第12話見えざる敵

「龍護君の姉の彼氏が龍の所持者!?」

「えぇ、はい・・・」


龍護は今、友姫の家にいる。

昨日の家での事をスヴェンと友姫に話した。

スヴェンと友姫はなんとも言えない顔になってしまう。


「まさか・・・君の姉の彼氏が選ばれるとは・・・」

「なんというか・・・最悪だね・・・」


龍護もどうしようかと悩んでいた。

恐らく・・・いや確実に彼氏を殺してしまえば姉に掛かる精神的ショックは大きいだろう。


「お父さん、どうする?」

「取り敢えず龍護君。その紋章は何色だった?」

「えっと・・・確か・・・赤色でした」

「赤か・・・なら【憤怒の龍】かな」


スヴェンはノートパソコンのファイルを見つけ、2人に【憤怒の龍】の紋章を見せた。

その紋章は龍護と見たのと全く同じデザインと色。

改めてルシス・イーラが【憤怒の龍】の所持者である事が判明する。


「・・・そういえば1つ疑問があるんスけど」

「なんだい?」

「なんで急にその・・・神はこういった残酷な遊戯を始めたんですか?」


龍護の考える事も最もだ。

今まで祠に祀られていたのにも関わらずその龍の力を無権者有権者関係なく埋め込んで殺し合いをさせているのだ。

疑問にも思うだろう。


「私もその辺に関しては疑問なんだが、ある仮説を立ててみた」

「仮説?」


スヴェンが言うには7頭の龍の伝説は昔にあった事であり、鮮明に覚えているのもほぼいない。

それに世界は広い為、探すのも骨が折れる。

そこで神は七天龍の遊戯と称して龍の力を見せ付ける為にこのような殺し合いをさせたのではないか?と推測を立てていた。


「ちょっとその仮説、無理ありません?神って基本世界には無関心で不干渉な感じがするんですよ。なのになんで急にそうやって干渉してきたのかが疑問になります」

「まぁ、私もそう思ったんだがそれ以外ではあまり思い付かなかった」


2人が思考を巡らせてるところに友姫が手を挙げる。


「友姫も仮説とか思い付いたのか?」

「う~ん仮説かどうかは分からないけど・・・神様が交代したんじゃないかなって!」

「交代?」


友姫の立てた仮説では神にもその世界を見ているが数百年に1回、交換の時期を付けてお互いに世界の傍観を楽しんでいるのでは?という仮説だった。


「殺し合わせてまで?」

「新しい神が好戦的だったんだよ!・・・多分」


そんな頻繁に交換なんかするか?と思ってしまった龍護。

今日の情報収集はここまでだな。とスヴェンが締め括り、解散となった。



◇◆◇◆◇◆



現在龍護は七天龍の遊戯を理由に友姫の家に泊まっている。

龍護の部屋は友姫の隣に位置していた。

自分の部屋に戻り、横になって天井を眺める。


(もしもスヴェンさんの仮説が事実であれば殺し合いではなく、世界各国で祭りを行わせる筈だ・・・そして友姫の仮説が事実なら恐らく今後もこういった殺し合いは続く・・・でももし・・・)


