第11話…睡眠不足な月曜日
水槽をセットした土曜日。
水草とネオンテトラを入れた日曜日。
土日はあっという間に終わってしまった。
今日は月曜日。
「おはよー……。」
「おはよー。千草、元気ないねー。水槽上手くいかなかったの?」
私の友達、前の席に座る彩が話しかけてくる。
「いや、めちゃくちゃ上手くいったし、凄い楽しかったんだよ。ほら。」
スマホを見せる。
待ち受けに設定してあるのは私の水槽。
「おー!すごいじゃん!きれー!魚は?ネオンテトラかな?」
彩がすごい褒めてくれる。
と言うか、この写真でよくネオンテトラって分かったなぁ。
「よくネオンテトラって分かったね。」
「だって、青と赤の魚と言ったらネオンテトラでしょ。カーディナルは少し高いから買わないだろうし。」
さすが趣味人間の彩。
下手したら私よりも知識があるのかもしれない。
「よくご存知で…。店長さんのオススメでね。魚はネオンテトラ。水草はアヌビアスナナってやつと、パールグラス、クリプトコリネの3つだけ。」
へぇー、凄いねぇ。と、言いながら、彩は私の水槽の写真に見入っている。
なんとなく嬉しい。
「で、出来上がった水槽をずーっと眺めてて寝不足って感じ?」
ニヤッと笑いながら、スマホを返してくる彩。
「半分正解。」
机に突っ伏して目を閉じる。
完全に寝不足だ。
「じゃあ次はどんな魚を入れようとか水草を買おうとかいろいろ探してたとか?」
「それはハズレー。」
んー、なんだろう。と呟いている。
これはさすがに経験者にしか分からないだろう。
「正解は、流れる水の音が気になってなかなか寝付けなかった。でした。」
あー、そっちかぁ。と彩は悔しそうに笑った。
土曜日は疲れていたからか、すんなり寝られたのに、昨日は音が気になって全然寝付けなかった。
チョロチョロという水音が1回気になると、もう意識してしまってダメだった。
「私も初めてテントで寝る時に、外の音が凄い気になって全然寝られなかったなぁ。まぁ、すぐに慣れるよ。」
慣れるのかなぁ。
シーンとした部屋に響くチョロチョロと流れる水の音。
癒されるかと思いきや、逆に気になって寝られなくなるというね。
少しだけ悲しかった。
「ま、趣味を謳歌してるようで何よりだね。授業中に寝てたら起こしてあげるから、がんばれー。」
楽しげに笑う彩が恨めしい。
今日の授業は眠すぎて全然集中できなさそうだ。
◇◇◇◇
「今度私もお店行ってみようかなぁ。」
お昼休み、彩と一緒にお弁当中である。
結局、私は午前の授業はうたた寝をしてしまい、何をしていたのか全然覚えていない。
「お店って?」
「熱帯魚のお店だよー。なんだっけ、浅野観賞魚センター?」
え、色んな趣味に手を出している彩は熱帯魚にまで手を出すの?
そんなにお小遣いがあるのか……。羨ましい……。
「あぁ、見るだけだよー。さすがにそこまでお金は無いから。」
私のお小遣いはレジンの材料費に全部消えていってるよ。と悲しそうに話す。
「彩は放課後は部活?」
ちなみに私の今日のご飯はコンビニのおにぎり2つと豆乳だ。
昆布のおにぎりを頬張りながら問いかける。
「部活だねー。土曜は午後からだから、午前中に一緒に行かない?」
おっけーと答えつつ、スマホのスケジュール帳に予定を書き込む。
いきなりあのお店に入るのは勇気がいるだろうと思い、近くのコンビニで待ち合わせしてから一緒に向かうことにした。
「楽しみだねー!私もアクアリウムにハマっちゃうかなぁ。でもお金ないからなぁ…。」
「彩もアクアリウムやってくれたら色々相談できて楽しいかもなぁ。魚も水草も色んな種類がいたし、見るだけでも楽しいよ。」
まだしばらく先の予定だけど、楽しみができて嬉しい。この土日はまた忙しくなるかもなぁ。
ワクワクで目が覚めた私は、午後の授業はきちんと受けることができたのだった。
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