顔できると思っていたが、どうやら、レベル500越えの鍛冶屋なら作成可能らしい。
つーかレベル500ってなんだよ。
俺のレベルは現在105だ。
これでも一ヶ月生き抜くために必死で魔物と戦いましたからね。
そして神様から与えられた道具、白夜の杖。
これのせいで盗賊に何度襲われそうになったことか!その中には同じ転生者もいたぞ!
そんな中それを切り抜けられたのはこのスキル【風神】のおかけである。
飛んだり切ったり、飛ばしたり自由自在に風を操れるスキルだ。
そんなこんなで、俺は王都より馬車で3日間休憩を挟みながら、すごく田舎の街へやってきた。
街の名前は【
街の規模は王都の10分の1程度。だが街は穏やかで賑やか、街の外は自然豊かで狩人達は 鳥などを狩って生活しているらしい。
鳥狩りなら俺にもできそうだ。
この街にもやはり冒険者ギルドは存在した。
こんな小さな街に冒険者ギルドが二つあると聞いた時は驚いたがどうやら一つは潰れかけのギルドらしい。
そのギルドが【 鉄の掟 】
そしてもう一つ。現在もクエストの受注などを活発的に行なっているギルドが【 ソード・バースデー 】というギルドだ。剣の誕生日。何のことだ。
まあ俺はギルドには入らないが、俺の後ろをチョロチョロしているミューヤは冒険者ギルドに興味津々だ。
この街に来てから約一ヶ月が経った頃、俺は日々の狩の甲斐があって、冒険者だったクラスと呼ばれる職業欄みたいなところが狩人へと変わっていた。
このクラスによってスキルの効果に色々な効果が付与される。狩人は命中率アップなどが付与された。
俺はその日も日課である鳥狩に出ていた。
鳥は毎日決まった時間に決まった数出現するので、その時を逃すとその日は取れないレア食材らしい。
1羽銀貨1枚という値段で取引されていた。日本円で約1千円である。
毎日その鳥を10羽狩っているので、生活に困ることは無かった。
その日も同じように鳥を狩っていたのだ。
ミューヤはいつも離れた場所から俺を見学させてもらいますと言って、離れた場所でゴブリンなどの討伐クエストをこなしながら、俺の鳥狩を見学している。
ミューヤのクラスは魔法使いと呼ばれる、魔法特化クラスだ。
ある程度の敵なら一人だけでも倒せるのでミューヤはそれを行い、ギルドへクエスト達成を報告して、報酬をもらう。
クエストはその流れで受けることができる。
ミューヤが先にそいつのことに気がついたらしく、魔法で俺に防御力アップと魔法威力アップの効果を付与する魔法をかけてくれた。
「おい!風野郎!鳥を狩りすぎだよ」
その男は突然声を荒げてこちらに訳の分からないことを言って来た。
礼儀がなっていなさすぎだし、そもそもこいつが誰なのかわからない。
「 君は誰だ?俺は鳥を狩って街で売っているだけだが?悪いことがあるのか?」
「お前さぁ。街にはそれを専門にしてるハンターさんもいるわけよ。わかる?仕事がなくなるの!お前は力持ってるなら魔物狩って稼げよな」
あーなるほど、そーゆうことか。
でもそれだと俺が生活していけなくなるしな。
「嫌だよ。魔物とか死ぬ可能性あるし、これは楽なんだよ、死ぬ可能性ないし、安定して稼げるし」
魔物は怖い。無理死ぬ。ということでこいつには悪いが断らせてもらう。
「あっそ。じゃ、力で分からせるか」
男はそう言った。
力で分からせるって俺と戦うのか?
まあいいけど。
「いいの?俺結構強いけど」
俺は実際強い。
こんな田舎町のやつに負けることは無いだろう。そう思って笑みが浮かんだ瞬間だった。
「
男の拳に紫色の光が見えた瞬間だった。一瞬にして男は俺の目の前まできてその拳をこちらへ向かい振り抜いていた。
エグすぎだろ!
「風よ守れ!」
それは俺のスキル風神の発動を意味する言葉だ。先程まで鳥狩に使っていた風がその流れを変え、リュウヤを守るように盾の形を作り、拳を防いだ。
無事防げたが......
耐久度半分持ってかれた!?
