第13話…新しい出会い
「連れてきたよー。」
彩が女の子に話しかける。
ホント物怖じしないよなぁ。
「こんにちは。あなたが千草さん?私は
背の高い方の女の子が優しげに微笑む。
「あ、初めまして。水島千草です。」
ぺこりと頭を下げる。
「あたしは、
背の低い方の子はクールに言い放った。
「2人とも高一なんだって。南高らしいよ。で、2人とも熱帯魚やってるんだって!千草のこと勝手に紹介しちゃった。」
あははーと笑う彩に少し呆然としてしまう。
同い年っぽい女の子相手とは言え、よく知らない人に簡単に話しかけられるものだ。
彩のコミュ力に改めて嘆息する。
「千草さんは最近始めたばっかりなんですって?私とゆうちゃんは中学生の頃からやってるんですよ。私は水草メイン、ゆうちゃんはメダカ専門です。」
お淑やかなお嬢様といった雰囲気が溢れ出ている双葉さん。背丈は彩と同じくらいだから165くらいはあるのだろう。
「中学生の頃からって凄いですね…。先輩だ…。」
初めて会う人と話すのはやはり緊張してしまう。
「同い年なのに、先輩も何もないっしょ。たかが数年早く始めてただけ。」
相変わらずクールな日高さん。背丈は私よりも低い150くらいか。
お嬢様感のある、ゆるふわな双葉さんとは真逆で、黒のスキニーに黒の革ジャンといったロックな服装だ。
「もー、ゆうちゃんは冷たいんだから!千草さんはどんな水槽を作られてるんですか?」
やっぱりそういう話になるよね…。でも、作ったばかりの水槽を、何年もやっている人に見せるのは正直恥ずかしい。
「え、えっとぉ…。」
「こいつらはバカにしたりしないから、見せてみ。」
突然後ろから話しかけられてビックリしてしまった。慌てて後ろを振り向くと、店長さんが立っていた。
店長さんがそう言うなら…。と思い、おずおずとスマホを双葉さんに渡す。
「まぁ!凄いじゃないですか。レイアウトの基本がしっかりできています。」
「へぇー、ほんとだ。流木がいいアクセントになってるじゃん。アクアリウムの基本って感じでいいね。」
きゃっきゃという擬音が出ているのでは無いかと言うくらい、作ったばかりの、しかも素人が初めて作った水槽で盛り上がっている。
「ま、いいヤツらだから、仲良くしてやってくれ。趣味仲間がいるとモチベも上がるしな。うちの売上にも繋がる。」
はははっと笑いながら、熱帯魚コーナーから出ていく店長さん。
タバコを吸いに行くのだろうか。
「はい、お返ししますね。ありがとうございます。ちなみにこれが私のメイン水槽です。」
渡されたスマホに目を落とす。
「「すっご!!」」
彩と被ってしまい、2人で顔を見合わせて笑ってしまう。
双葉さんの水槽は、鮮やかな緑と赤に彩られた水草水槽だった。
複雑に入り組んだ流木、緑の絨毯のように生え揃った水草、燃えるように赤い水草が目を引くアクセントになっている。
「メイン水槽ってことは、他にもあるの?」
見蕩れていると、彩が双葉さんに質問していた。
「この他に2つ、違うコンセプトの水草水槽がありますよー。維持するのが大変です。」
にこにこと笑っている双葉さんが恐ろしい…。
「ちなみに、ゆうちゃんは今幾つ水槽稼働してるんでしたっけ。」
「今は15かな。ほとんど30センチだけど。」
15!?お店みたいだ。そんなに置く場所あるのが凄い。
2人の話を聞いてあわあわしていると、双葉さんが微笑みかけてきた。
「大丈夫です。千草さんも、そのうち絶対に水槽増えますから。」
一体何が大丈夫なのか……。
「あはは…。」
とりあえず苦笑いで誤魔化す。
「ねぇねぇ!とりあえずLINE交換しとこうよ!せっかくだからさ。」
彩がスマホを取り出す。
慌てて双葉さんにスマホを返しつつ、私もスマホを取り出す。
「わ、日高さんのアイコンめっちゃ凄い!」
「ラコビーのアルビノ。綺麗でしょ。」
ふふん。と得意気な日高さん。
私も日高さんとLINEを交換して、アイコンを見てみる。
「うわ!ほんとだ。凄いねこの子!これもメダカなの?」
日高さんのアイコンに設定されていたのは、濃いオレンジの身体に、青白いラメのような鱗、青白い尾びれと背鰭には赤い斑模様、真っ赤な目をしたお魚だった。
「そうだよ。アフリカのメダカ。ノソブランキウス・ラコビーのアルビノ個体。店長に仕入れてもらった。」
「ゆうちゃんのお部屋には、こういうカラフルなメダカさんがいっぱい居るんですよ。」
メダカと言えば、小学校の時にクラスで飼っていた白だったりオレンジっぽい地味なやつかと思っていたけど、外国のメダカはこんなにカラフルなんだ。
私の知らないことってまだまだいっぱいあるんだなぁ。
「千草さんは、今日は何か買いに来たんですか?」
「いや、私は今日は特に…。水槽買うのにお金使っちゃったから…。」
今日は彩の付き添いだったので、特に何を買おうとかは無かった。次に買うものの目星を付けておこうかなと思ってたくらいだ。
「じゃあ、このあとみんなでご飯でも行きませんか?せっかくですから、みんなでお話しましょうよ。」
ぱんっと手を合わせて、双葉さんはにこにこしながら提案してきた。
「私は大丈夫だけど、彩は……。」
そう、暇な私と違って、彩はこのあと部活がある。昼をコンビニで買って部室で食べてから部活に参加する予定だったはずだ。
「私は部活があるから、あと30分くらいで学校行かなきゃいけないんだー。せっかくなのにごめんね。」
だから制服なのか。と日高さんが呟いた。
「じゃあ残念ですが、彩さんはまた今度ということで。彩さんが出る時間まではここで色々見ましょうか。」
さんせー!と彩が両手を挙げる。
私と双葉さんがあははと笑い、日高さんも口元が綻んでいる。
彩に何か見たいものはあるのかと聞きながら、4人でお店の中を見て回った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます