第7話 ひと夏の思い出

龍護と友姫が出会って3ヶ月が経つ。

夏休みも近くなった頃、友姫はクラス内で打ち解けて、今では龍護以外にも他の男子生徒と話していたり同性のクラスメイトと遊んだりしていた。


「最近ラジネスさん。人気だよな~。そこんとこどうなんだよ彼氏さんよ」

「誰が彼氏だ」


龍護が頬杖をついて外を眺めてる中、野武が話し掛けてきた。


「今じゃ学校中のアイドルだもんな~」

「アイドルって・・・」


そう言いながらも龍護はチラッと友姫を見る。

友姫は今、クラスメイトの女子生徒達と話していた。


「何話してんだろうな~?」

「・・・さぁな」


チャイムが鳴り、それぞれが自分の席に着く。

今日も学校が始まった。



◇◆◇◆◇◆



「旅行?」

「yes!リューゴモドウデスカ?」


午前の授業が終わり、食堂で食事をしている時だった。

友姫の両親が夏休みに旅行する事になり、友姫が両親に龍護を誘いたいと言っていたようだ。


「いや、さすがにそれはダメだろ。せっかくの家族旅行なんだし」

「イエ、family tripデハアリマセン。relativeヤfatherノyoke fellowモイマス」

「余計に行きづらいな!?」


友姫曰く、両親はOKとの事。

明日答えを出すと言った龍護。

逆に言うと今日中に答えを出してそれを伝えなければいけないということだ。

友姫は楽しみにしてると言って2人は午後の授業に向かった。



◇◆◇◆◇◆



「旅行!?」

「まぁな・・・」


龍護が自宅に帰って恵美に今日学園であった事を話した。

当然恵美は羨ましがっている。


「けどいいの?家族旅行なんじゃ・・・」

「なんでも親戚や向こうの親父さんの仕事仲間も来るみたい」

「いや、それでも龍護が行くってどうよ?」

「だよな・・・」


龍護はそう言いながら茶碗の中の米を口に入れる。


「・・・それにラジネスカンパニーの社長の娘って・・・仲がいいなら男子生徒から疎まれるんじゃない?」

「・・・既になってる」

「御愁傷様です」

「止めれ」


恵美からの口撃で轟沈しかけている龍護。

本人も少しは分かっていた。


「これ、当日の泊まるホテルだってさ」


龍護がスマホを付けて恵美に渡す。


「ちょっ・・・このホテルってCMに出てた所じゃない!?」

「ハイ・・・ソウデス・・・」


スマホに表示されていたホテルはグアムの【サンディゴ・スパル】というホテルで前年度でモンドセレクション最高金賞5回目の受賞となったホテルである。

それなりに宿泊費も高くなり、安くても1泊10万超え。

高いと50万は下らないホテルだ。


「・・・止めといたら?」

「それ言おうとしたら泣かれそうになりました」

「最早打つ手無し!?」


ハァ・・・と恵美はため息が出てしまった。


「仮に行くとしてもお返しとかどうすんの?」

「庶民の俺にどうしろと?」

「例えば・・・一生を賭けてその子に服従するとか・・・」

「・・・俺が悩んでるの楽しんでるな?」

「割と」


さすがにイラッときたのかジト目になる龍護。


「うん・・・さすがに冗談だからそんなゴミを見るような目は止めて?」

「向こうは問題無いらしいんだけどな・・・」

「旅行ねぇ・・・・・・・・・・・・ん?旅行?」

「あ?」


恵美が何か思い出したのかバッグを持ってきて予定帳を出す。


「・・・ねぇ、その旅行っていつ?」

「確か・・・・・・8月下旬」

「何泊?」

「2泊」

「ごめん、私もその月の下旬に大学のサークルで合宿・・・という名の旅行が入ってたわ」

「はい!?」


場所は!?と聞くと大阪と帰ってきた。

留守番もなんだし行ってきたら?と言い出す恵美。


「いやいやいや!?規模が違うから!?」

「大丈夫だよ、私は問題ない」

「俺が問題大有りなんだよ!?」


じゃあ龍護1人、家で留守番する?と言われ、結局行く事になった龍護であった。



◇◆◇◆◇◆



翌日。


「Hey!リューゴ!good morning!」

「おう、あぁ昨日の件なんだけど」

「yesterday?oh!travelノケンデスネ!デ!イケルンデスカ!?」

「行けるんだけどさ・・・なんで誘ったわけ?」

「fatherノfriendガfamily tripデケッセキシタンデticketガアマッタンデスヨ。ソレデワタシノfriendヲサソウカトイウコトニナッテ、リューゴ二White-feathered arrowガタチマシタ。ソウデナケレバサソエマセンヨ」


なぜそこで親父さんの友人という方向にならなかったのか?と疑問に思って聞くと既に誘いの言葉は掛けたが仕事や私用で無理となり最終的に友姫の友人を誘うという結論のようだった。

理由を聞いて納得のした龍護。

旅行日はまだ先だが友姫は楽しみのようだ。



◇◆◇◆◇◆



旅行日前日。

友姫から聞いたのだが夜に飛行機に乗るので夕方には迎えに行くから準備しておいてほしいと言われ、龍護は準備を済ませていた。

既に恵美は旅行に行っていて家には龍護が1人いるだけだ。


「着替え、サンダル、水着、お金、歯ブラシ、タオル、菓子、水筒、変圧器、コード、plvita、念の為のモバイルバッテリー、そういえばドレスコードってあんのかな・・・」


龍護は自作の準備リストを制作して旅行の準備をしている。

遠出の際には昔からしている方法だ。

本人曰く、この方が忘れ物をしにくいからなんだとか。


ピンポーン


呼び鈴が鳴り、外に出る龍護。

外では間宮美紅(初めて会った女性の護衛人)と運転手の沓澤が立っていた。


「奪木様、お迎えに上がりました」

「態々すみません。・・・そういえばホテルでドレスコードってあるんですか?」

「そうですね、出来ればスーツ、無いのでしたら制服の方が宜しいかと」

「・・・今から着替える時間ってあります?」


そうですね・・・と間宮が腕時計をチェックする。


「後10分で着替えが出来るのであれば問題ないかと・・・」

「あ~・・・そしたら持って行きます・・・迎えの車って・・・」

「?リムジンですが?」


それがどうしました?というような顔で答えられる。

ですよね~・・・と龍護は心の中で呟いた。

龍護は急いで制服をハンガーから取って畳み、キャスターバッグに入れる龍護。

準備が整い、渋々リムジンに乗った。

間宮、龍護、沓澤を乗せたリムジンが走り出す。


「御質問なのですが奪木様はリムジンに抵抗が?」


龍護と後部座席に乗った間宮が突然そんな疑問を龍護に振ってきた。


「というか・・・俺の住んでる所って見ての通り入り組んでるんですよね・・・その中をリムジンで来るって・・・かなり度胸いりますよ?それにそれでミスって車に傷が入ったら大事でしょ?」

「お気遣い感謝します。ですが私達は友姫様やスヴェン様を御守りする立場。車の運転に関しても厳しいチェックを通り、皆様を送り迎えさせて頂いております。・・・1つ言わせて頂きますと奪木様はもう少し甘えていいのでは?とも思っております」

「俺が?」

「はい、私の見解では奪木様は自分が思っているよりかなり大人びております。奪木様も友姫様もまだ学生の身。大人に守られていいのです。その上奪木様は我々にとって客人。私達が敬意を称して対応させて頂くのは当然です」


間宮はそう言いながらバックミラーに映る龍護に優しく微笑む。

まぁ、龍護は大学4年で死んで転生しているので前世の年齢と合わせると普通に30歳はいくがここで変にボロが出れば面倒事になりそうなので留めておいた。

数十分して空港に到着する。

キャスターバッグを下ろしてハンドルを伸ばし、転がしてターミナルに入る。

既にメンバーは揃っていたようだ。


「リューゴ!」


友姫が嬉しそうに龍護へと駆け寄って来て龍護の手を持ち、集団に連れていく。


「ちょ、引っ張るなっての」


友姫はそれでも尚、龍護を引っ張る。

スヴェンが龍護を見付け、友人や仕事仲間に龍護を紹介する。


「悪いね龍護君。私の知人が家族旅行で欠席になって1枚チケットが余ってしまってね・・・そしたら友姫が龍護君を連れて行きたいって言ったから私も余らせるくらいならその方がいいかなと思って誘わせてもらった次第だ」

