第6話 授業と個人授業

友姫の家に招かれた2日後。

龍護は徒歩で登校していた。


「ねむ・・・」


龍護の目の下には隈があった。

昨日、友姫の家でやっていた対戦ゲームを自分の家でやっていたのだ。


「リューゴォ!!!!」


背中に友姫が抱き着いてきた。


「リューゴ?ドウシタノ?ネムソウダネ?」

「ゲームしてたからな・・・」

「ヨフカシハguiltyダヨ?」

「いや、そしたら全世界はかなりの有罪人で溢れ返るぞ?」


お互いに冗談を言いながら校内に入る。


「ソウイエバ、サッソクmakeマシタ!」

「何を?」


龍護の言葉に友姫がスマホの画面を見せる。

そこにはプラスチックの長い爪のようなものが10本写っていた。

あのリズムゲームの補助器だ。

テープの繋ぎ目がチグハグな感じ、恐らく友姫の自作だろう。


「作ったんかい・・・」

「yes!コレデツギハカチマスヨ!」


友姫はかなりと言っていい程正面からの真っ向勝負好き。

だからこそ勝つ事に拘っていた。


「へっ!俺も負けねぇからな」

「・・・ソレハソウトリューゴ」

「ん?」

「キョウ、ジュギョウデツカウtextbookヲワスレタンデPlease lend it」

「いや俺とお前、同じクラスだからね?」

「リューゴガワタシノInstead二Angryサレレバno Problem」

「うん、こっちが問題大有りだ」


ツベコベイワズニカシナサーイ!と怒る友姫に対して逃げる龍護であった。



◇◆◇◆◇◆



午前の授業が終わり、昼休みに入る。

龍護と友姫は食堂にいた。

因みに教科書を忘れた友姫は当たり前だが教師に怒られていた。


「リューゴノspite」


口を尖らせて友姫が龍護を睨む。


「いや、なんで俺が悪くなってんだよ?忘れたお前が悪いだろ」

「ソコハOneselfヲギセイニシテデモタニンヲProtectコトガGentlemanノツトメデス」

「何?つまりお前は自分のミスを俺に肩代わりさせようとしたんですか?」

「ハイ?ナンノコトダカサッパリ」

「・・・」


食券を買い、窓口に渡す。

数分して品物が来たので受け取り、テーブルに座る。

その真向かいに友姫が座った。

龍護はラーメンを啜り、友姫はサンドイッチを食べている。


「ネェ、リューゴ」

「ん?」

「リューゴッテwitchcraftハトクイ?」

「何だよ急に?」

「モシ、トクイダッタラTellシテホシイ」

「・・・苦手なのか?」

「トイウヨリ・・・modificationガニガテ・・・」


友姫がバツが悪そうに視線を反らす。

そして友姫の言葉になぜか納得出来てしまう龍護。

友姫は何に対しても真っ向勝負を望む。

ということは全力で掛かってくるという事だ。

友姫は魔法適正Sランク。

SとAの差は歴然。

そのうえ真っ向勝負好きとなると対等な相手が必要となる。

そして龍護もSランク。

とはいえ龍護はほぼ加減は出来ているのでAだろうがCだろうが相手に出来ていた。


「なら俺が相手しようか?どうせ次の授業、魔法の訓練だし」

「really!?Thank youリューゴ!」


食事を終え、2人は授業に向かった。



◇◆◇◆◇◆



魔法の授業は外で行われる。

更衣室で着替えをしている時だった。


「龍護ってさ、ラジネスさんと付き合ってんの?」

「は?なんだよ急に?」


話し掛けてきたのは龍護にとって数少ない友人の悠悟。

着替えの途中でそんな話題を振られた。


「だって最近殆ど一緒にいるじゃん?ラジネスさんの親ってあの”ラジネスカンパニー”の社長だろ?社長に気に入られてその娘と付き合ってるとなると親公認てわけじゃん」

「そんなんじゃねぇよ。それに付き合ってもねぇ。まぁ、親からは仲良くしてくれって言われたけど・・・」

「・・・それもう殆ど公認みたいなもんだぞ?」