龍護は自分でもう1つの仮説を立てていた。



もしも神が実際にいたとして龍の力が神に近い何かにその七天龍の力を乗っ取られていたら────



つまりはその外部の何かがその力達を奪って好き放題してるのでは?という仮説。

だがイマイチ信憑性に欠ける。

なにせ龍護もあまり神は信じていなかったからだ。

転生した事で信じる様にはなったが・・・


「てかこれを学園のアイツらに言ったら絶対電波男として見られるな・・・」


ハァ・・・とため息をして眠りについた。



◇◆◇◆◇◆



翌日。

龍護と友姫は一緒に登校していた。

揃って教室に入る。


「お!2人とも、解決したのか?」


2人を見て早々に野武が駆け寄ってくる。


「まぁ、まだ微妙な点はあるけどな」

「ったく・・・人騒がせなのよ」


後ろから声を掛けられて振り向くと白と雫が立っていた。


「友姫も面倒な彼氏を貰ったね~」

「ね~」


白の振りに友姫がノリノリで答える。


「いや・・・お前は共感すんなよ・・・」


チャイムが鳴り、教師が入ってきて名簿を教卓に置く。

生徒達も自分の席に着いた。

内容もいつも通りで『怪我の無いように』や『遊びにかまけて』等の言葉を並べてホームルームは終えることとなった。



◇◆◇◆◇◆



授業が始まり、黒板に書かれた文字をノートに書いていく。

その間でも龍護の頭の中は昨日の話でいっぱいだった。

そしてこの七天龍の遊戯についてもう1つ疑問が浮かび上がる。


(紋章って・・・どう集めるんだ?)


今、龍護が気にしているのはどう生き残るのではなく、紋章の集め方。


最初は”相手の紋章を皮ごと削いで集める”という考えだったが、それで集めたことになるのか?という考えと龍護的にその場を想像してゾッと寒気がし、人道的にどうなのか?とのことでこの考えは却下になった。


次に考えたのはICカードのスキャンように、倒した者が相手の紋章に自分の紋章を近付けて相手の紋章を抜き取るという方法。

でもこの場合、闘う前に合わせたらどちらかにランダムに紋章が渡ってしまい、殺し合いにならないのではないか?という考えから却下。


次に考えた・・・というよりも倒したら自動的に倒した側に紋章が映るのではないか?という考え。

これに関してなら少しは信憑性が上がるが、もし相手が麻酔等で対戦者を眠らせてもその対象になるんじゃないか?という考えから保留。


最後に考えたのが”特定の呪文を言って紋章を取り込む”という方法。

これには龍護も自分で想像して今までの4つの方法でも1番信憑性が高いと思っていた・・・・・・のだが・・・


(呪文って・・・何なんだ?)


龍護はその呪文を知らない。

恐らくスヴェン辺りが知ってるかな?とここで考えるのを止めて授業に取り組もうとしたが既に後半に差し掛かり、授業が耳に入っていなかった龍護が分からなくなったのは言うまでもない・・・



