第38話 危険な蜜の味 前編
月曜になりインソンが学園の自分のクラスに行くと既に龍護と友姫は来ていた。
そこへインソンが近付いて行く。
「龍護君、ちょっと」
「?インソン?」
手招きされて着いて行く。
それに気付いた友姫も一緒に行こうとしたがインソンにそこにいてと言われ、2人を待つ事にした。
◇◆◇◆◇◆
インソンは学園でも人通りのかなり少ない、屋上に続く階段に龍護を連れて来た。
「で、話ってのは?」
「七天龍の遊戯についてだよ」
”七天龍の遊戯”という単語に龍護は目の色を変える。
「何か分かったのか?」
「まぁ少しはね。まず、【傲慢の龍】は2人を殺し合わせるつもりみたい」
「俺と友姫を?…正直言うと俺と友姫が殺し合う場面はあまり想像出来ないけど…」
「私もだけどね」
「というかどうやってそんなの知ったんだよ?」
「それは秘密♪」
まぁだよな…と龍護は溜息を付く。
だがインソンは再び口を開く。
「提案なんだけど、私を味方に置くってのはどう?」
「はぁ?」
「いやーだって向こうはどうやって来るか分からないしそれに大勢で来るかもしれないよ?なら少しは龍護君の方も人を増やした方がいいんじゃない?」
「そりゃあ…まぁ…そうだろうけど…」
確かにインソンの言う事も確かだ。
相手がもし複数でこちらを襲いに来るのであれば遊戯関係者を味方に置いた方が有利となる。
だがそれは龍護本人と友姫の首元に刃物を近付けた状態で生活するという危険な行為でもある。
悶々とする中、インソンは再び提案した。
「言っとくけど私は龍護に興味は無いよ?あるのは友姫ちゃんだけ。手を貸すのも友姫の為ってだけ」
「そう言って最後は倒して生き残るって算段じゃねぇのか?」
「まぁ確かにそう思われるのも頷ける。けど流石に恋人の前で脱落させる気は無いけどね。そんなの私のイメージダウンにもなるし」
いまいちインソンの考えが見えなくて警戒するが先程の情報もある為、迂闊に断れば次は己の命も危ない。
仕方ないか…とインソンを友姫の家に連れて行く事にした。
「そういえばさぁ」
「ん?」
「龍護君と友姫ちゃんっていつから付き合ってるの?」
「1年の夏休みからだよ。その時に友姫んとこの旅行に誘われたんだ。で友姫が俺に告ったんだよ」
「あ、龍護君からじゃないんだ?」
「あー…まぁ、はい…」
「ヘタレだなぁ…」
ほっとけ、と悪態を付きながら教室に戻る2人。
すると自分達のクラスがある3階の自動販売機で友姫と会った。
「あ、友姫ちゃーん!」
インソンは友姫を見つけるや否や、友姫に飛び付いた。
「危なっ!?」
「えへへごめんごめん♪」
呆れた奴だ…と龍護はインソンを見て思いながらクラスに戻っていく2人を歩いて追い掛けた。
◇◆◇◆◇◆
「え?インソンちゃんが私の家に来るの?」
「おう…あれ?友姫ってインソンがどんな奴か本人から聞いた?」
「?ただの留学生でしょ?」
帰りの支度の途中、龍護からインソンが家に来る事を聞いた友姫。
あちゃー…と心の中で思いながら龍護はインソンが七天龍の遊戯の参加者である事を隠す。
恐らくその方が友姫の今の状態から考えても安全だと思えるからだ。
そこにインソンが近付いて来る。
「あ、友姫ちゃん、今日友姫ちゃんの家に来るの聞いた?」
「うん、別に大丈夫だけど…」
「よしっ!友姫ちゃんの家に着いたら友姫ちゃんのアルバmいてっ!?」
インソンの邪な考えに対して頭を軽くコツンと小突く龍護。
「お前って本当に友姫以外興味無いのか…てかそんなに会ってないのにどうしてそこまで友姫にこだわるんだよ?」
「美少女ですから」
「…そこは否定しない」
2人して何言ってんの?と友姫に突っ込まれながらも3人は友姫の家に帰っていった。
◆◇◆◇◆◇
「おー!ここが友姫ちゃんの成分が詰まったいゴフッ!?」
「…段々お前がただのエロ親父にしか見えなくなってきてるんだが…?」
言葉と行動による鋭いツッコミがインソンを襲う。
だが懲りてないインソンはすぐに友姫の部屋へと向かっていく。
「はぁ…自由な奴だな…」
1人ボヤいていると玄関の扉が開いた。
現れたのは雪菜だ。
「あ、お2人さん、帰ってきてたんですね?夕食作り…あれ?お客様来てます?」
「あぁ、まぁ…中国からの留学生が…」
「中国からの留学生…」
”中国からの留学生”という言葉に反応した雪菜。
その理由を知っている龍護はやはり…と何かを確信した。
「俺と友姫はその留学生の相手してるんで雪菜さんは夕食お願いします」
