第8話 雪原のガールフレンド

「スキー場だああぁぁぁああー!!!!」

「yeeeeees!!!!!!!!」


白と友姫が防寒具を着てはしゃいでいる。

今日は年越し前として友姫の父親が龍護達を誘ってお忍びの外出をしていた。

場所はスキー場で朝なのにも関わらず沢山の人が高い斜面から滑っていた。


「で・・・お前は大丈夫か?」

「・・・無理」


野武は寒いのが極端に苦手なのか沢山服を着過ぎてかなり丸い体型になってる。

それ程か・・・と龍護は呆れていた。


「リューゴ!ノブー!コッチハヤクー!hurryhurry!」


友姫が2人を急かす。

後ろからスヴェンがやって来た。


「私の事は気にせずに行ってくるといいよ」

「なら・・・」


今行くから待ってろー。と言って友姫達の元に向かった。



◇◆◇◆◇◆



スキー板やスティック、その他必要な物をレンタルして装着し、リフトに乗る。

龍護は友姫とリフトに乗っていた。


「ワァー!beautiful・・・」

「本当すげぇな・・・」


どこを見回しても綺麗な雪景色、そして下を見ればその雪の積もる斜面をスケボーやスキーで滑る者達が大勢いた。


「ソウイエバリューゴハスベレルノ?」

「一応スキーならな・・・友姫がスケボー出来ることに驚きだけど・・・」


友姫はスケボー、龍護はスキーでリフトに乗っている。

リフトが頂上に着いて2人は揃ってリフトを降りる。

既に白と雫は来ていた。


「じゃあ早速滑ろうか!」

「yes!!!!」



◇◆◇◆◇◆



シャーッ!!!!ザザーッ!!!!


友姫の乗ったスケボーがカーブをしながら雪の上を滑っていく。

一番下まで辿り着いてブレーキを掛けた。


「あー!また負けたー!」

「ヘッヘッヘー!マタ白二カッタデース!」


友姫!もう1回!と白が笑顔で友姫をリフトに誘う。

友姫もノリノリで白に着いていきリフトに乗っていた。


「あ~・・・雪原の美少女とはこの事か・・・」

「何悟ってんだお前は・・・」


再びリフトに乗った2人を野武は遠目で見ている。

その横で龍護が呆れた顔で野武を見る。

そんな野武を置いといて龍護は1人でリフトに乗って行った。



◇◆◇◆◇◆



リフトを降りて斜面を見下ろす。


(にしても・・・)


転生して色々あったなぁ・・・と斜面から空に視線を移す。

空は雲ひとつ無い真っ青な青空が広がる。

転生した時とは真逆の空だな・・・と思っていた。

前世では親孝行はおろか、大学を卒業すら出来ずにこの世界に来てしまった。

そしてこの世界でも見ず知らずの自分を明子と恵美は愛情深く育ててくれた。

その明子にすら恩返し出来なかった。



自分は身勝手だな・・・



ハァ・・・と溜息が漏れる。

これから先どうすればいいのだろう?

様々な不安が龍護を中を渦巻く。


ベシッ!!!!


「いって!?」


誰かに背中を叩かれる。

擦りながら振り向くとそこには友姫、白、雫、野武と全員が揃っていた。


「何ボーッと突っ立ってんのよ」

「リューゴ!meとショウブシマショー!」

「・・・」

「ほら早く滑ろうぜ?」


龍護を通り過ぎて滑っていく4人の表情を見えた。

4人は元気そうな笑顔だった。

そんな4人を見て気付かされる。



生きてる人が死んだ者に対して出来る事は1日1日を元気に過ごす事なんだ



死んだ者が見てるかどうかなんか分からない。

だがもしも見ていて、暗い顔で1日1日を過ごしていたら不安になるのではないか?

そして健康で生きている事を見れば安心するのではないか?

