2.

 同郷のよしみ。私と仲村くんの間柄を表す言葉を選ぶとしたら、それ以外にないだろう。必修の語学のクラスが同じで、お互い見知らぬ地まではるばる出てきた者どうし、まあよろしくやろうというのが、最初に彼とした会話だった。彼以外に同じ県出身の知り合いはいなかったから、ささやかな親しみはあったけれど、ただそれだけ。気が向けばなんとなく言葉を交わしたりもしたが、元来私が外向的な性分ではないので、被る授業もない今はまるで接点がなかった。

 その程度の知り合いに過ぎない私に、まれのすけ、の世話を頼んだのは、ただ、私が彼同様ひとりで大学のそばに住んでいるからという、それだけの理由だったのだと思う。大きな鉢植えを運搬する手間を考えれば、それは当然の判断だった。

 次の日仲村くんは、薄曇りの空の下、私の住むアパートの前まで、えっちらおっちらパキラの鉢を運んできた。道案内をする私は、一応仲村くんの鞄を持ってやって、その隣をぷらぷら歩いていた。ずいぶんと軽い鞄だった。

「で、出発はいつなの」

「明日」

 想像以上にさしせまった答えだった。私はどう返事をしたものかわからず、まじまじと仲村くんの横顔を見つめた。額にうっすら、汗が滲んでいた。

 色白でひょろっとした仲村くんは、見れば見るほど、ちっとも旅に向いている気がしなかった。一日目の夜にはもう、筋肉痛で音を上げていそうだ。

「まあ、気をつけて」

「うん」

「予定は、全然立ててないの?」

「そう。とりあえず西へ、ってだけ」

「帰る時期も?」

 仲村くんは視線だけで私を見下ろして、ふふっと笑った。

「大丈夫、ちゃんといつか帰ってくるつもりはあるから。稀之介を押しつけたままにはしないよ」

「……そうよ、ちゃんと引き取りに来てもらわないと困りますからね」

 わざとらしくねめつける。それから、くちびるから滑り落ちた空虚な言葉を、こっそりつま先で蹴とばした。

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