「いえ、こちらこそ招いて頂いてありがとうございます。それとドレスコードがあると聞きましてバッグの中に制服が入っているのでどこかで着替えたいんですけど・・・」


なら突き当たりにロッカールームがあるからそこで着替えてほしいと言われ、龍護は荷物を持ってロッカールームに向かった。



◇◆◇◆◇◆



7分で着替え終えて集合場所に戻った龍護。

丁度搭乗時間になったようだ。

スヴェンから1つの封筒を受け取る。

中を見てみるとチケットとドル札だった。

金額は181ドル。

現在の為替、日本円で約2万前後。

さすがに返そうとしたが向こうはこっちの家庭事情を知っていて出してくれたとのこと。

返すのは無粋と判断し、出来るだけ使うのは控え、余ったら全て返そうと誓った龍護であった。

飛行機内では座る席は勿論友姫の隣。

搭乗ゲートに入ろうとした時だった。

警備員に龍護が止められてしまう。


「申し訳ございませんお客様。海外旅行の際は飲食物の持ち込みはお断りさせて頂いております」

「え゛・・・」


どうやら龍護の持って来ていた菓子と水筒が引っ掛かってしまったようだ。

菓子は捨て、水筒の中身は出すように指示され、言われる通りにして漸く通る事が出来た。

友姫は先に済ませていて龍護の様子を見て笑いを堪えていたが龍護にはそれが見え見えだった。


「リューゴ・・・オモシロスギ・・・」

「るせぇ・・・」


何はともあれ搭乗ゲートを潜れた一行は飛行機に乗り、グアムへと飛んでいった。



◇◆◇◆◇◆



午前7:00

日本時間で6:00にグアムに着いた。


「あ~・・・座りっぱなしだったから背中とか腰とか痛てぇ・・・」

「リューゴ、イッテルコトlike an old man」

「ほっとけ」


龍護が背筋を伸ばす度に背骨の関節が鳴る。

バスで移動らしく再び椅子に腰掛ける。

外の風景をぼんやりと見ていた。

友姫に呼ばれ、振り向くとグミを渡してくれた。

どうやら空港の売店で売っていたようだ。

1つ貰い、再び外を眺めていた。


(あまり元の日本とは変わらねぇな・・・)


