第5話 ラジネス家へ
ゲームセンターに行った2日後。
「good morning!リューゴ!」
ラジネスは来て早々、龍護の机に飛び乗ってくる。
「リューゴ、ソウイエバキノウ、my father二リューゴノコトヲハナシタラアッテミタイトイッテテ、todayニデモmy house二ショウタイシテイイトイワレマシタ!」
「え゙・・・!?」
招待という単語に固まる龍護。
それもその筈。
相手は大手企業の社長。
緊張をしたくなくてもするに決まっている。
「キョウノAfter school二carデ、ムカエニクルラシイデス」
「・・・マジですか・・・」
すでに迎えが来ると告げられて半強制的に行く事になった。
◇◆◇◆◇◆
放課後になってラジネスと龍護は校門前で立っていた。
「オソイネー」
「・・・」
のんびりと待ってるラジネスと少し緊張している龍護。
ラジネスは白、雫、野武にも呼び掛けたのだが白は陸上部で断念、雫は寄る場所があるらしく、野武は予備校と、3人たも予定が入っていて結局行くのは龍護のみとなった。
「ネー、リューゴ?」
「ん?なんだ?」
「リューゴッテ、ワタシノコトfamily nameデヨンデル」
「まぁそうだな」
「ナンカDistanceヲカンジル」
「・・・つまりどうしろと?」
「ユメ・・・」
「え?」
龍護がイーラを見るとラジネスはズィと龍護に迫っていた。
「ワタシノコトハ”ユメ”ッテヨブコト!」
「でも・・・」
「ヨバナイナラワタシノunderwearヲミタコトオオゴエデ──────」
「分かった!言うからそれは止めてくれ!?」
半ば無理矢理にお互い、下の名前で呼び合う事になったラジネスと龍護。
そうこうしている内に迎えの車が来た。
だが・・・
「迎えの車って・・・リムジンですかい・・・」
目の前で止まったのは真っ黒くて長い車のリムジン。
男性の運転手が降りてきて後部座席のドアを開ける。
その一つ一つの動作にすら気品が見えた。
「奪木龍護様で宜しかったでしょうか?」
「え?あぁ、はい」
「私、友姫様の周りのお世話をさせて頂いております沓澤と申します。この度は急な招待に御対応して頂き、誠にありがとうございます」
沓澤という男性が深々と龍護にお辞儀をした。
「友姫様、お荷物を」
「Yes, please」
ラジネス・・・友姫が執事に鞄を渡す。
次に龍護からも鞄を受け取ろうとしたが龍護は断った。
「リューゴ!hurry hurry!」
友姫に急かされて車に乗る。
当然ながら中も豪華だった。
「デハ、クツザワサン!my homeにlet's go!デス!」
「畏まりました」
車のドアを閉め、龍護と友姫を乗せたリムジンは走り出した。
◇◆◇◆◇◆
「広いな・・・」
それがリムジンに初めて乗った龍護の素直な感想だ。
「リューゴッテ、リムジンハeventually?」
「そりゃぁなぁ・・・」
「緊張なさらないでいいですよ。私達にとって貴方はお客様なのですから」
沓澤の言葉にそうは言ってもな・・・と龍護は心の中で呟く。
移動中に友姫から沓澤は父親の1番長い付き合いで何十年も前から友姫やその両親と一緒にいた事を友姫から聞いていた。
暫くして友姫の家に着いた。
大きい
ただそれだけではない。
友姫の家は日本古来の屋敷で中には大きな池のある日本庭園や小屋等があった。
友姫の父親が外国人で母親が日本人。
父親が大の日本好きでインターネットから屋敷の画像を探して建てたらしい。
そしてその間に産まれたのが友姫だ。
その屋敷の庭園に作られた道路を進み、玄関前に似つかわしく無い外国のリムジンが止まる。
運転手がドアを開けて道を開けると目の前には何人もの使用人が左右で頭を下げ、友姫の帰宅と客人の龍護を出迎えていた。