実を言うと龍護は友姫に対してそんな想いは持ってなかった。

どちらかと言うと”手の掛かる妹”を持った。

そんな感じだ。

だが最近よく2人でいることに関しては実際にそうだから否定出来ない。


「・・・今はそんな気ねぇよ」

「勿体無ぇ~!俺なら即アタックしてるぜ!?」

「お前にそんな度胸あるのか?」

「・・・ください」

「・・・だろうな」


着替えを終え、外に出る生徒達。

外は太陽が昇り、地面と生徒達、教師を照らしていた。


「それでは授業を始めます。皆さんペアを組んで下さい」


当然の如くアブれた龍護と友姫。

Sランクと組むのは魔法の性質や性能的に自殺行為に近い。

龍護が教師に友姫と組むことを言うと教師も2人がSランクである事を思い出して許可をする。


「ヨロシクネ?」

「おう」

「それではまず無魔法を使って飛行をして下さい。高さはそうですね・・・地上から10mとしましょう」


教師に促され生徒達は飛び上がる。

やってるのは無属性魔法。

とはいえやり方はかなり難しい。

まず自分の魔力を足に集中させ、足の周りを高速回転させるイメージをする。

すると風が生まれ、浮かび上がるという感じだ。

言葉で言うのは簡単だが重要なのはここから。

バランスが取りにくいのだ。

回転させる風の範囲が大きければ安定するが高さが減る。

逆に回転させる幅を狭まれば高く飛べるが身体を支える面が少なくなり不安定になる。

自分に合った範囲を探すのが肝なのだ。

とはいえ龍護は一度転生している身。

イメージを固めやすい為、すぐに出来てしまった。


(さて・・・友姫はどうか・・・)

「ヒャアアアァァァァアアア!?!?!?」


案の定高く飛び過ぎていた。

高さは100m超え。

すると次は足に纏っていた風が消え、落ちてくる。

さすがに龍護もマズいと判断し、足に纏った風の回転を強める。

一気に急上昇し、友姫を空中で受け止めた。


「サ・・・Thank you・・・」

「少しは加減しろ・・・」


友姫を地上で降ろす。

教師が近付いてきて安否を確認した。

だがお互いに怪我は無かったようだ。

無属性魔法の後は属性ごとに別れての魔法の授業を受ける。

友姫がいる火属性魔法の人達は的を使い、火魔法の練習。

これも先程使った風魔法と同様、こちらは大きさで速度が決まる。

大きければ遅くなり、小さければ早くなるという感じだ。

だが大き過ぎれば暴発してしまうといった難点があった。

生徒達は順調にこなしていく。

前世でファンタジー小説を読んでいてやってみたかったと思いながら火属性魔法の練習を見ている龍護。

友姫の番になった。

友姫が両手を出して的に向ける。

魔力が収束され炎の塊が完成する・・・・・・のだが・・・


「なぁ、でかくね?」


生徒の1人が聞かれないように呟く。

火の玉は50cmを超えていた。

的と生徒の距離は50m程度。

この距離であれば火の玉の直径は10cm程度で充分。


「ハッ!」


友姫が勢いよく飛ばす。


ドゴオオォォォォォオオン!!!!!!!!


大きな音が響き、的は煙と炎で見えなくなった。

煙が晴れ、様子を見ると友姫の炎は的は壊せたもののその先の壁も壊していた。


「・・・」


全員が唖然としている。

友姫もやってしまった・・・と気付いているようで汗をダラダラと掻いていた。



◇◆◇◆◇◆



「ア~!ヤッパリwitchcraftハニガテデス」

「まさかここまでとはな・・・」


友姫と龍護が帰り道を歩きながら龍護は友姫の愚痴を聞いていた。

炎魔法を使った後、魔法を使った授業は続いたのだが身体強化魔法の時は鉄球を持ち上げて投げれば良かったのだが強化し過ぎのまま鉄球を投げてしまい、壁を破壊。

水魔法ではコップ1杯の水を出せば良かったのだが、水の出し過ぎで校庭の半分が水浸し。(さすがに故意ではないので叱られる程度で済んだ)

