第17話 ホームセンターに行ってみよう

「おはよー。」


「あ、おはよー。土曜日どうだった?美斗さんと佑香さんとは仲良くなれた?」


 さっそく彩に土曜日の報告をする。

 美斗さん、佑香さんとはサイゼでランチをしつつ、これからどんな風に水槽を作っていけばいいか、どんな知識が必要かについていろいろ教えてもらった。


「いいなぁ、楽しそうだなぁ。そうそう!私もアクアリウム始められそうだよ!」


 彩の言葉に嬉しさが込み上げる。


「え!ほんと?お父さんの水槽使えそうだったの?」


 彩のお父さんは昔アクアリウムをやっていたらしく、その時使っていたものがまだ残っているらしいと 、土曜日に話していた。


「そうそう。まぁ使えるのは水槽くらいなもんだけどね。45cmだったかな?少し小さめのやつで始めてみようと思う。」


 私の60cm水槽よりも一回り小さいのかな?小さい水槽は水質管理が難しいって聞いたけど、彩はお父さんが経験者だし、その辺は何とかなるのかも。


「じゃあ次の土日は店長さんのとこ?」


「いや、店長さんには悪いけど、ホームセンターで揃えようかなって。千草も一緒に行ってみる?まだ行ったことないでしょ。」


 何だかんだ店長さんのとこで全部揃えてしまったから、ホームセンターに興味はあったがまだ行っていない。


「行ってみたいなぁ。でも、あそこ自転車じゃキツくない?」


 ホームセンターは大抵郊外にあるものである。私達が言っているホームセンターはかなり大型なこともあり、当然郊外にある。

 私の家からも当然車で行かなくてはいけないし、おそらく彩の家からも車で行かないと無理だろう。


「うちのお父さんに車出してもらうつもり。千草も嫌じゃなければおいでよ。」


 彩のお父さんかぁ…。

 人見知りの私には少しどころか、かなりハードル高くないかなー?

 微妙な顔をしていたのが伝わってしまったのだろう。彩が笑う。


「あはは、大丈夫だよ。うちのお父さん何にも喋んないから。着いたら別行動の予定だし。」


「え、いいの?それ。」


 大丈夫大丈夫ー。と彩が笑う。

 まぁ、彩がいいならいいか…?私も行ってみたかったし…。


「うーん、ちょっと考えさせて…。」


「りょうかーい。行くとしたら日曜ね。土曜は部活あるからさ。」


 うん、分かったと答えたところで、ちょうどホームルーム始まりのチャイムが鳴った。

 さて…、どうしたものか。



◇◇◇◇



「今着いたよ…っと。じゃあ、私ペット館に居るから。」


 今日は日曜日。

 私は例の大型ホームセンターに居る。


「うん。終わったら連絡して。パパはいろいろ見てるから。」


 うちのお父さんがちょうど行きたいと言っていたので、じゃあ日曜に!と提案したのだ。


「あ、千草ー!」


 ペット館に向かうと、手前の園芸センターで彩が手を振っていた。

 手を振り返しながら小走りで駆け寄る。


「やほー。久しぶりに来たけど相変わらず広いね。ペット館もこんな大きかったんだ。」


 このホームセンターは、いわゆるホームセンターと、園芸センター、ペット館に大きく分かれている。建物も別で、ペット館と園芸センターもちょっとしたスーパーくらいある。

 この辺りどころか、おそらく県内最大級のホームセンターと言っても過言では無いだろう。


「さっきチラ見したけど、熱帯魚コーナーもかなり広かったよ!」


 彩はワクワクが抑えられない様子だ。私も結構楽しみだ。

 私たちはなんとなく小走りでペット館に向かう。



◇◇◇◇



「熱帯魚コーナーはあっち!」


 ペット館に入った私達は、いつもと違って子犬や子猫、ハムスター達には目もくれず、熱帯魚コーナーに直行した。


「うわー、凄いなこれは。」


 ズラっと並んだたくさんの機材。

 30センチ、45センチ、60センチ水槽。いろんなセットになったものがたくさんある。

 フィルターも上部はもちろん、高価な外部式、お手ごろな外掛け式、投げ込み式、スポンジフィルターもある。

 機材は浅野観賞魚センターの倍以上あるんじゃないだろうか。


「しかも安い気がする。」


「んー、物による?これなんかは店長さんのとこでも同じくらいの値段だった気がするけど…。」


 実際のところ、店長さんのとこでしっかり機材を見た記憶は無かったので、本当に同じくらいの値段だったのかはわからない。


「まぁいいや、フィルターはこの辺かなぁ。どうしよ。やっぱり外部式がいいんだよね?」


 いろんなフィルターが集められた棚の前に立つ。彩はあれやこれやと手に取っては棚に戻す事を繰り返している。


「調べたんだけど、小さい外部式もあるみたいだよ。あ、これこれ。」


 手に取ったのはテトラのパワーフィルターという銀色のやつ。

 値段は4000円くらい。高い…。

 そっと棚に戻した。


「やっぱり外部式は高いねー。」


 彩は大きな外部式のフィルターを眺めている。エーハイムやGEX、テトラの大きな箱がたくさん積まれていた。


「お手頃価格なのはやっぱり外掛け式かなぁ。これとか。」


 次に手に取ったのはGEXの外掛け式フィルター。テトラの外掛け式も近くにあったが、どちらも1500円くらいだ。


「やっぱりその辺かなぁ。45cmには…、この大きさね。おっけー。」


 彩は私が手に取った外掛け式を受け取り、裏面の説明書きを読みつつ、うんうんと頷く。


「フィルターはこれでいいや。あと必要なのは…、ライト、蓋、底砂、バクテリア剤、カルキ抜き、水換え用品。」


 今日に至るまで、学校で彩と話しながら、必要なものをリストアップしておいたのだ。

 私は全部店長さんに揃えてもらってしまったので、ネットで調べつつ、買うべきものをリストアップしていく作業は、新鮮で勉強にもなった。


「とりあえず買うやつの目星を付けてから、魚や水草見に行こう!」


 さっそくライトのコーナーに向かう彩を追いかける。

 自分で水槽の機材を1から揃えるのも結構楽しい。この前美斗さんも言っていたが、もう1台水槽を組む時が絶対来るのだろうなぁ、その時はどうしようかなぁと考えて、思わず頬が緩んでしまった。

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