そんな答えが龍護の中に現れる。

フッ・・・と笑みが浮かび、龍護はスキーで滑り降り、4人を抜いた。


「おせーぞ下手っぴ共ー!」


そんな龍護も先程とは違ってスキーを楽しんでいる。


「逃がすかぁ!」

「リューゴハヤーイ!」

「・・・負けない」

「へっ・・・スノボー最強と呼ばれたお「変な事言ってないで行くよ!」ってセリフの途中で割り込むなー!」


4人も龍護に負けじと滑り降りる。

結果は僅差で友姫の優勝。

2位は龍護だった。

龍護にも負けた白はorzの姿勢になっている。


「いや・・・そこまで・・・」

「だって・・・龍護ごときに負けたんだもん・・・生きてく資格ないよ・・・」

「”ごとき”ってどういう意味だ”ごとき”って!!!!俺どんだけ下に見られてんだよ!?」

「はぁ!?ごときはごときでしょ!アンタは私よりも何もかもが下なんだから立場弁えなさいよ!」


んだとぉ!?とまた龍護と白の口喧嘩が始まる。

そんな2人を見て友姫は途端に笑いだした。


「え?どしたの友姫?」

「ダッテ・・・」


必死に話そうにもツボにハマったのかお腹を抑えている。


「ダッテイツモノpasteデタノシイカラ・・・フタリガquarrelシテルノニ、ソノヤリトリヲlookingデ、スッゴクタノシイッテオモエルカラ・・・」


再び友姫は笑い出す。

そんな友姫を見て4人も笑っていた。



◇◆◇◆◇◆



「あ゙~疲れた~・・・」


ホテルにチェックインして部屋に入った途端に龍護がベッドへ倒れ込む。

あの後白と龍護はアイスを賭けて三本勝負をしていた。

・・・結果的には白が2本勝ちで勝って、悠々と龍護を見下していたが・・・

龍護に続いて野武とスヴェンも持っていた荷物を降ろす。


「それじゃあ私は手続きとかしてくるから2人はのんびりしてていいよ」

「ではお言葉に甘えて」


スヴェンが部屋を出ると野武もベッドにダイブして、んー!と伸びをする。

一頻りベッドの柔らかさを堪能して窓を開けた。


「うー・・・さみぃけどやっぱ景色はいいねぇ~」

「だな」


なんか飲むの買ってくると龍護が財布を取ると野武が炭酸系なら何でもいいから頼む。と龍護に150円を投げ渡してくる。

龍護は仕方ねぇな・・・と思いながらも自販機へと向かった。



◇◆◇◆◇◆



3台こ自販機が並んだコーナーの前まで来ると既に友姫ごが買っていて、白は悩んでいるようだった。


「あ、リューゴ!」

「え?あ、本当だ」

「なんだお前らも買いに来たのか」

「そういうダッチーも?・・・てかパシられたか」


ほっとけ。と軽くあしらって缶のサイダーと缶コーヒーを買い、自分達の部屋に戻ろうとした時だった。

ん。と白が手を出してきた。


「・・・何だよ?」

「今日の賭けで負けた分貰うから」

「はぁ!?あれはアイスだったろ!?」

「何言ってんのよ!この自販機を見なさい!」


自信満々に隣の自販機を指差す。

そこには《期間限定!ふるふるサイダー雪解け味!》と限定品の飲み物が売っていた。


「・・・これを買えと?」

「だって限定品よ!これを味合わないのなら死んだも同然じゃない!」


そこまでか・・・と思い、再び自販機のふるふるサイダーの値段を見ると【200円】と表示されている。

龍護の買った缶コーヒーが2本買える値段だ。

ギギギギ・・・と壊れた玩具のように顔をゆっくりと白に向ける。


「負けたんだから・・・ね?」


白の表情は笑ってはいた。

少し威圧のある笑顔だが・・・

龍護はハァ・・・と溜息をして素直に200円を入れて限定品の飲み物を買い、白に渡した。


「ラッキー!これで飲み比べ出来るね!」

「yes!ハヤクノミマショー!」


白の言葉に「ん?」と思う龍護。


「ちょっと待て?飲み比べ?」

「ええ、そうよ?こっちの自販機にも限定品のカシスオレンジ味があって200円だったのよ。だから迷ってて、丁度いい所にダッチーが来たから両方買えたって理由♪」


ごっつあんでーす。と手をヒラヒラ振って友姫と白は自分達の部屋に戻って行ってしまった。


「次から負けたら野武に頼むか・・・」


今後、白に負けた時は自販機等には行かないで部屋に籠ることを誓った龍護なのであった。



◇◆◇◆◇◆



龍護が炭酸飲料と自分のコーヒーを買って部屋に戻ってきた。


