第7話…いざ、アクアリウムの世界へ
「よいしょっと…。」
勉強机の上に空の水槽を置く。水槽はお風呂場でしっかりと洗ってきた。
「さてさて、次はー?」
昨日熱帯魚店の店長さんに貰った説明書に目を通し、次の工程を確認する。
「底砂を洗う。またお風呂場かぁ。」
空のバケツを持ってお風呂場へ。
バケツに大磯砂を開けてお米を研ぐように洗う。
「よし、きれいになったかな。」
『濁った水が出てこなくなるまで水で流すこと。まぁ多少濁っててもフィルターで綺麗になるから神経質にならなくて平気だ。』
店長さんの言葉を思い出しながら作業を進める。
「おもっ……。」
お風呂場から、2階の自分の部屋まで、バケツを運ぶのが結構大変だ。
洗い終えた大磯砂を水槽に入れていく。
『とりあえず予算内に収めるために大磯砂にしておいた。そのうちソイルに手を出せばいい。底砂の厚さはだいたい2~3センチくらいあればいい。手前は薄く、奥は厚く、傾斜をつけてやると見栄えがよくなる。』
「手前は薄く…、奥は厚めに…。」
用意してもらった底砂を全て水槽に入れて、バランスを見ながら傾斜をつけてみる。
「うん、何となくいい感じかも!」
次は、石を洗う…か。
台所に行って流水で石の表面を洗う。風山石という石らしい。
「うーん…。こっちか?んー?」
うんうん唸りながら、水槽に石を配置していく。もっと大きい石が欲しいなぁ。
「まぁ、こんなもんかな…。」
とりあえずのレイアウトが完成した。
と言っても、石を置いただけだけど。
「次は、水を入れる…。店長さんがくれた水を入れて、足りない分は水道水か。」
『魚にとって水が一番大事だから、ここには気を使ってやらなきゃならない。住み心地の良い水にはバクテリアがいるんだが、水道水にはバクテリアはいない。だから新しく立ち上げた水槽は魚が住むのに適していないんだよ。今回は裏技だ。』
店長さんがくれたのはお店の水槽。それもポリタンク2つ分。
「うっ、重い…。これ持って階段は無理だ…。おとうさーん!ちょっと手伝ってー!」
「なにー?ん?千草の部屋にこれ持ってくの?」
「うん、私じゃ階段登るのキツいから。」
よっこいしょっと言ってポリタンクを軽々持ち上げるお父さん。
「これ水槽に入れていいの?」
「うん、あ!ちょっと待って!」
洗っておいた大磯砂が入っていた袋を水槽内に敷く。こうすると、水を入れた時にレイアウトが崩れないらしい。
「よっと!」
ポリタンクからドバーッと水が注がれる。
水槽内に敷いた袋が水を受け止めて、綺麗にならした砂や配置した石が崩れるのを防いでくれている。
「はぁ……。もうひとつか……。」
お父さんが疲れた感じで部屋から出ていった。
◇◇◇◇
「よいしょ。」
水道水を汲んだバケツの水を少しづつ水槽に注いでいく。
水道水には塩素が入っているらしく、これを取り除く為にカルキ抜き剤を入れなくてはいけないらしい。
これでようやく8割くらいだ。まぁ半分以上はお父さんがやってくれたんだけど。
「ちょっと崩れちゃってる…。直さないと。うー、冷たっ。」
水の中に手を突っ込んで、倒れてしまった石やえぐれた砂を直す。
「ヒーターとフィルターをセットして…。」
水温を一定に保つためのヒーターを正面から見えづらい場所に貼り付ける。
と言ってもスカスカだからどうしても見えてしまうのが少し悲しい。
上部フィルターというやつを説明書通りに組み立てて水槽の上に載せる。
「フィルターに水を注いでから……、スイッチオン!うわっ!」
ガガガガッと音が鳴る。
なんか間違えた!?と思ったが、直ぐに静かになり、どんどん水が循環していく。
「おぉ…。よかった。壊したかと思った……。」
ガラス蓋を載せてから、照明を載せる。
ヒーターと照明の電源を入れると…。
「うわぁ…。できたぁ。」
水は少し白く濁っているし、魚も水草も無い寂しい水槽だが、私の水槽が完成した。
照明はとても明るくて、水の中はキラキラと光って見える。
「すごいじゃん…。私にもできた!」
勉強机どころか、床まで水が跳ねてしまっているが、そんなことはお構い無しに、水槽を眺めてしまう。
何も居ない水槽なのに、水の流れを見ているだけで何だか楽しい。
「おねぇー!夕ご飯できるってー!」
いつの間にか夕ご飯の時間になってしまったようだ。
いつもはダラダラと休日を過ごしていたのに、何だかあっという間に一日が過ぎてしまった気がする。
「明日、またお店に行かなきゃ。」
店長さんに、設置出来たらおいでと言われている。魚と水草をどうするか考えておこうかな。
「おねぇー!ご・は・んー!!」
何となく名残惜しいけど行かなくては。
まだ水は白く濁っているが、そのうち落ち着くのだろうか。じっくりと観察していたいという気持ちを抑え込み、照明をオフにする。
何だかワクワクが止まらない。
ご飯食べたら、ネットで初心者向けの水草とお魚を調べてよう。
趣味があるってこんなに楽しいんだなぁ。
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