「分かりました」
とにかくこの人から離れようとした龍護は友姫を手を取ってインソンの向かった友姫の部屋へと歩いた。
◇◆◇◆◇◆
友姫の部屋に着いた3人はオンライン型の銃撃戦ゲームをしている。
「友姫、254度の方向から撃たれてる」
「うっわこれ囲まれてんじゃん」
「ギャア撃たれたぁ!」
結局ランキングでは5位に終わった。
「相手絶対物資の中にあった武器持ってたよ」
「だよなぁ…あの距離からの狙撃は上手すぎる…」
「感度変えた方がいいのかなぁ」
その後3戦程やって最終的に2位で終わっていた。
暫くして雪菜がやって来た。
「皆さん、夕食が出来ましたよ。そちらの留学生の方も御一緒にどうぞ」
「え?いいの?」
3人は雪菜に促されてリビングに向かう。
先に席に座っていてほしいと雪菜に言われ、それぞれが適当に椅子に座っていく。
「お口に合うか分かりませんが…」
雪菜が持ってきたのはカレーだった。
「お!カレーだ!」
いただきまーす!とインソンはすぐにスプーンに手を伸ばし、カレーを掬おうとしたが、その手が不意に止まった。
「?どうした?」
突然動作が止まったインソンを不思議に思った龍護。
聞かれても固まるインソンだが途端に再びスプーンを動かした。
「ううん、なんでもない」
「?」
インソンの不可解な行動に違和感を覚えながらも食べ進めていく。
◇◆◇◆◇◆
「あー、食べた食べた!ごちそーさまー!」
「お口に合っていたようで良かったです。あ、デザートにプリンがありますので待ってて下さいね」
雪菜が食べ終えた食器を纏めてキッチンに戻る。
すると龍護も立ち上がった。
「?リューゴ?」
「ん?あぁ、トイレ」
「おーす、いっといれー」
何年前のネタだよ。とツッコミを入れつつもトイレに向かった。
◇◆◇◆◇◆
龍護がトイレを終えて戻っている時だった。
「ん?」
キッチンから何か話し声が聞こえる。
『…はい、一応………ので…す』
途切れ途切れだが誰か…恐らく自分の上司に連絡をしてるのだろう。
…まぁその社長は既に亡くなっているが…
話し声が止み、雪菜がキッチンから出てくる。
「うおっと」
「あ、龍護さん、すみません」
ぶつかりそうな所で龍護が一歩引いた。
「電話、大丈夫でした?」
「え?あぁ、はい…」
2人の間に流れる沈黙。
それを龍護は無理矢理ながら断ち切る。
「スヴェンさんの葬式…結局行けませんでしたね…雪菜さんはこれからどうするんですか?」
「私ですか?私は暫くの間は実家に戻って手伝いをするしかないですね…」
「あぁ…実家に戻るんですか」
「一応自営業ですから…けど立ち直ったらまた就職も考えているんで」
大丈夫です。と告げて龍護と共に居間に行った。
◇◆◇◆◇◆
デザートであるプリンを食べ終えた3人。
するとインソンが立ち上がる。
「さて…とそろそろ帰るかな」
「あれ?帰るのか?もう19時越えてるぞ?」
龍護の視線の先には19時を示す振り子時計。
だがインソンは首を横に振る。
「私も帰ってやらなきゃいけない事があるからねぇ…ま、期待してて」
”期待してて”
その言葉でインソンが七天龍の遊戯の情報収集をすると察した龍護は家まで送ると行って立ち上がる。
「あれ?リューゴも行くの?」
「あぁ、さすがに1人で歩かせるのは危ないだろ(それに積もる話もあるかもしれないからな…)」
両親を亡くし、少しばかり情緒不安定になっている友姫に今は七天龍の遊戯の話はあまりしたくないのか「俺が送るから友姫は先に風呂とか色々済ませてな」と半ば強引に友姫を置いていく。
◇◆◇◆◇◆
ラジネス家の庭を2人が歩いている。
「せっかく友姫ちゃんと2人で帰ろうと思ったのに~!」
「そう言うなって…流石にまだ傷が癒えてないんだ。そんな中遊戯の話をしたらまた危なくなるだけだって」
「…そうかもしんないけどぉ…」
チェ~…とインソンが残念がる。
それ程友姫といたかったのかと敵ながら少し呆れる龍護。
「また情報収集でもするのか?」
「まぁね、愛しの友姫ちゃんの為なら火の中水の中…あっ」
グッ!とサムズアップしようとしたインソンだったが何かを思い付いたのかスマホを操作する。
「?何してんだ?」
「ひみつー!」
「?」
未だにインソンの行動が読めない龍護。
インソンはそれを構わずに突然龍護と自身の唇を合わせた
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。