その間をなんともないように通る友姫。
気後れしながらも友姫に着いて行く龍護。
「すげぇな・・・」
「デショー?」
使用人によって玄関のドアが左右に引かれていく。
中では和服を着た外国人の男性が立っていた。
「君が奪木龍護君だね?」
「は、はいっ!」
「私はスヴェン・S・ラジネスといいます。友姫の父親です。娘の友姫がお世話になったようだね?ありがとう」
「い・・・いえ・・・」
「これからも友姫とは仲良くして欲しい」
友姫の父親、スヴェン・S・ラジネスは龍護に右手を差し出してくる。
龍護もそれに合わせて手を出し、握手した。
「Daddy!キョウハリューゴトズットアソンデタイ!」
「龍護君がいいというなら構わないよ」
その言葉を聞いて友姫がキラキラとした目を龍護に向ける。
「わーったよ、でも家に姉がいるから連絡してからな」
「あぁ、それは心配無いよ。電話番号を教えてくれるのなら私から連絡を入れておこう」
スヴェンの言葉に甘える事にした龍護は家の電話を教え、友姫の部屋に着いて行った。
◇◆◇◆◇◆
龍護が屋敷の廊下を歩いていると護衛人らしき人達が20人程、庭で訓練をしている。
中には身体をほんのりと光らせながら訓練をしている人もいる。
身体強化魔法を使いながらの訓練のようだ。
「凄いかい?」
突然話し掛けられそちらを見るとスヴェンが立っていた。
「彼等は選りすぐりの使用人でね、全ての護衛人の魔法ランクがBかAなんだよ」
そんな人達をどこから連れて来たんだ?と疑問に思う龍護。
だが中には古くからの付き合いの人もいるようだ。
「因みになんだが君の魔法ランクは幾つなんだい?」
「・・・」
魔法ランクを聞かれて押しとどまってしまう龍護。
ここで本当の事を言っていいのだろうか?と迷ってしまう。
だが相手は社長という存在。
嘘はいけないと自分に言い聞かせ、Sランクと言う事を明かした。
「ほぅ、君もなんだね?」
「確か娘さんもですよね?」
「そう。友姫もランクはSなんだよ」
つまり龍護のクラスには魔法ランクSの人が2人存在する事になる。
因みに友姫は無属性魔法の他に火属性、水属性、雷属性、土属性を持っていることも聞いたことを話し、自分も闇属性と光属性を持ってる事を話した。
「これから何度も友姫から模擬戦の申請がくるかもね」
「止めて下さいよ・・・本当になりそうで怖いんですから・・・」
スヴェンの言葉にげんなりとしてしまう龍護。
スヴェン本人は冗談で言ったのだが龍護にとってはフラグでしか無かった。
「リューゴ!」
後ろから呼ばれ、振り向くと普段着に着替えた友姫がいた。
その格好はベージュのショートパンツにピンクのキャミソールと、かなり露出度が高い服だった。
「おまっ・・・!なんちゅう格好だよ!?」
「Oh?ダメデシタ?」
自分の服を確かめる友姫。
あまりそのような服を人前で着ることに抵抗は無いようだ。
父親のスヴェンも似合っていると友姫を褒めていた。
「ソレデハリューゴ!let's playシマショー!」
「分かったから手ぇ引っ張るなー!」
龍護の声を無視して自分の部屋に連れて行く友姫であった。
◇◆◇◆◇◆
自分の部屋に龍護を招き入れた友姫。
中にはかなりのテレビゲームのハードやソフトが所狭しと積まれ、並んでいた。
・・・わるく言うと少し散らかってるようにも見える。
「うわっ!初代プレステもあるじゃん!すげー!って、こっちはPCエンジン!?相当古いの持ってるな~・・・」
友姫の部屋には古いものでもう販売どころか生産も止まったゲーム機から今話題のゲーム機まで全てが揃っていた。
「my fatherガニホンノゲームガスキデ、collectionシテイルンデスヨ。ソシテソレラハ、ワタシノヘヤニアツマルンデス」