バスの中で1人、思いにふける龍護であった。



◇◆◇◆◇◆



10分でホテルに着いた。

見た目がまず豪華だった。

入口からレッドカーペットが敷かれ、奥へと伸びている。

支柱が何本も立っていてその1つ1つに綺麗な彫刻が掘られ、金色の装飾が施されている。

その両サイドには清潔な薄いベージュの制服を着たホテルの従業員が何人も立っていて頭を下げたまま迎えていた。

バスから降りて中へと進む。

途中で従業員達が龍護達から荷物を受け取り、中へと運んでいく。


中も綺麗だった。


天井から吊るされているのは巨大なシャンデリア。

それが何個も吊るされている。

中の支柱にも綺麗な装飾が施されていた。

そして目の前にあるのは大きな噴水。

2人の子どもの天使が1つの壺を持っていてそこから水は出ていた。

壁には巨大な風景画。

恐らくロビーからこんな豪華だから部屋もかなりのものだろう。

スヴェンが受付に向かう中、親戚や仕事仲間の人達が談笑していた。


「スゴイ?」


ホテルに圧倒されていた龍護に友姫が近付いてきた。


「なんというか・・・俺・・・浮いてるな」

「リューゴハeventuallyダカラシカタナイヨ」

「本当に俺を誘って良かったのか?他にこういった場所に合ってる奴を選んだ方が・・・」

「アー!モウ!ナンデリューゴハoneselfヲunderestimationスルカナー!」


友姫は突然、龍護の髪をグシャグシャにする。


「うおっ!?何だよ急に!?」

「リューゴハreservationシスギ!ワタシガリューゴトイキタカッタカラfather二タノンダンダシ、リューゴハモウguestナンダヨ!?」

「けど・・・」

「リューゴ、ワタシガリューゴヲinvitedノハ、オレイヲシタカッタカラダヨ」

「礼を?」


ソウデス!と友姫は胸を張る。


「リューゴハワタシニwitchcraftノアドバイスヲクレタ。キョウノtravelハソノオカエシモカネテルノ!ダカライッショニタノシモーヨ!」


龍護に屈託の無い笑顔を向ける友姫。

友姫にとってこれは魔法の練習を一緒にしてくれた龍護へのお返し。

その言葉に龍護は少し気が軽くなり、友姫の頭を撫でる。


「リ・・・リューゴ!?」


撫でられた本人は耳まで顔を赤くした。


「あんがとな友姫・・・じゃあ、俺も誘われた旅行を楽しむか!」

「It is the spirit!」


チェックインを終えたようでスヴェンが戻ってくる。

午前は部屋に入って中の確認をした後にロビーに集合。

そのまま海で海中散歩、マリンジェット(水上バイク)といった体験や、サーフィン、バーベキュー等といった事をするらしい。

夜には花火と盛り沢山だ。

早速ホテルの部屋を確認しに行く一行。

男性と女性で分かれ、大部屋を8部屋使っている。

部屋に入るなり、一緒に来ていた子ども達がベッドの場所取りを始めた。

龍護は荷物を整理してベランダに出る。

子ども達が使うベッドが決まったようでスヴェンの仕事仲間達や親戚が先に龍護にベッドを選ばせてくれた。

せっかく選ばせてくれたので龍護は外が見られる場所を選ぶ。

全員が決まって水着に着替え、上着を着ると女性陣はまだのようだったらしく龍護達は部屋に戻った。

その際だが歳の近い親戚から友姫とはどういう仲なのか、どこまで進展してるのかを根掘り葉掘り聞かれ、部屋から逃げ出したのはまた別のお話。



◇◆◇◆◇◆



1人ロビーのソファーに座り、天井からぶら下がるシャンデリアを見ていると急に視界が暗くなる。


「ダ~レダ?」

「・・・友姫・・・何してんだ?」


バレチャイマシタカ~と友姫が龍護の顔から手をどかす。

龍護が振り返ってみるとレースの付いた白いビキニにピンクの上着を着た友姫が立っていた。


「ソノ・・・ドウカナ?」


聞きながらも視線を逸らしてモジモジしている。


「えと・・・その・・・可愛い・・・よ?」

「・・・really?」


自信が無いのか顔をほんのり赤くしたまま上目遣いで龍護を見る友姫。

ドキッとしてしまい、不意に龍護も視線を逸らしてしまう。


「本当・・・本当に可愛いって」

「ウレシイ・・・」


友姫が満足そうに顔を綻ばせる。

全員が揃ってバスに乗り、海へと向かった。



◇◆◇◆◇◆



「ウミデース!!!!」


海に着くなり、友姫がヒャッフー!!!!とはしゃぎながら子ども達、歳の近い男女と共に海に飛び込む。


「危ねぇぞー!」

「all right all right!リューゴミタイニsallowジャナイカラダイジョーブデース!!!!」

「言ったなー!」


龍護も走って海に飛び込む。


「Wow!リューゴガトンデキタ!」


クラエ!と友姫が龍護に海水を掛ける。


「へっ!当たんねぇ・・・ブッ!?」