◇◆◇◆◇◆



午前の授業が終わり、昼休みになった。

因みに授業のノートは友姫に借りて写させてもらった。


「何してんだか・・・」

「言うな・・・」


今日はいつものメンバー(白、雫、友姫、龍護、野武の5人)で食堂に来ている。

全員が全員違ってるのを食べていた。

友姫は母が作った弁当を食べている。

龍護にも作ろうか?と沙弥は言ったが龍護は自分で買って食べると言って断っていた。

白が、あっ!と何かを思い出す。


「そういえば魔法の授業の教師、変わるらしいよ?」

「ふーん、誰なんだろう」


龍護はそう言いつつも興味なさげにカレーを頬張る。


「佐野先生」

「ウグッ!?」


白は何気なく告げ、龍護は噴き出しそうになり噎せた。

横で友姫が大丈夫?と龍護の背中を摩る。


「・・・マジ?」

「アンタねぇ・・・この学園の在校生向けのサイト見なさいよ・・・」


白が頬杖を付きながら呆れた目で龍護を見る。

龍護が早速在校生向けサイトの2年生のページを見ると時間割と担当教師が表示されていた。

自分のクラスのページを閲覧すると


・一時限目

現代文

寺田明


・二時限目

魔法学Ⅱ

吉野楓


・三時限目

化学Ⅱ

南雲祐


・四時限目

世界史

本田秀介


・五時限目

魔法実習

佐野裕樹


白の言った通り、五時限目の魔法実習の担当は佐野裕樹・・・龍護にとって苦手な教師だった。


「うわぁ・・・」


龍護は頭を抱える。


「いや・・・そこまで・・・?」

「だってあの人に去年、魔法科に編入させられそうになったんだぞ?」

「去年・・・あ~、佐野先生に呼ばれてたのって編入の事だったんだ」


まぁな・・・と龍護は皿にあるカレーを食べ切って水を一気に流し込む。

皆食べ終わったようで食器を返し、着替えを取りに一旦教室に帰っていく。

体操着の入った袋を持って更衣室に向かった。



◇◆◇◆◇◆



「にしてもさ」

「?」


更衣室で着替えをしていたら野武が龍護に話し掛けてくる。


「龍護って度胸あるよな。俺がもしSランクで佐野先生から編入の事言われたらすぐに行ってたし」

「・・・Sランクって時点で上級生から嫉妬の目ぇ付けられるぞ?」

「・・・それは勘弁願いてぇな・・・」


2人は着替え終え、外に出る。

今日は曇でどことなく涼しい感じがする。

授業開始のチャイムが鳴り、生徒達が集合した。


「1学期からこちらのクラスの魔法実習を担当する佐野裕樹です。宜しくお願いします」


佐野が一礼するとその後に続いて生徒達が一礼する。


「では初めに体操をしてから本日はランニングをしましょう。では広がって体操を始めて下さい」


佐野の指示で生徒の代表が2人、前に出て生徒達達は等間隔に広がり、体操が始まった。

体操を終えて元の位置に集まり、校門に向かう。

佐野が笛を鳴らして生徒達が走り出した。


「はぁ・・・やっぱり最初はランニングか・・・」

「そりゃそうだろ」


2人は走りながらも話している為、まだ余裕のようだ。


「よくいるよな。『一緒に走ろう』って言いつつも最後の方でスピード上げて先にゴールする奴」

「あーいるいる」


そんな2人の横を白、雫、友姫が通り過ぎた。


「おっ先ー!」

「リューゴー!ガンバー!」

「・・・」


白はからかいながら、雫は無言で手を振って、友姫は龍護を応援して2人との距離を離していく。


「あいつら・・・元気いいな・・・って!?」


野武は龍護に話し掛けたつもりで横を見ると既に龍護はいなかった。

試しに前を見ると野武の5m程先にいた。


「なんで急にスピード上げるかな!?」


そう言いつつも自分もスピードを上げる野武。

何だかんだ言ってお互いに負けず嫌いなのであった。



◇◆◇◆◇◆



「にしてもいいの?」

「何が?」


白の横で走っていた友姫が話し掛ける。

3人のペースは程々に早いが白にとっては少しペースは遅めくらいだ。


「白って陸上の長距離走の選手でしょ?なら私達に合わせなくてもいいんだけど」


友姫の発言にあぁ~その事か、と納得する白。

それもそうだろう。

友姫も言った通り、白は陸上部の長距離走選手。

2人に合わせてしまうとかなりスピードも落ちてしまうからだ。


「いつも結構な速さで長距離走は走ってるからね~たまにはゆっくり走りたいよ」

「そう?ならいいけど」


その横を龍護と野武が通り過ぎる。