「にしてもマニアック過ぎだろ・・・このソフトなんか俺、失くした奴だぞ・・・」
「タメシニtryシテミル?」
「いいの?じゃあ対戦しようぜ!」
「of course!battleナラ、テカゲンNothingデスヨ!」
2人でコントローラーを持って対戦ゲームを始める。
ハードは【fii】
ソフトは【大決戦スマッシュスターズ】
龍護は青髪の騎士を選び、友姫は配管工の髭の生えた赤い服の男性を選ぶ。
細かい設定を施してゲームが始まった。
◇◆◇◆◇◆
「Yeah!!!マタワタシノVictoryデス!」
「あーもー!もう1回!次は負けねぇ!」
現在、友姫が8連勝中。
龍護も中々だが友姫は青髪の騎士の弱点を見抜き、そこを重点的に攻撃していた。
そして再び青髪の騎士が画面外に吹き飛ばされる。
「友姫強くね?俺もこれやってるけど適わねぇってどんだけやり込んでんだよ?」
「ウーン・・・タシカ・・・」
友姫が操作してプレイ時間を確かめる。
そこには・・・
9999:99:99と表示があった。
つまり・・・カンストしている。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・は?カンスト?」
「デスネ・・・ワタシモイマシリマシタ」
龍護もこのゲームはしていたが127:58:12。
友姫は想像を超える程、圧倒的なゲーマーだった。
「これ・・・勝てねぇのも頷けるわ・・・」
「ホカノgameモtryシテミル?」
次に友姫が持って来たのはリズムゲーム。
専用のコントローラーがあってパネルが8枚平行に並んでいる。
ソフトの難易度をハードにして挑戦すると龍護はパーフェクトを取った。
「Amazing!スゴイヨリューゴ!」
「なぜか音ゲーは出来るんだよな・・・」
コレハワタシモマケラレマセン!と意気込んだ友姫。
龍護と同じ曲で同じ難易度に設定し、ゲームを始めるもミスを10回もしてしまい、龍護の勝利となった。
「ココガdifficultデスヨ~・・・」
友姫が言ってるのはパネルを全て同時に押す場面。
友姫の指は短く、全てを押したくても出来ないのだ。
「確か・・・中には自分で専用の補助具を作ってやってる奴もいたな・・・」
龍護が言うようにプラスチックの板を切ってテープ等で固定したものを指に着けて延長し、その状態でゲームしてる人も龍護は見ているのを思い出していた。
「really!?ソレナラワタシデモデキル!?」
「多分な」
友姫はコンドツクッテミル!と言ってリズムゲームは終わりとなった。
その後も2人は色んなゲームを楽しんでいた。
◇◆◇◆◇◆
すっかり遊び込んでしまった2人。
外はもう暗くなっていた。
「あ~・・・暗くなっちまったな・・・」
「リューゴ、モウカエルノ?」
友姫が少し寂しそうに龍護を見る。
「まぁ、姉貴が待ってるからな・・・」
すると廊下からスヴェンが現れる。
「龍護君、今日は遅いから泊まっていくかい?」
「はいっ!?」
スヴェンからの突然の提案に龍護は戸惑った。
「good idea!ソウデス!リューゴ、トマッテイキマショー!」
「いやいやいや!さすがにそれは無理が・・・」
「実は2人が仲良く遊んでるのを君の姉に言ったら『帰りが遅くなるなら泊まって明日帰って来ていいよって伝えて下さい』と言っていてね」
(あの姉貴・・・ぜってぇ楽しんでやがる・・・)
龍護は悔しいが家でニヤニヤしている姉の様子が簡単に想像出来てしまった。
時計を見ると既に20:00を超えている。
仕方ないと思い、今日は泊まることにした。
◇◆◇◆◇◆
今、龍護は1人で客室にいる。
友姫は風呂。
友姫の両親は食事の準備をしている。
龍護は部屋で寝転がり、自分のスマホの画面を見ていた。
