3.
その翌日、仲村くんが出発した日は、朝から雨が降っていた。
目が覚めたとき、部屋の中はうすぼんやりと暗くて、時間が死んでしまったようだった。窓の向こうで、雨の音が続いていた。
枕許の携帯を探り当てて、画面を点ける。表示された数字は、まるで現実味がなかった。
(十五時……四十三分……? なんだそれ……)
どうやら、アラームを掛け忘れたらしかった。ついでに充電器につないでおくのも失念していたせいで、バッテリーも残り少ない。
そのまま、いつもの癖で携帯をいじりはじめた。
(もう四限始まってるんだよなあ……いや、始まってるどころの時間じゃないな……)
画面の向こうは不思議なくらいいつもどおりで、誰かが笑ったり苛立ったり失敗したり騒がしくて――唐突に、画面を切った。瞼を閉じる。
さらさらと部屋に雨音が降る。今年の梅雨が、始まっていた。
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