「お先に~!」


そのまま走り去っていく龍護。

そんな龍護を見て友姫は子どもだね~と苦笑した。


「・・・?白?」


白が無言な事に気付き、どうしたのか?と顔色を伺う。

後ろから肩を軽く叩かれて振り向くと雫が人差し指を立てて口に当てている。

友姫は少しペースを落とし、雫の横に着いた。


「どうしたの?」

「白がマジになる」


え?と疑問に思い、前方を見ると黒いオーラを出した白がいた。


「へぇ~・・・?陸上部に喧嘩売るかぁ~?そうかそうか・・・」


もしここで擬音を付けるならゴゴゴゴゴゴ・・・という擬音が合ってるだろう。


「その喧嘩、買ってやるわよ!」


友姫と雫に先に行く!と張り切って言い、スピードを上げた。


「速っ!?」


白が本気で走った数秒後には既に友姫と雫との距離は10m以上も離れていた。



◇◆◇◆◇◆



龍護と野武が速いペースを維持して走っている。


「多分向こう本気出すぞ?」

「へっ、いいって。どうせ俺達のスピードには────」


ビュン!!!!と龍護と野武の横を白が横切る。

さすがの2人も驚愕した。


「うわっ・・・はえぇ~・・・」

「・・・」


素直に感心している野武の横で龍護は闘争心を燃やしていた。


「野武、お前はこのペースでいい」

「え?どうし────」


野武が聞く前に龍護も速度を上げた。

後ろから友姫と雫が追い付いて野武の横で並走する。


「龍護ってたまに負けず嫌いだよな・・・」

「うん・・・」

「大人気ない」


2人で競い合っているのを他所にその勝負を眺めている3人であった。



◇◆◇◆◇◆



「うおおおおおぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!」

「ぬうううううぅぅぅぅうううう!!!!!!!!」


只今、両者共に全力疾走中。


「ハッ!所詮それが限界だろうな!長距離走選手さんよぉ!」

「限界ィ!?巫山戯た事言うのね!?まだ4割しか本気出してないわよ!!!!」


そう言いながら再びスピードを上げる白。


「ダッチーこそバテて腰砕けにならないようにね!どうせ休みの日はネットで愚痴って引き籠ってんでしょ!」


白に挑発され、カチンときた龍護。

魔法で身体を強化して白に追い付く。


「いや~!!!!俺もまだまだ全力出してないんだよね~!!!!余りにも遅くて本気出すの忘れてたわ!!!!」


白もカチンときて、再びペースを上げる。


「あらごめんなさーい?さっき4割って言ったけど私、これで4割だったわ!!!!」


お互いに挑発してかなりの速度になっている。


「んなろおおおぉぉぉぉぉぉおおおお!!!!!!!!」

「負けるかああぁぁぁぁぁぁああああ!!!!!!!!」


まぁ、結果は引き分けだったが・・・

当然全力疾走で全長870mもある学校周りを6周もする訳で走りきった後には・・・


「ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・ぜぇ・・・」

「はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・はぁ・・・」


お互いに一歩も歩けずに地面に横になっていた。

3人も漸くゴールして2人の様子を見る。


「おーい?生きてるー?」

「ご・・・めん・・・・・・今・・・話し・・・・・・かけられ・・・・・・ても・・・・・・反応・・・・・・・・・出来ない・・・・・・」

「お・・・・・・・・・俺も・・・・・・・・・てか・・・・・・なんで身体強化・・・・・・したのに・・・・・・引き分け・・・なんだよ・・・・・・・・・」

「はぁ!?何それ!?ダッチー魔法使ったの!?ドーピングじゃん!!!!」

「えっ!?そうなの!?」

「当然でしょ!!!!陸上競技に関しては全競技で魔法使用を禁止してるし、念の為に魔法が使えなくなる腕輪をして出てんだから!」


龍護が負けたくないという理由で魔法を使った事に友姫と雫、白、そして野武もが引いている。


「ダッチー」

「・・・はい」


龍護は黙って正座する。


「何か言い残す事はある?」

「そもそも陸上の長距離走選手が素人相手に挑発すること自体が────」


全てを言い切る前に龍護は宙を舞った。



◇◆◇◆◇◆



授業を終えて帰り支度をしている。

龍護は顎がまだ痛むのか時折摩っていた。