「おう、お帰りー。やけに遅かったな?」

「白に捕まった」


ご愁傷さま・・・と軽く同情された後に炭酸飲料を渡される。

プルタブを倒すとプシッ!っという音がして少しだけ炭酸が溢れてくる。

零さないようにとすぐに飲み始めた。


「くぅ~っ!やっぱ炭酸はいいねぇ~!」

「そうかい」


龍護も缶コーヒーを開けて中身を飲む。

因みに龍護は微糖好きだ。

スヴェンが帰ってきた。

どうやら夕食の時間らしい。

スマホで友姫達にも伝えておいてくれと頼まれて龍護がすぐに無料通話アプリでチャットに『そろそろ夕飯』と送信する。

数秒後には『OK!』と帰ってきたのを確認してから夕飯の場所である1階フロアに行く。



◇◆◇◆◇◆



1階フロアには既に友姫達が席を取っていた。


「お前ら早くね?」

「だってバイキングよ!早く来て早く食べたいじゃない!」

「yes!シロノイウトーリデス!」


シロ!ハヤクイコー!と友姫が白を急かす。

龍護達が席で待っている間に3人で料理を取りに行くのであった。

だが少ししてからスヴェンが来て2人も取りに行ったら?と言われ、野武と共にバイキングへと向かう。

バイキングの料理は相当な数を占めていた。

日本食はもちろん、中華、イタリアン、アメリカン、韓国料理等様々だった。

韓国料理の方で話している3人を見付けた。


「何してんだ?」

「あ、ダッチーか、これとこれ、どっちから先に食べるか・・・ってそうだ!ダッチーのお皿に入れさせてよ」


はぁ?と言いたくなったがよく見ると龍護の目から見てもその料理は美味しそうに感じる。

ならば・・・と考え、龍護は多めにその料理を取った。


「あれ?少し量多くない?」

「ちょっと美味そうだったからな。俺が食べる分も含めた」


オッケー。と言って白は他のエリアに行ってしまった。



◇◆◇◆◇◆



料理を取り終えてテーブルに戻ると既に全員が揃っていた。


「お前ら早くね?てかスヴェンさんまでいつの間に・・・」


龍護の問い掛けについさっき友姫達が帰ってきたからその時に交代したことを聞いて龍護も席について一斉に食べ始める。


「この料理美味しー!」

「マジでうめぇな!」


どうやらバイキングの料理は好評のようだ。

龍護も料理を黙々と食べている。

スヴェンに至っては既にアルコール・・・日本酒を呑んでいた。


「って、スヴェンはビールじゃないんですね?」

「え?あぁ、日本のお酒が気に入ってて日本にいる時はずっと日本酒だよ」


まぁ故郷に帰ったらビールやウイスキーも飲むけどね?と笑いながらお猪口を傾けていた。



◇◆◇◆◇◆



「あ~食べた食べた~。あ、ダッチー、モブ!この後そっちでトランプしない?」

「え?俺はいいけど・・・」


龍護はチラッとスヴェンを見る。

どうやらスヴェンはバルコニーでもう少し呑むらしく、好きにしていいとのことだ。

カードゲームをやる約束をした5人は食器を返却して部屋に戻った。



◇◆◇◆◇◆



「あー!また負けたー!」

「ノブvery weak!」


現在ババ抜き3回戦で3回戦とも野武がビリで終わっている。

トップを争っているのは白と龍護だ。

そして4回戦目が始まる。

順番が決まり、白→龍護→雫→友姫→野武の順でカードを引くことになった。

白が龍護の前にカードを出すとスッと何も考えずに龍護は右端のカードを掴み取る。

出たのはスペードの7。

龍護は持っていない。


「さすがに適当に引いても無理か・・・」

「ま、最初ならそんなでしょ」


次に龍護が雫の前に手札を出す。

雫が1枚引いて2枚のカードを捨てた。

次に雫が友姫に手札を出す。

友姫はウーと唸りながら選ぶもそのカードは持ってる手札と一致しなかった。

そして最後に野武の番だ。

序盤は手札が多いから野武も適当にカードを引く。

一巡し、野武の持っているカードの1枚を白が引いたが一致しなかった。


「雫ってお前と違って運いいよな・・・」

「まぁあの子は昔から強運の持ち主だからね。・・・てか今サラッと比べたでしょ?」


いえ別に・・・と龍護はそっぽを向きながら次は左端のカードを引いた。

そのカードはJOKERだった。

ポーカーフェイスを装うも白はニヤニヤしている。


(あの野郎・・・)