雷と土も散々な結果だった。


「けどお前、不良の3人と対峙した時は普通に魔法は使えてたじゃん」

「teachingジャナケレバイケルンデスヨ・・・」

「授業になったら力むってことか・・・」


龍護の言葉に友姫はコクンと頷く。

社長の娘とはいえ魔法も扱えないのであれば卒業は難しいだろう。


「ア~!コレデハSociety二デラレマセン・・・」

「・・・?社会って・・・お前、親父さんの会社引き継ぐ────」

「ヒキツギマセンヨ?」

「・・・は?」


友姫の言葉に立ち止まってしまう龍護。

さすがに今の言葉は理解出来なかったようだ。


「ワタシ、フツー二graduationシタラ、シューカツ・・・デシタッケ?ソレシマス」

「いやいやいやいやおかしくね!?両親何て言ってたの!?」

「?OKモラッテマス。アァ、スコシcollectionデnot succeedトハイイマシタガ、シューカツジョウ、ウケルコウホニハイレテマス」

「えぇ~・・・」


なぜ、社長の娘の身でありながら親の会社を引き継がないのか・・・

それに疑問を持った龍護。

友姫曰く、父親は友姫に引き継ぐ意志がないのであれば定年退職まで社長を続け、副社長を社長に任命。

その後本人は年金生活を送るつもりなのだとか。

友姫は一応イーラカンパニーを受けるつもりだが、本人曰く努力しないで上に就くのが嫌という理由で普通に就職活動をして引き継ぐのを断っていた。


「いいのかよ?それで・・・」

「リューゴ二ワタシノlifeヲキメルprivilegeハナイデスヨ~」


いや・・・そうだけどさ・・・と押し黙ってしまう龍護。

そしてもう1つ思っていたことがあった。


「だとしたらお前は卒業後はアメリカに帰るんだな・・・」

「?カエリマセンヨ?」

「・・・え?だってお前の親父って外国人・・・」

「?イッテマセンデシタ?ワタシノnationality、ニホンデス」

「え?待って?でも・・・」

「タシカニワタシノfatherハAmericanデスガケッコンハJapanデヤッテ、ソノトキニnationalityハトッタトキイテマス。ソレデワタシ、ニホンデウマレ、Americaデセイカツシテマシタ」