「じゃ、私部活だからじゃーねー」

「また明日~」


友姫がヒラヒラと手を振って白を見送る。

その後に龍護の元に行って帰り支度をし終わるのを待っていた。

だが当の本人はひっきりなしに顎を摩っている。

白にアッパーを喰らい、未だに痛むのだ。


「いつつ・・・」

「自業自得でしょ」

「デスヨネ~・・・」


ハァ・・・とため息が漏れてしまう。

帰り支度を終えて玄関へと2人で向かう。

靴を履き替えて外に出た。


「そういえばあの後から進展あった?」


龍護の問い掛けに友姫は無言で首を横に振る。

だよなぁ・・・と龍護は空を眺める。


「龍護のお姉さんは?」

「姉貴?今卒業論文書いてて大学に寝泊まり」


そういえば姉の彼氏を見てから疎遠になってるな・・・と今更ながら気付く。

だが近付こうとは思えなかった。

姉の彼氏が七天龍の遊戯の参加者であるからだ。

迂闊に攻めて姉を人質に取られればこっちが不利になる。

まぁ、彼氏が彼女を人質に取るとは思えないが・・・

道を歩く中、突然龍護は立ち止まる。


「?龍護?」


龍護は突然歩いた道を戻り、走り出した。


「ちょっ!?どうしたの!?」


友姫が声を掛けながら追い掛けるが龍護は無視して1つの曲がり角で立ち止まる。

その曲がり角の道は薄暗く道幅も車は通れない程狭い。

そして何より誰もいなかった。


(・・・気の所為か・・・?)


先程から龍護は尾行されていた感覚がした。

それはまるで2人の居場所を特定する為に後ろを追っているように思えた。

龍護は内心震えながらもゆっくりと曲がり角に入る。

大丈夫だ・・・落ち着け・・・そう言い聞かせながら一歩・・・また一歩と歩を進める。

向こうにT字路が見える。

龍護がT字路に入ろうとした時だった。


ドンッ!!!!


誰かとぶつかり、龍護は尻餅を付いてしまう。


「いってぇ・・・」

「す・・・すみません!お怪我はありませんか!?」


声からして女性。

龍護が顔を上げると短い黒髪に黒縁の眼鏡、整った顔付きで美形に入る。

スレンダーな身体つきで黒いスーツを身に纏っていた。

見た感じはどこぞのSPを連想させられる。

そんな女性が手を差し伸べるも、龍護は普通に立ち上がる。


「申し訳ありません、少し急いでまして・・・」

「いえ、こちらこそ・・・何か散らばって・・・」


龍護がチラッと地面を見る。

地面には何も落ちていなかった。


「無いようですね」

「申し訳ありません。それでは」


女性は鞄を持つと足早に去っていった。

それと同時に尾行されていた気配が消えている。

そこに友姫が来て何で急に走ったのかを軽く怒られてから再び帰路に戻った。

その様子を物陰で伺っていた謎の男性が現れる。

その男性も先程の女性と龍護がぶつかるのを見ていたようだ。


「ターゲットと男子生徒の非ターゲットを確認。その後女性が非ターゲットと接触を確認しました。以下がなさいますか?」

『────?────。』

「了解。尾行を続けます」


男性はインカムを用いて何者かに連絡を取っている。

指示を出され、再び男性は尾行を続けた。



◇◆◇◆◇◆



とある一室。

かなり豪勢な部屋に1人男性が受話器を持っていたが、ガチャ!と受話器を戻し通話を終了させる。

そこに赤ワインを抱えた使用人の女性が来て男性の空のワイングラスに注ぐ。


「【怠惰の龍】は彼氏持ちか・・・彼氏を葬れば【怠惰の龍】の逆鱗に触れて、向こうから来て公衆の面前で自滅させるのも手・・・か・・・」


男性はグラスを持ってワインを一口、口に含んだ。

少し熟考して再び受話器を取り、電話する。


『────?』

「私だ。MONYの社長である浅野弘治に連絡を取り、密会を開く。拒否をするのなら脅しておけ」

『────』


プッ!ツーツーツー・・・と通話が切れた音が響く。

その音を聞いて男性は受話器を戻し、グラスを置くと机に肘を立てて手を組み、その上に顎を乗せる。


「まぁ、今回はゆっくりと遊戯を楽しむのも一興だろう・・・」


男性の口角が不敵に上がり、灰色の両瞳の右目の瞳にだけ、黒い龍の紋章が浮かび上がる。


「必ず見つけ出してやろう・・・【強欲の龍】の所持者」


龍護は知らない。

彼の気付かない所で龍護の命は狙われているのだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る