龍護もやり返そうとしたら砂に足を取られ、顔面からバッシャーン!と音を立てながら海に倒れる。

それを見て笑い出す友姫達。


「リュ・・・リューゴガシンダー!」

「勝手に殺すな!?」


すぐに起き上がり、友姫達を追い掛ける龍護。

向こうではサーフィンをしている人達もいた。

親戚や仕事仲間が友姫と龍護、子ども達を呼んでバーベキューを始める。


「どうぞ」

「ありがとうございます」


龍護がスヴェンから肉と野菜の刺さった鉄串を2本受け取り、友姫の元に行く。


「ほれ」

「Thank you」


龍護から串を受け取って2人で食べ始める。


「ウーン!pepperガキイテマス!」

「本当うめぇな」


あっという間に平らげた2人。

向こうを見てみると大人達は既にビール等の酒を飲んでいた。


「ワタシモハヤクalcoholic drinkノミタイ・・・」

「20歳になってからな」

「time machineガアレバミライデノメ・・・」

「いや、年齢は変わんねぇからな?」


ウ~!とむくれる友姫を窘め、スヴェンから呼ばれて彼等の元に向かう2人。

どうやら水上バイクの準備が出来たようで2人1組で乗るらしく、組を作って欲しいとのこと。

すぐに出来たようで水上バイクを停めている所に向かう。

友姫と龍護ペアは青い水上バイクを選んだ。

龍護が運転席に跨って友姫が後ろに乗る。


「落ちねぇようにちゃんと掴まっとけよ?」

「ワタシガfellトイウコトハ、リューゴノDriving technologyガナイトイウコトデ」

「地味にプレッシャーだな・・・」


友姫の言葉に苦笑いするしかない龍護。

付属のキーを挿してエンジンを起動する。

ブオン!!!!と大きな音が鳴った。

使い方はスクーターと同じで右ハンドルを手前に回せばいい。

ゆっくりと動かすと少しずつ海水を弾いて進み出す。

そのまま回し続けるとかなりの速度になりながら龍護は友姫を落さない程度に蛇行運転をする。

後ろを見ると既に旅行に来ていたメンバーは小さくなっていた。

少しハンドルを戻した途端にスピードが緩まる。

加速も減速も早いらしい。

粗方操作方法を覚えた龍護は加速して正方形に仕切られたコースを回り始める。


「リューゴハヤーイ!!!!」

(って、友姫の胸が背中にいいいいぃぃぃぃぃいいいい!?!?!?!?)


後ろの友姫も楽しんでいるようだが龍護は別の意味でそれどころでは無かった。

邪念を捨てて運転に集中する龍護。

再び後ろを見ると後から来たペアが走ってきていた。

混まないように、とすぐに加速する。

数十分後、時間になったのかスヴェンが水上バイクに乗っている龍護達を呼び戻す。

それに反応し、すぐに海岸へと水上バイクを近付けた。


「アー!タノシカッタ!」

「けど、良かったのか?俺が運転して」

「ワタシ、以前にdriveシテタ」

「あ~だから」


その後も海中散歩を楽しんだ龍護と一行。

暗くなり、少し風が出始める。

スヴェンがそろそろホテルに戻るか、と言って皆が帰る準備をし出す。

友姫が何かを思い出し、スヴェンの耳元で何かを話した。

スヴェンは許可したようで嬉しそうに龍護の元に戻ってくる。


「リューゴ、ホテル二モドッタラroof floor二アルferris wheel二ノリマセンカ?」

「え!?あのホテル、遊園地もあるのか!?」

「ハイ、アリマスヨ。dinnerマデ、マダジカンガアルカラソレマデデイイナラトfatherモOKクレマシタ」


スヴェンが許可したのなら乗らせてもらうか・・・と考え、乗ることを約束した龍護。

帰り支度を終え、ホテルへと帰って言った。



◇◆◇◆◇◆



ホテル屋上。

観覧車がライトアップされながら回っている。

風が吹いているが動かせない程度ではなかった。

従業員の人がドアを開け、2人が揃って乗る。

ドアを閉めて2人で景色を眺め始めた。

目の前に映るのは街灯や、車のライトで照らされた街並み。


「beautiful・・・」

「すげぇ・・・」


龍護もその光景に見蕩れてしまう。


「てか、友姫は来てんだから見飽きてんじゃねぇのか?」

「ワタシ・・・コノHotel二ハジメテトマッタトキニコノFerris wheelヲミツケテノッタンデス・・・イマデモコノsceneryハカワラナイ・・・ソシテ、トマルトキハnecessarilyコノFerris wheelにノルトキメテマシタ・・・コノsceneryハイツミテモアキマセン・・・」

「そうなんだ」


龍護はそう言いながら横にいる友姫を見ると、友姫の顔はライトで照らされているからなのか分からないがとても綺麗に見えていた。

そして友姫の顔は懐かしそうな顔をしている。

2人が乗った観覧車のカゴが1番上に来た時だった。


ガコン!!!!


