第16話…ろ過のいろいろ

 今日は日曜日。

 昨日は美斗さんと佑香さんという新しい友達と、夕方までたっぷりお話をした。

 とても勉強になったし、刺激的だった。


「ろ過…。」


 ベッドに転がって、だらだらとスマホをいじる。最高の休日と言っても過言では無い。


 しかし、今日の私には目的がある。

 昨日佑香さんに言われた、ろ過の勉強をするのだ。


「へぇー、ろ過装置にもいろいろあるんだ…。」


 私が今使っている上部フィルター。

 金魚の水槽でよく見る投げ込み式フィルター。

 水槽の中に設置するスポンジフィルターに水中フィルター。

 水槽の縁に引っ掛ける外掛け式フィルター。

 水槽の外に設置する外部式フィルター。


 それぞれ特徴があって、ろ過能力に違いがあるらしい。

 そもそも、ろ過と言うものは、物理ろ過、化学ろ過、生物ろ過という3つに分類できる。


 高校生になったから、物理、化学、生物を授業でやるんだよね…。今までは理科だったのに…。勉強難しくなるのかなぁ、嫌だなぁ。


 っと、余計な事を考えてしまった。

 えーっと、物理ろ過はスポンジやウールマットを使ったろ過で、魚の糞とか食べ残しをろ過する。

 化学ろ過は活性炭やゼオライト?で物理ろ過できないようなものを吸着すること。

 生物ろ過はバクテリアによってアンモニアを分解してもらうこと。出た、バクテリア。


 魚の排泄物であるアンモニアをバクテリアが分解して、亜硝酸に変えて、さらにそれを硝酸塩に変える……。

 硝酸塩はどうしようも無いから、水換えをして取り除く必要がある。


 ふむふむ、なるほど……。

 難しい!わからんー!


 とりあえず生物ろ過って言うのが1番重要みたい。

 魚が生きやすい水にする為にはバクテリアが必要だって店長さんも言ってたし。


 バクテリアはフィルターや底砂に住むらしい。フィルターのろ材の量が多ければ多いほど、バクテリアの数も多くなる。

 上部ろ過はやっぱりそこそこの性能があるみたい。最強なのは外部式フィルターってやつなのか…。


 うわ!高っ!

 外部式フィルターって1万円近くするんだ…。

 水槽組めちゃうじゃん……。


「へぇー……。ほぉー…。」


 ろ過とは、フィルターとは、バクテリアとは……。

 今の時代スマホがあれば大抵の事は調べられる。なんとも便利な時代になったものだ。


「うーん……。」


 ろ過について一通り調べてから、自分の水槽を眺める。

 上部ろ過から流れた水が水草を揺らし、ネオンテトラがのんびりと泳いでいる。


「バクテリアは目に見えないからなぁ…。ネオンちゃん達元気そうだし、バクテリアはしっかり仕事してくれてるのかな。」


 そういえば、今日で設置から1週間だ。

 水換えをした方がいいのかもしれない。

 スマホで水換えの頻度について調べてみる。


「1~2週間に1回、1/3程度を換える…。ただし水換えのやりすぎはよくない。」


 水換えの目的は、バクテリアが分解した硝酸塩を取り除くこと。ただし、水換えをやりすぎるとバクテリアが死んでしまう。


 なるほど、佑香さんの言っていた意味がわかった。水槽のメンテナンスをする上で、ろ過の仕組みを知ることは確かに重要だ。


「今の水槽の水は、ほとんどお店のやつで、バクテリアは充分。あ、フィルターはどうなってるかな…。」


 上部フィルターの蓋を開けてみる。

 ちょろちょろと流れる水を受けているウールマットは、うっすら汚れていた。


「うーん、少し汚れてるけど、まぁこんなものなのかな。ウールマットは物理ろ過。この変なの…、リングろ材だっけ?これはバクテリアの住処…。」


 ウールマットを捲ると、コロンというお菓子みたいな形のやつが水に浸っている。

 これはリングろ材といって、小さな穴がたくさん空いており、そこにバクテリアが住み着くらしい。


「うーん、匂いも特にしない。この辺はいじらなくていいかな。とりあえず水だけ少し換えよう。」


 勉強机のゴロゴロ動かせる引き出しにしまってあるポンプを取り出す。バケツとタオルも準備。


「よし。やるかぁ。」


 ライトとガラス蓋をどかして、ポンプの吸い込み口を水の中に突っ込む。

 きゅっきゅっとポンプを押して、水を吸い込んでいく。


「お、来たきた!」


 ポンプの吐き出し口から水がドバっと出てくる。サイフォンの原理と言うらしい。

 水が流れてしまえば、吸い出し口を引き抜くまで止まらない。バケツから溢れないように気をつけなければ。


「2杯分でいいか。」


 バケツ2杯分の水を捨てて、2杯分の水を水槽に入れる。

 バケツを持って階段を上り下りするのが大変だ。何で私の部屋は2階なのだろう。

 1階の和室で寝ているお父さんと代わってもらおうか真剣に考えてしまう。


「ふぅ……。こんなもんかな。」


 水換え完了。だけど見た目の変化は無い。

 うん、変化は無い方がいい。


「うんうん、いい感じな気がする。」


 立ち上げからまだ1週間。

 今はまだ順調に進んでると思うが、これからいろんな不調が起きてくるのだろうか。


 美斗さんも佑香さんもいろんな失敗したって言ってた。

 失敗した時に対応できるように、知識をつけておかなくてはいけないと思う。


「いろいろ大変だけど、やっぱり楽しいな。」


 ネオンテトラにフレーク状の餌を与えてから、ぼーっと水槽を眺める。

 ネオンテトラにつつかれた餌がヒラヒラと水中に舞う。


「きれーだなー。」


 いつまでも見ていられる。

 椅子に座ってぼーっと水槽を見つめながら、いつの間にか私は寝てしまった。

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