第4話 面倒事

現在、龍護、ラジネス、雫、白、野武は揃って学園を出ていた。

今日の授業を終え放課後になり、帰ろうとした時、野武が4人にゲームセンターに行こうと提案して今に至る。

交差点の先に目的地が見えた。

ゲームセンターから学園までは徒歩で10分程度。

夏季休暇等の長期休暇になると喜龍学園の生徒達で近くのゲームセンターやカラオケは埋め尽くされる。

ゲームセンターの中はそこそこ空いていた。


「さーて、何しよっかな~!」

「やっぱ身体動かすゲームでしょ!」

「メダルゲーム・・・」

「crane gameガイイデス!」

「お前ら纏まりねぇな・・・」


結局それぞれで好きなゲームをしようという事になり白はパンチングマシン等、実際に身体を動かすエリアに、雫はコインを落とすコインゲームが集まるエリアに、野武はレースゲームのあるエリアに、ラジネスはクレーンゲームのあるエリアに向かった。


「適当に回るか・・・」


龍護も様々な場所を渡り、興味が惹かれたらそのゲームをする事にした。



◇◆◇◆◇◆



現在、龍護は体感型ゲームのエリアにいる。


「にしても凄いな・・・ん?あれは・・・」


龍護の視線の先にはグローブを手に嵌めて構える白がいた。

パンチングマシンをしているようだ。


「りゃあああぁぁぁぁあああ!!!!!!!!」


バチーン!!!!!!!!


凄まじい音を立ててサンドバッグが倒れる。

数値が表示された。


135kg


その数値を遠目で見ていた龍護は驚いた。

機種によって異なるがとあるパンチングマシンでの平均は


中学生位 90~110


高校生位 100~120


成人男性 100~140


となっている。

つまり白は男子高校生や成人男性の数値を出してしまったのだ。

ふ~、と息を付いて額の汗を拭う白。

本人も満足したようだ。

ゲームを終えて振り向き、龍護と目が合った。


「覗き見って・・・趣味悪いわよ」

「たまたまだ・・・にしてもすげぇな・・・」

「でしょ?ダッチーもやってみたら?」

「だな」


龍護が鞄を下ろして100円を1枚入れる。

グローブをして機械の準備が整い、思い切り殴った。

バコーン!!!!と音が響き、数値が表示される。


120kg


白より15kg少ない結果となった。

そんな龍護を見てプッ!と吹く白。


「ダッサ!私より弱いって」

「た・・・たまたまだ・・・」


龍護はすぐに鞄を持ち、その場を後にした。



◇◆◇◆◇◆



次に来たのはレースゲームエリア。

レースゲームとはいえ、その種類は豊富だ。

中には馬を模して、実際に跨って行うレースゲームや自転車の形のレースゲーム等様々だ。


「おっしゃー!」


声がしてそちらを見ると野武が車のレースゲームで盛り上がっていた。

ステージは4ステージあり、今は3ステージ目のロード画面となっている。


「調子いいじゃん」

「お?龍護じゃん!乱入すっか?」

「この後でいい」

「オッケ!」


レースが始まった。

今野武が使っているレースゲームの筐体はマニュアル車のゲームとなっている。

アクセルを踏み込んでスピードを上げた。

メーターの針が赤い所まで行った途端にシフトを2から3に上げ、速度を上げる。

カーブに差し掛かった。

その瞬間、シフトを2に戻してブレーキを踏みながら進む。

ドリフトだ。

その後、再び真っ直ぐの道になるとすぐにシフトを上げた。

中々の腕前だ。

その証拠にシフトを変える際も位置を覚えているのかシフトレバーを見ずに変えている。

余裕で1位となり、2位のCPUとの距離が遠ざかる。

遂にゴールして2位とのタイム差は5秒となっていた。


「あ~・・・6(秒差)いけなかったか・・・龍護、横空いてるから早くや」

「ワリ・・・他行くわ・・・」


あの腕を見て到底敵わないと悟り、レースゲームエリアを後にした。



◇◆◇◆◇◆



次に来たのはコインゲームエリア。

手前のコインゲームに雫は座っていた。

コインの枚数を見ると2000枚を超えている。

チョンチョンと肩をつつき、雫を気付かせる。


「龍護?」

「これ・・・元何?」

「元?100」


つまり雫は短時間で100枚を20倍の2000枚に増やしていた。


「いや・・・どうやったらここまでいくんだよ?」

「そんなに難しくないよ・・・あの穴に入れたらルーレットが始まる・・・その時にボタンを押して止めるんだけど数秒間見たら絵柄が変わる規則が観える・・・そのタイミングになったら押すってだけ・・・」