「ウワッ!?」

「キャッ!?」


突然観覧車が止まる。

グアムでは時折停電が起こる事があり、初めてグアムに来た日本人は必ず慌ててしまう。

それと帰り支度をしてる時から吹いていた風の影響もあった。

先程、急に強くなったのだ。

そして止まった事で友姫と龍護はバランスを崩してしまい、倒れてしまった。


「いつつ・・・大丈・・・夫ぅ!?!?」


龍護が気付いてしまった。

先程の振動で2人は倒れ、龍護が友姫を押し倒している姿勢になっていた。


「ウ・・・ウン・・・ワタシハ・・・・・・!?!?」


友姫も気付いたようだ。

時間が止まったかのように2人は固まってしまう。

ハッ!として龍護がどこうとした時だった。

友姫が龍護の背中に腕を回す。


「ゆ・・・友姫さん?」

「・・・」


友姫は恥ずかしそうに頬を赤く染めながら視線を逸らす。

突然、ギュッ!と目を閉じた後に再び目を開けて龍護を見た。


「リューゴ・・・」


龍護の心臓は破裂しそうになる程、鼓動が早くなっていた。


「リューゴハ・・・todayノtravel・・・タノシカッタ?」

「お・・・おう・・・旅行なんて(この世界では)初めてだったからさ・・・」

「ヨカッタ・・・」


友姫は嬉しそうに目を細める。


「リューゴ・・・ワタシハ・・・」


再び龍護を友姫は潤んだ瞳で見詰める。


「ワタシハ・・・リューゴガ・・・────────スキ」


友姫からの告白。

恋愛に疎い龍護でも本気だと分かる。


「ワタシ・・・リューゴトイテワカッタ・・・リューゴトイタイ・・・モットリューゴノコトヲシリタイ・・・ダカラ・・・」


震える口でその言葉を告げた。


「ワタシト・・・────────ツキアッテクダサイ」

「・・・」


龍護は視線を落とす。

自分に問い掛けていた。




────俺に・・・つとまるのか・・・?




────住む世界が違う俺と友姫。




────俺に・・・・・・その資格が・・・友姫といる資格があるのか・・・?




スッ・・・と瞳を閉じる。

龍護の瞼の裏に映るのは友姫と出会ってからの今まで。


最初の出会いは突然だった。



角から飛び出して来た女子生徒を学園に案内する途中で不良達と交戦。



その後に龍護と同じクラスになり、話すようになった。



魔法の授業でも必ずペアとなって魔法を覚えていった。



そして・・・今日、旅行して、観覧車に乗って告白された。



必ず隣や近くに友姫がいた。



友姫といて楽しいと思っている自分がいた。



龍護は目を開ける。

友姫は不安そうにしていた。

フラれる────そう思っているんだろう。

だからこそ・・・龍護は伝えた。


「友姫・・・」

「・・・ハイ」


恐怖の余り、友姫は目を閉じてしまう。

背中に回した腕も震えていた。


「俺も────────俺も友姫が好きだ」

「・・・・・・・・・・・・・・・え?」


自分の思いを告げた途端、龍護は友姫の身体を持ち上げてお互いに立って抱き締める。


「俺も・・・気付いたらお前を好きになってたよ」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・嘘・・・」

「バーカ、こんな恥ずかしい事、嘘混じりで言えるかよ」


両想いと知って友姫の目からとめどなく涙が溢れる。


「ヤッタ・・・ヤッタァ・・・」

「・・・?友姫?」

「ヤッタアアアァァァァアアア!!!!!!!!」

「ウオッ!?」


突然飛び上がる友姫とそれに応じて揺れる観覧車のカゴ。


「落ち着こう!?カゴ揺れてっから!?」

「ウレシイ・・・ウレシイヨォ・・・」


落ち着いて涙を拭う友姫。


「リューゴ!」

「ん?」

「コレカラモヨロシクオネガイシマス!!!!」


友姫が眩しい笑顔で伝え、龍護と友姫は唇を合わせた────

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