心の中で溜息を付きながらもJOKERを雫に引かせようとするがすんなりと別のカードを引かれた。



◇◆◇◆◇◆



「あーもう!いい加減負けなさいよ!」

「はぁ!?お前こそ負けろや!」


勝負は白と龍護の一騎討ちとなった。

だがお互いにJOKERを往復させている。

既に何往復したかも忘れていた。

白が龍護の手札からカードを1枚引くがまたJOKERだ。


「へっ、どうやら試合は終わりのようだな」

「どうだか」


龍護が白の手札から1枚引く。

・・・がまたまたJOKERだ。


「・・・この・・・」

「さすがに龍護には負けたかないっての」


バチバチと火花が散っている。

雫は既にテーブルで寝てしまっていた。

友姫も友姫でテレビを見て、野武はネット小説を読んでいる。

時間だけが過ぎていた。

龍護が引き終わって白の番となる。


「・・・」


真剣な表情でカードを眺める。

そして遂にカードを引き抜いた。


白が引いたのはハートのクイーン。


持っていた残り1枚のカードと揃って白が勝ち抜け、ビリは龍護となった。


「っしゃあああぁぁぁあああ!!!!」


漸く勝負が決まり、疲れたのか白は床に寝そべった。


「あっぶな~・・・危うくビリになる所だった・・・」

「そこまで負けたくないか・・・」


当然でしょ。と龍護に勝ち誇った顔をする。

すると龍護は立ち上がり、外に行こうとする。


「?どこ行くの?」

「ちょっと散歩だ」


ふーん、りょーかーい。と白が軽く手を振っていた。



◇◆◇◆◇◆



龍護はバルコニーに出て近くのゆったり座れる木製ベンチに座っていた。

空は既に暗く星空になっている。

フゥ・・・と息を付きながらその星空を眺めていた。

すると突然視界が真っ黒になる。


「who is it?」


その声ですぐに分かった。


「何してんだ友姫・・・」


Oops!バレタカー!と龍護の目の前に立った。


「どうした?」

「ベツニー!」


そう言いながら龍護に背を向けて上に座る。


「キレイダネ・・・」

「・・・そうだな」


すると急に友姫がギュッと龍護に抱き着いてくる。


「どうしたよ?」

「ナントナクシタクナッタ」


その顔は満足そうで顔をスリスリと龍護の胸板に擦り付けている。

そんな友姫の頭を龍護は優しく撫でていた。



◇◆◇◆◇◆



「さてと・・・そろそろ寝るか」

「ウン」


龍護が立ち上がり屋内に入ろうとする。


「ネェ、リューゴ」

「ん?」


龍護が振り返る。

そこにいた友姫は月明かりに照らされてより一層可愛く見えた。


「マタ、go together」

「おう」



◇◆◇◆◇◆



帰り道。

スヴェンが運転して龍護が助手席に座る中、後ろで4人は静かな寝息を立てていた。


「ったく・・・はしゃぎ過ぎだっての」

「ハハ、たまにはいいんじゃないかな」


ですかね?と龍護は窓越しに離れていくスキー場を眺める。


「今年から皆は2年生か・・・友姫も少しづつ日本語をマスターさせないとな」

「そういやそうですね。時間があったら家庭教師でも雇えばどうです?」

「そうだな・・・っといるじゃないかここに」

「・・・え?」


スヴェンの言葉に龍護はハッとする。


「え・・・まさか・・・」

「私の横にいい家庭教師がいたよ」


やっぱり・・・と龍護は頭を抱える。

友姫を宜しくね。と言われ、なし崩しに龍護が友姫の日本語の家庭教師となった・・・

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