「ハアアアアァァァァァアアアア!?!?!?」


友姫の言葉に驚く龍護。

龍護はてっきりアメリカで友姫の母親が父親と出会い、そこで結婚。

アメリカで生まれて日本に来たのかと思っていた。


「でもお前、日本語も結構話せてんじゃん」

「ニホンノanimationヲvideo siteデミテテオボエマシタ」

「あ~そういう事・・・」


だから英語と日本語の両方を使っていたのか・・・と若干納得のいった龍護。

分かれ道となってそれぞれの家に帰っていった。



◇◆◇◆◇◆



龍護は今、夕飯を終えてベッドの上で友姫と無料通話アプリで話している。


『リューゴって明日、開いてますか?』


龍護がふとカレンダーを見る。

明日は土曜日。

予定は無かった。


「あいてるぞ」

『すみません、感じはまだべんきょうちゅうで、たまに時が間違ってると思います』

「むりにつかわなくていいよ。こっちもあわせるから」

『いえ、せっかく故郷にいるのです。少しづつ浸かって慣れようと思います・・・出来ればリューゴも感じを浸かって下さい。勉強のいっかんですので』

「分かった。それで明日は空いてるけど、何かするのか?」

『ちょっと私の家出魔法を練習してまして明日、一生に練習して欲しいのです』

「了解。俺は何時に行けばいい?」

『いえ、向かえを出しますのでリューゴは自分の言えに居て構いません』

「迎えって・・・リムジン?」

『モチのロン』

「自転車で行きます」

『え~wあの時のリアクションが面白かったのに~』

「ほっとけ、まぁ明日は自転車で行くから・・・時間はどうすんだ?」

『昼頃でお願いします』

「おk・・・ってかなんでそっちは漢字を使えてねぇのにこっちの漢字の理解は出来てんだよ?」

『ほんやくアプリ』

「それか」

『yes』

「りょーかいまた明日な」

『OK good dream』


友姫とのやり取りを終え、龍護は眠りについた。



◇◆◇◆◇◆



翌日。

龍護は自転車で友姫の家に来ていた。

敷地内に入ろうとした途端、使用人がやって来て移動しておくとの事。

龍護は降りて自転車を任せ、家の中に入った。


「お邪魔しまーす」


奥から友姫が歩いてきた。


「リューゴ!shoesヲモッテアガッテアガッテ!」

「おう」


龍護が靴を脱いで片手で持ち、家に上がる。


「・・・そういやなんで昨日は歩きだったんだ?てかあまり友姫がリムジンに乗る所って見たことないな・・・」


龍護はそう聞いたのも、友姫がリムジンで学園で来たのを見たのはせいぜい両手で数えられる程だったからだ。


「limousineデSchool attendanceスルトキハ、チコクシソウニナッタトキデス。ソレイガイデハホトンドworkデス」

「徒歩って・・・お前の家から学園って結構離れてんだろ。いつもは何時に起きてんだ?」

「6 a.m.」

「あ、俺より少し早いんだ?」

「チョーシノイイトキハソノママオキマス。Ill-conditionedトキハgoing back to sleepデス」

「お・・・おう、成程・・・」


会話をしながら歩いていると庭の訓練所に着いた。

以前と同様に使用人と護衛人らしき人達が訓練をしていた。

龍護と友姫が視界に入ったのか、全員が頭を下げる。

友姫がツヅケテテイイデスヨーと言うと頭を上げ、訓練を再開した。

お互いに靴を履いて外に出る。


「それでどうすればいいんだ?」

「At firstハフユウデス」

「確かに加減ミスってたな・・・」


イワナイデクダサイヨ~・・・と若干涙目になるも集中を始める。

龍護が最初は5mからだなと言った途端により一層集中力を高める。

そして少しづつ浮き始める。

後は少しづつ力を強めていくだけだ。

だが・・・


「ヒャアアアァァァァアアア!?!?!?!?」


一気に強めてしまい、100m上空に飛んでしまう。

またか・・・と思ったものの、すぐに龍護も浮遊して友姫を空中で受け止めた。


「ソ・・・sorry・・・」

「・・・」


龍護の中に少し疑問が浮かび上がる。

それを確かめる為に次は転移を使って5m先に転移してみろと友姫に言った。

友姫がそこに転移しようとしたら友姫が移動したのは18m先に転移していた。

やはりか・・・と龍護は友姫が制限出来ない理由が分かったようだ。

それを伝える為に友姫を呼ぶ。


「多分さ・・・距離や量的な制限が掛けられると友姫は変に意識して力んでるんだと思う」

「Limit of the distance and quantity?」

「そう。個人的な考えだけどさ、友姫は制限が掛けられると”そこに到達しないと”っていう意識が強くなって余計に力が入ってるんだと思うんだよ。浮遊の場合は最初は軽く浮いてたんだけど浮力が足りないという理由から”指定の位置に到達しないと”って思って力んで余計に力が入り、高く上がってしまう。水魔法の時は最初は軽く出せたけど量的に”不安になり”余計に出してしまった・・・って感じかな」


まぁ・・・後は本人の性格の問題だろう・・・と思ったがそれを直すのは無理があるだろうと考え、言わずにおいた。


「ナラドウスレバイイノ?」

「う~ん・・・これは俺がやってみて成功した方法なんだけど・・・」

「チョットソレデtryシテミル」


龍護が自分の方法を教え始めた。


「まず身体の中に大きい球体をイメージしてみて、次にその球体の1部を引っ張って1本の細い棒を球体から抜くようなイメージ。次にその棒を自分の手の平に向わせて水をイメージする」


龍護の言われた通りに友姫が実行するとチョロチョロと手の平から水が地面に落ちていた。


「I was able to do it!」

「もし水の量を変えたい時はイメージした棒の太さを変えればいい」


再び龍護の言われた通りにやってみると友姫の手から出てくる水の量が多くなったり少なくなったりと変化した。


「スゴイ・・・スゴイヨリューゴ!リューゴハオシエルgeniusデス!」


キラキラとした目で龍護を褒める友姫。

そんな友姫を見て照れ隠しに視線を反らした龍護であった。


後日。

魔法のテストで赤点ギリギリだった友姫の成績は龍護の教えで中間テストの時に、一気に80点近くまで上がったのであった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る