第14話…理想の水槽を作るのに必要なもの
「私もアクアリウムやりたくなった…。」
彩が苦しそうな顔をして呟いた。
あの後、4人で水草や熱帯魚を見ながら色々な話をした。
双葉さんと日高さんに解説してもらいながら見て回るのは新鮮で、私も欲しい水草が増えてしまった。
「彩はこっちにお金まわす余裕あるの…?」
「正直厳しい…。お父さんの昔の水槽とか見て使えるやつがあるか調べてみる。」
彩は近いうちにアクアリウムに手を出すんだろうな。行動力半端ないから…。
時間になったので、みんなで店を出る。
帰りがけに日高さんは店長さんと話しており、また明日と言って出てきた。
「じゃあ私は部活に行ってきます。また遊ぼうね!」
彩は自転車に跨り颯爽と走って行ってしまった。
みんなでまたねーと手を振って見送る。
「さて、私達はご飯に行きましょうか。サイゼでいいですか?」
双葉さんが提案してくれる。こういう時に先導してくれるのは非常にありがたい。
大丈夫です。と答えながら、私も自転車に跨る。
双葉さんと日高さんも自転車に乗り、双葉さんを先頭に3人で駅前のサイゼに向かった。
◇◇◇◇
「あの歯医者の水槽がきっかけなんだ?あれ凄いよねー。」
「佑香さん知ってるんだ?」
「あそこの歯医者さん、浅野さんの常連ですもの。千草さんも通ってればそのうち会えますよ。」
ご飯を食べたあと、3人でドリンクバーを飲みながらお話に興じる。
一般的な女子高生がするお話とは違うかもしれないけど…。
「じゃあ千草はあんな感じの水槽を作りたいんだね?水草多めで生体もそこそこ入れた感じの見栄えのするやつ。」
メロンソーダを飲みながら、うんうんと頷く。
「歯医者さんの水槽や、お店の熱帯魚コーナー入ったとこにある水槽みたいな感じにしたいんだよね。」
生体も水草も、今はまだ全然だけど、これから少しづつ増やしていきたいと思っている。
「千草さんの水槽、もう一度見せてもらえますか?」
スマホを操作してから、美斗さんに渡す。
ふむふむといった感じで、こくこくと頷きながら写真を拡大したりしている。
何を見ているんだろう。
「ありがとうございます。今は60センチ水槽に上部フィルター、底砂は大磯、ライトはLED、CO2添加はしていない。これで合っていますか?」
スマホを返しながら問いかけられる。
合ってるはず…。と返答。
「千草さんの目指す水槽は今の機材で充分実現できると思います。欲を言えば、フィルターは外部に、ライトももう少し良い物に変えたいところですが…。そこは急がずとも良いでしょう。ただ……。」
「ただ……?」
「CO2の添加は必須と思ってください。これがあるのとないのとでは世界が変わります。」
CO2……、二酸化炭素だっけ。
「機材としてはこういうやつです。」
美斗さんが見せてくれた写真には、水槽の外側に、小さいボンベのような物が置かれていた。
「これがCO2ボンベとレギュレーター、水槽の中に拡散器と言うCO2を極小の泡にして水槽内に拡散させるものがついてます。」
「あ、歯医者さんの水槽にも、お店の水槽にもこういうのついてた気がする……。」
「水草メインにやるならCO2は必須だからね。無くても育つ水草でも、あった方が絶対にいいよ。ドリンクバー行ってくる。何か取ってくる?」
ウーロン茶お願いします。と美斗さんが、
私は、まだあるので大丈夫と返す。
「CO2かぁ。いくらぐらいするのかな…。」
「CO2のセットというのがあるので、それを買った方がいいですよ。」
CO2セットを検索してみる。
うわ、いっぱい出てきた。セットにもいっぱいあるなぁ。
タイマーって?電磁弁って?と美斗さんに聞きながら調べていく。
美斗さんは嫌な顔ひとつせず、こちらの質問に優しく回答してくれる。
「電磁弁があればオンオフをやりやすくなって、タイマーがあれば自動でオンオフできるんだね。なるほど…。」
電磁弁、タイマー付きのフルセットで1万4千円くらい…。1番安いやつでも7千円はする。
たっけぇ……。
「うーん…、しばらく無理かなぁ…。これボンベってどれくらいもつの?」
「添加量にもよりますけど、60センチなら1ヶ月から2ヶ月ですね。ボンベは1本400円くらいです。」
「CO2は初期コストがきつい。ランニングコストはそこまででもない。」
はい、ウーロン茶。と美斗さんにコップを渡しつつ、佑香さんが席につく。
「佑香さんもCO2持ってるんですか?」
「私は持ってない。水草はそこまでやってないから。」
佑香さんはコーヒーを啜りながら答える。
ブラックコーヒーっぽい。凄い、大人だ。
「じゃああれですね。試しに発酵式をやってみませんか?」
発酵式?と聞き返す。
また新しい言葉が出てきた。
「発酵式は初期費用をかなり抑えてCO2を添加する方法です。ちょっとめんどくさいですけどね。」
スマホを操作しながら、美斗さんは教えてくれる。
これが発酵式ですね。とスマホをテーブルに置いて説明を始めてくれた。
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