第4話 後悔だらけの始まり

次の日、僕は指定されたカラオケ店の前で待っていた。


学校から近いこともあって、休日でも同じ高校の生徒を見かけた。


「おーい、陽介おまたせ!待った~?」

「今すぐその気持ち悪いしゃべり方をやめないと、ここの料金全額払ってもらうぞ。和巳」

「お茶目なのに」


急いで来たのか、和巳は薄らと汗をかいていた。


「早かったんだな。それとも張り切って眠れなかったのか?」

「いや、場所で迷うとまずいから少し早く家を出たんだ。でも、思った以上にすぐ場所が分かったから早く着きすぎた」


自分で言うのもなんだが、僕の方向音痴はひどい。

最終的には勝手にその場所はなくなったと結論付けて帰ってしまうこともある。


しばらくすると、なでしこがやってきた。少し短めのパンツに白色のシャツというボーイッシュのようなコーディネートだった。それを見て、和己はいきなり僕の腕を引いて耳元で話し始めた。


「おい、陽介!誰だあの可愛い子!もしかして今日誘った子か?」

「そうだけど、何か問題あった?」

「問題とかの前にそういうことは事前に知らせてくれよ。心の準備とかあるし、第一学校の女子に見つかったら、休み明けにどんな目に合うか・・・」

「そこは大丈夫だと思うよ。あいつ、好きな人いるらしいし、ここに来る途中、いつも和己を追っかけてる子たちが駅の方に向かってるのを見かけたから」

「それならひとまず安心か・・・」


和己とひそひそ話をしている中、なでしこは静かに待っていた。


「陽介、話終わった?それとも2人はそういう中ってことは・・・」

「誤解を生むようなことは言わないように。こっちはメールでも言った高校の同級生で火野 和己。和己、この子は幼馴染で隣の女子高に通ってる堤 なでしこ。」


初対面の2人の仲を取り持つように僕は互いのことを紹介した。


「はじめまして!火野くん、気軽になでしこでいいよ」

「こんちは。俺のことはカズミンでいいよ」

「はじめて聞いたぞ?カズミンなんて。どうしたの?」

「別にいいだろ。今度から陽介もカズミンって呼んでくれていいぜ」


和己も緊張しているのだろうか?とにかく自己紹介を終えて一段落した。


「これで今日のメンバーは全員かな?もう店の中に入る?」

「いや、もう1人呼んでるんだ。俺も陽介を驚かせようと思って、言ってなかったけど、その子も女の子なんだ。先に俺の方が驚かされたけど・・・」

「そうなんだ。てっきり追っかけの子たちにばれないように男子誘ってるのかと思ったよ」


そうこうしている内にワンピース姿の女の子がこちらに向かって歩いてきた。彼女がその女の子だろか?


「カズくん、お待たせ。お二人もはじめまして」

「さつき、大丈夫。時間通りだよ。2人とも紹介するよ。俺の幼馴染の望月 さつき。さつき、こちらはなでしこさんと高校の同級生の櫻井 陽介」


和己が紹介してくれている中、僕は和己の声がほとんど頭に入ってこなかった。彼女の顔を見た瞬間、僕はただ懐かしさと何とも言えない感情に駆られて、時間が止まったような感覚に陥った。


これが僕とさつきさんとの最初の再会だった。今思えば、僕はこの日カラオケに行ってはいけなかったのだ。もし行かなければ僕らはあんな結末を迎えることなく、今でも赤の他人のままでいられたかもしれなかったんだから。

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