(てかなんで初対面の人を泊められるんだよ・・・あ~でも外国の文化ならとうぜ・・・いやいや・・・それは無いな・・・)
何せ友姫の親と自分は今日会ったばかり。
なぜ初対面なのに泊めてくれたのか・・・
恐らくは友姫の友人であり、外も暗くなっているから危険なのも理由なのだろうと思ったが妙に勘繰ってしまう龍護。
だが郷に入りては郷に従えとも言う。
この家のしきたりもあると思い、考えるのを止めた。
友姫が先程の色違いの服を着て、タオルを首に掛買った状態で部屋に入って来る。
空いたようで龍護に入浴することを勧めた。
◇◆◇◆◇◆
風呂場に着いて服を脱ぐ。
ドアを開けるとかなり広い風呂がそこにあった。
旅館にでも来てしまったか?と勘違いしてしまう程の広さ。
そして誰もいない為、足をゆったりと伸ばせる。
先にかけ湯をしてから湯船に浸かった。
温度の表示を見ると41℃と丁度いい。
「あ゛~暖まる~!」
1人風呂に浸かりながら天井を見上げた。
(本当・・・住む世界が違うよな・・・)
生活の質を自分の家と比べてしまう。
比べるのを止めようと龍護はバシャッ!と風呂の湯を自分の顔に掛けた。
(そろそろ洗うか・・・)
そう思って立ち上がろうとした時だった。
ガラッ!と勢いよく扉が開きスヴェンが入って来る。
「背中を流そう!龍護君!」
「アンタ何やってんだあああぁぁぁぁああああ!?!?!?」
突然の出来事にすぐに風呂に戻る龍護。
「いいではないか!裸の付き合いもあるだろうし!」
「いや会ってまだ数時間しか経ってねぇから!?」
「私がOKなら問題なし!」
「横暴だなおい!?」
龍護の戸惑いをスルーし、横で風呂に浸かり始めたスヴェン。
やはり日本の温泉はいい・・・と呟いた。
「龍護。背中を流そう」
「いやだから・・・」
「少し話したい事もあったからね」
「?」
少しだけ神妙な表情になった事に疑問を持ったが龍護は洗い場に向かい、椅子に座る。
スヴェンはその後に座り、龍護の背中を洗い出した。
「龍護君。先程も言ったが友姫と友人になってくれて本当にありがとう」
「まぁ、俺は娘さんに振り回されてる立場っスけどね」
龍護の冗談混じりの言葉にスヴェンが軽く笑った。
「実を言うとね・・・友姫は最近まで無理をしていたんじゃないか?って思ったんだ」
「無理を?」
「私は企業の社長・・・そして友姫はその娘・・・となると様々な企業が私の元に来るんだ・・・恐らく、私の後釜を狙っているんだろう」
「・・・」
「友姫はいい子だ・・・元気で弱音を吐かず、曲がったことが嫌いで、誰に対しても優しかった・・・でも友姫が高校になってすぐに何人もの企業のお偉いさんが訪ねてきて私と友好的な関係を結ぼうとしてきた。それを私は全て断った。友姫もうんざりしていたんだよ・・・」
「・・・」
スヴェンの言葉に無言で聞き続ける龍護。
「だから私は日本に来た。そしてセキュリティの高いあの国立喜龍学園に通わせたんだ。優しい男子生徒に出会ったって聞いた時は驚いたよ。友姫が楽しそうに笑っていたんだ。でも・・・君にはすまないが、私は疑っていた。また同じ事の繰り返しなのではないか・・・と、だが違った。友姫は食事の時もずっと君の話だ。だから私は今日、君を私の家に招いた。お礼を言いたくてね」
洗い終わってスヴェンは盥の湯を龍護の背中に掛ける。
「龍護君」
龍護はスヴェンに向き直る。
「世間知らずな娘だが、これからも仲良くしてやってくれ」
スヴェンはそう言って深々と頭を下げた。
そして龍護の答えも決まっていた。
「ま、友人ですから、学園や外関係無く仲良くしますよ」
スヴェンと龍護はお互いに信頼を結び、風呂を上がった。
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