威力高すぎだろ。
ミューヤの加護が無かったら確実に貫かれていた。
都合のいいことに無限に風で守れる盾とでも解釈してくれたのだろうか。連続して打ってこなかったので、即負けは無かったが、このままの間合いでの戦闘は不利。
「風よ!吹き飛ばしなさい」
そう判断し盾を消し、風で男を飛ばした。
「いってええええええ!」
男の体を空へ投げ飛ばした。落下の瞬間少しだけ止まった気がした。
落下のダメージを何らかのスキルで防がれたのか。
おいおい、田舎町よ。こんな怪物を雇ってんじゃ無いよ。
そして彼方の後衛役だろうかお爺さんが先程から戦闘を眺めていた。
手を出してくる気配がないところを見ると、あの爺さんはミューヤへの警戒ということだろうか。
ミューヤからあれ以来援護がこないので、あの爺さんにバレるのを避け身を潜めていると考えるべきだろう。
ミューヤはレベル85だけあって判断力はある方だ。
男は地を蹴り、駆け出したと同時に爺さんがこちらに聞こえる声で話し出した。
「お主はスキルを使い空の獲物を根こそぎ奪って、売って金にした罪だそうだよ?」
「鳥たちはなァ!美味いから高く売れるんだぞ!それを貴様わァアアアアアアア!」
サクヤは叫び、迅脚を発動させた。
「は!?おい!ちょっと待て!俺はそんな理由で攻撃されているのか!」
アァアン!?
マジでそんだけの理由でこんなことしてんのか!?
最初はそういう建前で強盗的な奴らだと思っていたが、マジでそれが理由だったとは。
というか突然話し出した理由は接近目的か!
まずい!
「盾よ守れ!」
すぐに風で盾を作り受け止めた。
何度も破られたが破られたことがバレる前に風を構成させ、己を守った。
「そんな理由だと!お前のせいで何人のハンターが職を失ったと思っている!」
「し、知らねぇよ!ってか!お前には何もしてないだろ!」
サクヤは殴り続けてくる。俺は何度も何度も風で盾を作っては防ぐを繰り返していた。
「関係なくない!俺の世界の出来事は俺の問題だ!」
「わけわかんねぇ!てかお前しつけぇよ!チェンジ、刃、風の刃よ、斬り落とせ!」
同じことの繰り返しで、我慢の限界だったってのもあるが、それ以前にこのままではMPと呼ばれるスキルや魔法を発動する度に消費するエネルギーが底をついてしまう。
MPが底をつくと魔法やスキルが何も使えなくなるので、その時点で負けが決まる。
そのためこのタイミングで決断をした。
リスクありきで攻めることを。
その瞬間、俺の身体にエネルギーが溢れ出た。
このタイミングでミューヤが魔法をかけたのだ。
(最高のタイミングだ!)
先ほどまで盾の役割をしていた、風が形を変え、刃となりサクヤの身体を貫いた。
「グッ」
風の刃がサクヤの体を防具の上から貫いていた。
「 お前さー。せめて風の盾を破れるようになってから来いよ。てか盾の耐久度下がってねえし、お前弱すぎだろ」
風の刃を消した。いやMP切れだった。
台詞は仕方のない台詞だった。
実際盾は何度も壊されては作り直しMPが底を尽く始末。
こいつに圧倒したことにすれば、前衛役を圧倒する力を持つものを後衛のみで倒すのは困難と判断して、後ろの爺さんはこいつを背負って帰ってくれるのではないかと考えたからだった。
そして男は倒れていった。
意識を無くしそのまま地面へ倒れ......てくれればどれだけよかっただろうか。
「剣の一【
そこ声で俺は絶望した。
まだ戦えるだけの力があったのかよ!
「まだ、意識があったのか。チェンジ、盾、風よ我を守れ!」
だがそう叫びスキルを発動させると風が収束を始めた。
MPが足りない!盾が作れない。クソが!
男がニヤリと笑ってその拳が俺の腹を穿った。
「撃ちぬけ。抜刀!」
「なん...だと!?」
盾を作れることができなかった、風で止まることなくリュウヤの腹に右ストレートが突き刺さった。
出来損ないの盾は一瞬にしてただの風と化し、威力を殺されぬまま拳がリュウヤを撃ち抜いたのだ。
「 よっし!ヒットだ!まか、せたぞ。エギ......」
男はそのまま地に倒れた。やばい無理死ぬ。
立ってるだけで限界だ。
「グバッ。はぁはぁ。クソ!イテェ。腹を殴られただけだ。こんな威力があってたまるか!さっきまで盾すら破れなかったんだぞ!」
頼むもう帰ってくれ!頼む!頼むから!ミューヤ逃げろ!
お前の場所は既にバレている!だから早く逃げろ!
