熱しやすい私と、水っぽい彼女について。

木元宗

前置きですかね。


 ドラムとベースは夫婦めおと。あるいは、ドラムとベースはリズム隊。バンドやってると、度々耳にする言葉です。


 リズムキープを担当するこの二つの楽器の奏者とは、兎に角息が合わないとなりません。まあギターでも何でも、誰か一人でも欠けてしまえば成り立たないのがバンドであり、その土台と言うか屋台骨を担うのが、ドラマーとベーシストって意味でして、リズム隊って括ったり、夫婦と例えられるぐらい、互いの演奏が噛み合う事の重要性を例えられます。

 この二人が合わないと、ギターの人は乗れませんからね。つまり演奏が出来ないという意味で、まずはドラムとベースがしっかりしてから、という話なのです……が。まあ、何事にも例外というものはありまして、リズムキープはベースに任せて、どうでもいいパフォーマンス優先でリズムキープを無視する目立ちたがり屋ドラマーとか、同じベーシストとしてこれは本当に許せないんですけれど、ベースを低音が出るギター・・・と勘違いして(もう殴りたい勢いでムカつきますが)、こっちもパフォーマンスに走る、分かってない変人ベーシストがいたりもしますから、一概には言えませんが。確かに、曲になってりゃいいんで、どうなろうといいっちゃいいんですけどね。


 バンドマンがだらしないって言われるのは、バンドの主役であるギターやボーカルがクズいからで、リズム隊の人は案外しっかりしてて、ちゃんと進学したり、就職するって人が多いのは、結構バンドマンあるあるなんです。選ぶ楽器やパートに、性格が出ていると言いますか。

 確かにギターとボーカルには、余り常識を求めない方がいいですね。あいつらはまあ世の持つ、「バンドマン」というイメージ通りな連中が多いです。女にいい加減、男にいい加減。規律は重んじなければあれやこれと……。まあ、時間には、まずいい加減だと思っておいた方がいいです。語り手が一般の方から生真面目と表される程堅物な私ですから、多少は言い過ぎな部分は、多分にあるとは思いますが。

 バンドマンって時点で全員ダメ人間集団と括られるのは、ほぼあいつらの所為ですからね全く……。偏見ですよもう。目立ちたがり屋か、カッコつけか、モテたくてやってるような奴らが一番したがるパートですから、いい加減な奴がやってる事多いんですね。

 何かそんな奴が、たまーにリズム隊やってるのを見るとですね、汚えリズム刻んでんじゃねえって。正確なリズム感覚と、前には出ないが堅実な仕事をするのがリズム隊の味ってもんでしょうに。ガキはぴろぴろギターでも弾いてな! と、そんなバンドマンでありながら、ギターが嫌いな私の話を、一つしようかなと。まあギタリストでも真面目な方は当然いますし、高校時代私が所属していたバンドのギタリスト達は、皆普通か、真面目だったんですけどね。ちゃんとやらないと生真面目で暑苦しい私が、音楽嘗めてんのかって、説教しに飛んできますから。


 それで、当時私が所属していた軽音部は、年に数回、近隣校の軽音部と集まって、対バンライブを行うイベントがあったんです。対バンっていうのは複数のバンドが共演するって意味で、まあ要は、演奏会って意味ですね。何か吹奏楽部みたいになっちゃいましたが。場所は参加校が順番に貸し出して、各視聴覚室を開放して行われていました。

 私はその時、春、でしたか……。冬、でしたか……。ブレザー着てたんでどっちかなんですけれど、その頃に行われた対バンに、参加していたんです。その時の対バンは、うちの高校じゃなくて他校が場所を貸し出してくれまして、休日に楽器背負って、電車に乗って、その移動中にバンドメンバー達と合流すると、よく知らない町に向かいました。

 同じ対バンに参加する、他校の軽音部員とも移動中に会いますから、おー久し振りーって、一緒に歩きながら話したり。セットリストどんなん? とか、そのイヤホン何聴いてんのとか、今波が来てるミュージシャンは誰で、どこが出した新曲がアツいとか。


 楽しいものです。同じ趣味を持つ人達が集まりますから。それにこうしたイベントには、各校でもそれなりの実力を持つバンドしか出られないので、モテたくてやり始めたはいいけれど、楽器の難しさに挫折して、だらだらだべってるだけとかの軟派野郎は排除されており、本当に音楽が好きな奴らで構成されたバンドしか、現れませんから。

 それなりの実力とは少なくとも、経験者が集う場で演奏しても、恥ずかしくない技術を持っているという意味を指しますから、各バンドには、相応の自負もあります。その学校の軽音部を代表して参加するようなものですから、他校、というか、同校であろうとよそのバンドには、負けたくないと。嘗められたくないんですね。

 だから皆、仲はいいんですけれど、ピリピリしています。いい緊張感があると言いますか、馴れ合いじゃないと一線を引いた雰囲気があって、私は好きでした。あがり症の後輩とか同期はいつも、ビビってましたけどね。始まる前までは皆馬鹿騒ぎとかしてるけれど、ライブ始まったら目の色変わるから、下手なプレイは見せられないって。

 私は同期の間でも、参加したライブやイベント本数がある方でしたから慣れちゃってて、文化祭とか、一般の方も来る野外ライブなど本当に大きな舞台じゃないと、そこまで緊張はしませんでした。


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