「いや簡単そうに説明するなって・・・絵柄だってコンマ5か1で変わるだろ・・・」

「・・・そう?」


キョトンと首を傾げる雫。

試しにやってみてと龍護が雫を急かし、雫はコインを穴に入れる。

ルーレットが始まって雫は数秒間、その画面を眺めていた。

途端にタンタンタンと軽めにボタンを叩き絵柄を止める。


777


雫は見事に絵柄を揃えた。

だが次の瞬間、巨大なゲーム筐体の全体が暗くなる。


「ジャックポット・・・」


雫の眠そうな目が強ばる。

それは雫が本気を出す現れだ。

このコインゲームはジャックポットと呼ばれるモードがあり、画面内にルーレットと銃の様な標準が表示される。

それをボタンで撃ち、見事揃えられればそのモードで成功とみなされ、ゲーム筐体の中心にある巨大な画面に表示されている枚数がその当てた者に支払われるのだ。

因みに現在の画面の枚数は24628枚。

つまり成功すれば雫は24628枚のコインを貰うことが出来る。

さすがに見ていただけの龍護も緊張している。

ルーレットが始まる。

雫は人差し指を使ってトントントンとリズム良くゲーム筐体を叩く。

どうやらルーレットと標準が合うタイミングを探っているようだ。

何度も筐体をつつく音のタイミングが変わる。

一通り終えてフー・・・と深呼吸を交え、ボタンを叩いた。


タン・・・・・・タタン!


少し間を置いてボタンを3回叩く。


998


数字は揃っていない。

キュッ・・・と悔しそうに右手を握り締める。

だが画面に変化が現れた。

どこからか女の子のキャラクターが現れ、8をハンマーで叩いたのだ。


「・・・まだいける・・・!!!!」


雫はボタンを絶え間なく叩き続ける。

その間、画面は8と9の激しい鬩ぎ合いが行われている。


そして


999


数字が揃った。


「やった・・・・・・!」


フー・・・と成功して脱力してしまう雫。

その後、雫の席でジャラジャラとコインがひっきりなしに落ちてきていた。


「他行くからじゃあな」

「うん」


龍護はその場を後にした。



◇◆◇◆◇◆



次はクレーンゲームエリアに来ていた。


「アッ!リューゴ!コッチキテ!」


ラジネスがピョンピョン跳ねながら龍護を呼ぶ。

どうやら取って欲しい景品があるようだ。

その景品を見るとゲームに出てくるキャラクターのようでラジネスが使っていたキャラクターだ。

状態は箱に入って横に穴が空いている状態となっている。


「・・・取ってみるか」


龍護は100円硬貨を取り出して投入口に入れると軽快な音楽が流れ始め、ゲームがスタートした。

横のボタンで景品の中心とクレーン本体の中心を合わせる。

そして縦のボタンを押してクレーンは奥へと進んで行く。

龍護が丁度いいかな?と思い、クレーンを止めるとクレーンが下がり景品に接触する。

アームは見事、穴に入って景品を持ち上げた。

龍護の横にいるラジネスも固唾を呑んでクレーンを見守っている。

クレーンが排出口に近付いた時だった。

景品が落ちてしまい、箱の1角が飛び出た状態になる。

横にいたラジネスも軽く落ち込んでいた。

だが龍護はその状態を確認している。


(この状態なら角押しでいけるか・・・?)


角押し

クレーンゲームの技の1つではみ出た箱の角をアームで押し込んで景品を取るという方法だ。


試しに・・・ともう1度100円を入れ、ゲームを始める。


因みにクレーンゲームのアームが広がる限界での爪の位置は、最初のアームが閉じてる状態で1番外側にあるアームの角とほぼ同じになっていて、その角に合わせた時にほぼその真下に爪があるようになっている。


その事を知っている龍護は閉じてる状態のクレーンアームの1番外側の角に箱の角を合わせる。

アームが開き、案の定その真下に爪が来た。

アームの爪は箱の角に当たり、そのまま押し込んでいく。

遂にバランスが崩れ、景品を手に入れた。


「ほら」


龍護が景品を取り出してラジネスに渡す。


「thank you!」


ラジネスは嬉しそうにその景品を抱き締めていた。

ふと、スマホの時計を見ると18:00。

そろそろ帰るか・・・と考え、無料通話アプリを開き、グループチャットに『そろそろ帰る』とメッセージを送る。

するとその直後に


『もうか』

『入口で待ってて』

『コイン預けてくる』


龍護はメッセージを確認してゲームセンターの横でラジネスと待っていた。



◇◆◇◆◇◆



数分後に漸く全員が集まり、帰ろうとした時だ。


「おっ!可愛い子達が3人もいる♪」


向こうからピアスやサングラス、刺青等をそれぞれがしているガラの悪い男が3人こちらに近付いて来ていた。

ラジネス達は一気に機嫌が悪くなり、男達を睨んでいる。


「何アンタら、私達今から帰るんだけど?」

「いやいや、帰るのはまだ早い。俺達と面白れぇ事しようや?そのガキ達に比べたら俺達と遊ぶ方がもっと面し────」

「おい、お前らさっさと行こうぜ?」


龍護が男の言葉を遮って来た道を帰ろうとする。


「おい待てよ。何カッコつけてんだ?あ?」


男達の1人が目の前に回り込んで来て龍護にガンを飛ばす。

一歩間違えれば一触即発の雰囲気。

そこにリーダー的な男が割って入る。


「まぁ落ち着けよ?兄ちゃんもな?」


抑えられた男はチッ、と舌打ちして龍護から離れる。


「中々の度胸だ。どうだ?どこか人気の無い所で話しようや?アンタらもコイツの連れだろ?なら一緒に話しようぜ?」


碌でもない事になると分かっていながらも龍護達は男達に囲まれて人気の無い場所に向かった。



◇◆◇◆◇◆



人気の無い所”行き止まり”に着いた途端に龍護達は男達から離れる。


「おいおい落ち着けよ?まだ何もしてねぇぞ?」

「出口を塞いでおいてよくそんな事が言えるな?」


龍護の言う通り道に面している方は男達によって塞がれている。

恐らく1人は監視役として置いておき、2人で龍護と野武を退けた後にラジネス、白、雫で楽しむ予定なのだろう。

少し短気なのか先程龍護に突っかかった男がメリケンサックをポケットから出して手で握る。

既に話す余地は見えない。


「まぁ、黙って殴られてくれや」


メリケンサックを右手で握った男が先制して龍護に殴り掛かる。

だがその右手は龍護に当たる事は無かった。

逆に男の顔が両足によって反り返り、後ろに吹き飛ぶ。


「へ?」


吹き飛んだ男は何が起こったか分からないようで頭に疑問符を浮かべている。

そして龍護の前にはラジネスが立っていた。

その表情はかなりの怒りが見える。


「ワタシ・・・Unfair imitation卑怯な真似ハキライ・・・アナタ、ソノフタリノReaderリーダーデショ?ナラ・・・」


スッ・・・と右足を軽く出し、肘を曲げた状態で両拳は顔の近くに寄せる。


「マンツーマンデmatch勝負シマショウ」


リーダー的な男の表情が変わり、笑みを浮かべる。


「ほぅ・・・中々やるな嬢ちゃん・・・いいぜ?相手してやるよ」


男はすぐにラジネスに向かって殴り掛かる。

だがラジネスはそれをギリギリで躱し続けていた。


完全に見切っている。


基本、このような格闘で初心者は相手の拳が自分に向かってくると危険と感じて咄嗟に目を閉じてしまう。

その為相手の拳が当たってしまうのだ。

まぁ、他には運動神経等にもよると思うが・・・

だがラジネスはそれをしていない。

格闘に関しての基礎が出来ていているのだ。

自分の拳が当たらない事に苛立ちが募ってきたのか、男は足を横に振る。

それもラジネスはバックステップで攻撃圏外に出ていた。

そして男は息を切らしているのに対し、ラジネスは呼吸が整っている。


Do you still do itまだやる?」

「の野郎・・・」


男がポケットに手を入れながら近付いてくる。

すると突然駆けてきた。

その手には小型のナイフ。

だがラジネスは身体を少し右に傾け、ナイフの軌道上から外す。

そして左手で男の右腕の裾を掴み、右手で襟元を掴むと体制を低くして相手に背を向けると男の身体が中に浮いた。


「へ?」

「らあああぁぁぁぁあああッッッ!!!!!!!!」


男が背中から思い切り地面に叩き付けられる。

見事な背負い投げだった。


「「・・・」」


2人の男はその様子を見てポカーンとしている。

そして投げられた男もコヒュー・・・コヒュー・・・と辛うじて息はしていた。


「君達!!!!何をしている!!!!」


1人の女性の警官が来ていた。

マズいと感じたのか1人は近くにあったゴミ箱を蹴飛ばして女性警官をビビらせたスキを突き、もう1人は倒された男を抱えて逃げていった。


「ねぇ・・・私達も逃げた方が・・・」

「心配ねぇよ」


え?と白は龍護の言葉に疑問を感じていたがそれはすぐに解決する。

女性の警官が歪み始め、消滅したのだ。

龍護の闇属性の幻覚だ。


「あ~・・・そういえば龍護って闇属性持ってたんだっけ・・・さすがSランク」

「いや、それよりもラジネスの方がありえねぇって・・・」


体格差はかなりあった。

だがラジネスには関係なく、男の投げたのだ。


「確かに・・・友姫ちゃんって何かやってた?」

「ワタシ?karateトカクトーギ」

「・・・そりゃ簡単に勝てるし相手も投げられる訳だ・・・」


ラジネスの強さに納得してしまう4人であった。

その後5人は安全に帰路に着き、それぞれの家へ帰っていった。

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