目の前に倒れるサクヤを睨みつけた。
「この死に損ないが!さっさとくたばれよ!」
リュウヤは男を蹴りつけ踏みつけた。
何でこんなことをするんだよ!
許せねぇよ。
「絶対にお前は殺す。ひひひ」
もう意識が飛びそうだ。
無理に笑ったり演技したりするのも限界がきている。身体が動かない。
「どうやって殺すのですかな?」
リュウヤの後ろから先程の爺さんが話しかけてきた。
「お前は?そうか。お前はこいつの仲間だったな、先にお前からやってやるよ!」
限界ギリギリの身体に鞭を打って余裕を偽り、最後まで足掻いてやるよ!
MPが足りないなら生命力。HP削って放てばいい!
「風よ!刃となれ!」
エギレドの体に風の刃が突き刺さった。
「はて。涼しい風が吹きましたが、お腹を冷やされると風邪をひいてしまいますので、どうか別の場所でお願いしたいのですが?」
しかしエギレドはダメージを受けた様子はなくピンピンとし、冗談を言って返した。
「なんだと?刃よ!貫け!」
何でだ!?HP削って放った一撃が涼しいだと!?
意識が飛びそうだ。
負けたらミューヤがやられる。
「くだばれ!くたばれよ!」
何度刃を撃ち込んでもエギレドは後退どころか、前進をしてきた。口の中が血の味がする。吐きそう。頭がクラクラする。
「お、おい!なんだよ。なんだよ!それ!なんで風が効かない?待てよおい」
動揺が口から自然と出ていた。
「おじさんをナメるなよ?若造が」
爺いがよ!何でだ!?
「くそ!風よ!盾だ!盾!俺を守れ!」
刃となっていた風はリュウヤのその声に反応し盾に変わった。頼む貫かないでくれ。
「そのような紙で儂を止めるとでも?」
エギレドが盾を指で触ると盾は消えた。
「なんなんだ...よ。」
紙......ですか。
俺の腹に爺さんの手が触れた。
【 ガン・テイト】
爺いさんの手から魔力が撃ち放たれた。
0距離レンジの必殺スキル【ガン・テイト】の一撃がリュウヤを地に落とした。
「殺してはいない。反省せよ。売るなら通常額、狩るのはハンター達と話し合え。それだけだ」
「ぁ、、、」
倒れた俺の目に映ったのは、自分の足首に光る緑色の輪だった。
くそがぁああああああああああ!
俺はただ生き抜くために......。
ミューヤ逃げろ。。。
ミューヤへそう最後に願い、意識が消えた。
『 第1章裏 風使いの転生者編』
「お疲れ様です。ルチカさん」
そう言って、ルチカにコーヒーを出した少年はリュウヤその人だ。
彼はルチカの作品に出たいあまり、自分を題材にして書いて欲しいと頼んできた転生者だ。
物語はフィクションを含むのは戦闘シーンのみで、前日譚などは彼から聞いた真実だ。
「転生者視点で書いた見たのだけど、どうなるかなぁ。1章は賛否両論あったからねぇ」
「いや流石にサクヤさん達のあの理由は俺もどうかと思いましたよ」
「時間がないとはいえやはりしっかり詰めて書くべきだったか」
「ちなみにですがルチカさん。ギルド鉄の掟に入れてもらう話なんですが、どうですか?まだ続けてもらえませんか?」
リュウヤはどうもこのギルドに入りたいらしく、時折こうして、サクヤやエギレドが仕事(クエスト)に出ている間にギルドに来ては、仕事の手伝いをしてくれている。
「メンバーが集まりそうだから、考えているわ。その時にはサクヤ達にも紹介するから、よろしくね」
「はい!」
ーーーーーー
森
「エギレド!後ろ!」
「わかっている」
エギレドは後方から接近して来た岩石龍をぶん殴り、その身体を四散させた。
「岩石龍を5匹討伐クリアだな。それにしてもルチカの書いた裏読んだか?」
そう言って俺はエギレドに、紙を渡した。
「読みましたとも」
「まさか異世界転生者視点で書くとはなぁ。何か怪しいな。転生者友達とか言われたら流石に無理だぞ」
「そうじゃな。サクヤもこの物語までとは言わんが、嫌いじゃもんな異世界から来た連中」
「ああ。神かなんか知らんがあんな奴から力貰って、それもあたかも自分の力であるように使うなんて認められない」
「ブファッ」
突然エギレドが吹き出して笑い出した。
「物語の中のサクヤと同じようになっておるな。ある程度の現実味はある話なわけだ」
「るっせぇな!帰るぞ」
「そうですな」
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