第19話 CO2添加!
時は少し戻って、土曜日です。
「千草ー!買ってきたよー。砂糖とゼラチンとドライイースト。これでいいの?」
お母さんが買い物に行くと言うので、砂糖1kgとゼラチン、ドライイーストを買ってきてもらった。
この前空けた、2Lのミネラルウォーターのペットボトルと100均で買っておいた漏斗を持ってリビングに向かう。
「ありがとー。鍋使うよー。」
「いいけど、ゼリーでも作るの?」
ゼリーと言えばゼリーだが、食べる用ではない。この前美斗さんに教わった、発酵式CO2というものに挑戦するのだ。
「まずは水を1000cc鍋に入れる。砂糖は500gくらいでいいか。」
鍋を火にかけ、砂糖を溶かしていく。砂糖はあっという間に溶けて、濃厚な砂糖水が出来上がる。この時沸騰させてしまうとゼラチンが固まらなくなってしまうので注意だ。
「ちょっと味見〜。あまっ!」
砂糖がしっかり溶けてから、火を止めてゼラチンを入れる。5gの粉ゼラチンを5袋たっぷり溶かしていく。
「意外と簡単だなぁ。このまま少し冷ましてから、ペットボトルに入れる…と。」
常温に冷めるまで待つ。妹やお母さんに変なことをされないように、蓋をして、ポストイットを貼り付けておく。
「よし、いったん休憩〜。お菓子食べよ。」
◇◇◇◇
「そろそろ冷めたかなぁ。…うん、おっけー。」
2Lペットボトルに漏斗を差し込み、鍋からペットボトルに砂糖水を移す。熱いまま入れると、ペットボトルが熱でベコベコになってしまうらしいので注意。
「蓋をして、冷蔵庫で冷やす。千秋にイタズラされないように、ポストイット貼っておこ。さわるな!と。」
よし、これで砂糖水ゼリーの準備は完了だ。これが固まったら、ぬるま湯で溶かしたドライイーストを 注げば完成だ。
「あとは、明日ホームセンターでいろいろ買えばいけるかなぁ。」
◇◇◇◇
「ただいまー。」
ホームセンターで彩といろいろ買い物をしたあと、お父さんと合流して帰ってきた。
お昼をみんなで食べたあと、冷蔵庫から砂糖ゼリーが入ったペットボトルを回収し、自分の部屋で工作を始める。
「まずは蓋に穴をあける。」
お父さんから借りたピンバイスを使って蓋に穴をあける。あけた穴にチューブジョイントを入れて、瞬間接着剤で固定する。
「まぁこんな感じかな?とりあえず固まるまで放置。次はー、チューブを切るか。」
チューブの先端にCO2ストーンを取り付ける。適当な長さでチューブを切り、逆止弁を取り付ける。逆止弁は発酵が止まった時に、水槽の水がペットボトルに逆流するのを防ぐために必要らしい。
CO2ストーンを水槽の中に入れて、キスゴムという吸盤で、チューブをガラス面に止める。
「あとは、逆止弁とペットボトルをチューブで繋ぐだけかな。もう固まったかなー?」
ペットボトルの蓋にくっつけたチューブジョイントをいじってみる。うん、多分固まってそうかな。逆止弁に短めに切ったチューブを取り付けて、チューブジョイントと繋ぐ。
「これで、ほぼ完成かな。あとはー、ドライイーストー。」
バタバタと階段を駆け下りてキッチンに向かう。流しからぬるま湯を出して計量カップに100cc注ぐ。ドライイーストを1袋、ぬるま湯で溶かし、零さないように2階に向かう。
「これを…、ペットボトルに注ぐ…。」
砂糖水ゼリーが入ったペットボトルに、ドライイーストを溶かしたぬるま湯を注ぐ。ゼリーの上に濁ったイースト水の層ができた。
「これで大丈夫なはず。数時間で発酵が進むらしいけど…。上手くいってますように!」
◇◇◇◇
「はぁー、さっぱりー。」
夜ご飯を食べて、だらだらして、お風呂に入って、あとは寝るだけ。明日は月曜日だから、夜更かしはできないなぁ。早めに寝るか…。と思いつつ、水槽に目を移す。
「お?泡出てるじゃん!」
水槽の隅に取り付けたCO2ストーンから気泡が上がっていることに気がついた。勢いは凄く弱いけど、小さな気泡が立ち上っている。
「ペットボトルの方は凄いことに…。」
ペットボトル内では発酵が進んでいるのか、イースト水の層がブクブクと泡だらけになっている。砂糖水ゼリーを溶かしながら発酵が進み、イースト水が泡立っているのだろう。
「おー、なんだか上手くいってそうじゃん!写真撮っておこう。」
スマホを使って初めてのCO2添加の記録をとる。あとで美斗さんに送ってみよう。
「うんうん、いい感じ。これで水草がいっぱい育ってくれるといいなぁ。」
今日ホームセンターで見た水草と、店長さんのとこの水草の違いを思い出す。いろんな違いはあるのだろうけど、CO2添加の有無が水草に与える影響は凄く大きそうだ。
「たくさん光合成して、綺麗に育ってくれよー。」
CO2添加し始めたばかりで、まだまだ大きな変化は無いにも関わらず、じーっと水草を見つめてしまう。
これは今日も夜更かしコースかもしれない。水流で揺れるパールグラスや、水中を漂う小さなCO2の気泡をぼーっと見つめながら、夜はふけていくのだった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます