第3話友姫・S・ラジネス
「ハアアァァァァアアア!?!?!?」
突然の事に立ち上がってしまう龍護。
そして当然、友姫・S・ラジネスは龍護に気が付いた。
「Oh!キノウノヤサシキ
「おや、奪木君、ラジネスさんと知り合いだったんですか?」
「あぁ、いえ・・・昨日この学園の行き方を教えたばかりでして・・・」
「なら丁度いいです。奪木君、放課後でいいから彼女にこの学園内を案内してあげて下さい」
「え゙・・・!?」
「Oh!
ラジネスからの信頼を得たと同時にクラスの男子生徒から嫉妬の眼差しで見られた龍護であった。
◇◆◇◆◇◆
放課後になり、友姫・S・ラジネスと龍護が校内を歩いている。
龍護はその間に校内の説明をしていた。
「最後に・・・ここが食堂。買う時はそこの券売機で買いたいのを選んで買ってな」
「ok」
「ハァ・・・ったくなんでよりにもよってあのクラスなんだよ・・・」
「ワタシトイッショ
「いや・・・というのも・・・」
チラッと龍護が周りに視線を向ける。
すると周りにいた生徒達が不意に目を反らした。
「ハァ・・・」
「ム~!リューゴ、サッキカラ
「そうは言ってもな・・・」
周りの視線が気になるのだ。
それもそうだろう。
突然現れた美少女な転校生と2人で歩いているのだ。
周りからの視線がグサグサと刺さる。
「っと、これで全体的には紹介した。後は分からなくなったら聞いてくれ」
「thank you」
2人が家に帰る為に玄関に向かい、靴を履き替える。
ふと龍護はラジネスの家名に心当たりがあった。
「・・・なぁ、お前の親ってなんかしてる?」
「why?ドウシマシタ
「まぁ、なんだ・・・ラジネスって家名・・・どこかで聞いた事あるからさ・・・」
交差点に差し掛かり、信号が赤になった為、立ち止まる。
その時、ラジネスがビルの電子掲示板に指を差す。
そこには《ラジネスカンパニー》という名前が表示されていた。
「アレ、ワタシノ
「へー、道理で家名に聞き覚えが・・・・・・・・・・・・え?」
「エ?」
「お前の・・・親の会社って言った・・・?」
「ハイ。ソウイイマシタ」
「って事は・・・お前、社長の娘!?」
「
マジかよ・・・と龍護が天を仰ぐ。
となると昨日のお連れの人とは・・・
「まさか・・・昨日の連れって・・・」
「yes!
「今すぐ電話使え!!!!」
ラジネスが出したスマートフォンで護衛人に電話を掛けさせた。
繋がったようでラジネスが話している。
それを龍護が借りて電話をした。
「あの~・・・昨日そちらの娘さんを学園まで連れて行ったクラスメイトの龍護です」
『そうでしたか、話は友姫様から聞いておりますよ。態々ありがとうございます』
「その・・・先程そちらの社長の娘さんと知りまして心配してないかな~と思いまして電話を借りてます」
『御親切にありがとうございます。それとお言葉でしたら直接会って伺いたいと思いまして・・・』
「いや、さすがに本人に会うのは・・・」
『と言いましても・・・』
「え?」
龍護が疑問に思って振り向く。
そこには黒スーツとサングラスを身に纏った男女2人が立っていた。
そして女性の方は電話を耳に当てている。
「既にお迎えにあがっていました・・・ので・・・」
気不味い出会い方をした龍護と、迎えが来てはしゃいでいるラジネスだった。
◇◆◇◆◇◆
「あ~疲れた・・・」
自分の部屋に入るなり、龍護はベッドに身を投げる。
龍護は護衛と会った際にラジネスの家に招待されたのだが本人は断ったのだ。
その際に護衛は名刺を渡し、ラジネスを乗せて帰っていった。
名刺には【間宮美紅】と書かれている。
恐らくあの護衛の名前だろう。
その名刺を龍護は寝そべりながら眺めている。
「なんでそんな奴が・・・」
龍護はそう呟きながら眠りについた。
◇◆◇◆◇◆
翌日。
龍護は登校途中にラジネスと会った。
お互いに軽い挨拶をして歩き出す。
「ン~!
「まぁ、4月だからな・・・段々暑くなるぞ?」
「・・・
ラジネスはジト目になりながらササッ!と龍護から距離を取った。
「・・・?なんだよ?」
「イマ、リューゴハ
「?まぁそうだな日本の気候ならそうなるぞ?」
「ツマリ
「待て待て待て!?どう解釈したらそうなる!?」
「リューゴノ
「完っ全にラジネスの主観じゃねぇか!」
ジョーダンデスヨーとニヤニヤした顔で龍護の横を通り過ぎる。
ったく・・・と龍護は頭を乱暴に掻いてラジネスの後を追う形で登校した。
◇◆◇◆◇◆
校内に入って上履きに履き替えるも龍護は居心地を悪くしていた。
周りからの視線だ。
それもそうだろう。
昨日入ったばかりのラジネスを彼等は知らない。
そしてラジネスは例に漏れずに美少女の類に入る。
そんな女子生徒と一緒に歩けばほぼ必ず横で歩いている龍護にも視線が注がれていた。
『ねぇ、あの子誰?』、『ヤバッ・・・凄い美少女・・・』、『転校生かな?』、『てか横にいる男子って1年の奪木でしょ?』、『あの野郎・・・Sランクをいい事に上級生を差し置いてあんな子と2人で登校しやがって・・・』、『とうせ媚び売って仲良くしてもらってんだろ』
様々な声がして若干龍護もイライラしていた。
そして龍護が振り向いて彼等を見ると向こうは途端に視線を逸らす。
ハァ・・・と心の中でため息を付く。
「ドウシタノ?リューゴ」
振り向くとラジネスの顔がかなり近い位置にあった。
その顔は龍護を本当に心配している顔だ。
「・・・何でもねぇよ・・・」
ぶっきらぼうに返して教室に向かう。
「おっ!噂の2人が来た!」
教室に入って早々、白が2人をからかう。
「噂って・・・どんな噂だよ」
「『社長の娘を誑かした変態男子生徒』や『Sランクの媚び売り生徒』・・・『無気力生徒』」
「ひでぇ言われようだな!?てか最後のってお前の主観だろ!?」
白の言葉に項垂れる龍護。
そのまま机に向かい、椅子に腰掛ける。
「うーす・・・ふぁ・・・寝不足だ」
「あれ?モブじゃん。今日はやけに遅いね?」
「ソシャゲのイベント始まってな・・・今ネットで荒れててそれ見てた」
「ふーん」
野武がチラッとイーラを見て龍護に視線を戻す。
すると次は物凄い速さでイーラを見た。
完全な二度見だ。
「おおっ!ラジネスさん!おはよう!」
「オハヨウデス!・・・エート・・・ア!モブサン!」
「野武だから!?」
ソウソウ!ソウデシタ~!と笑うラジネス。
チャイムが鳴り、席に着く。
今日の一時限目は物理学だ。
担当教師が入ってきて授業を始める。
龍護がノートを開いた時だった。
横からツンツンと肩をつつかれた。
ラジネスだ。
『どうした?』
『チョットココ・・・
龍護が見てみると前回の所だった。
後でノートを借りたいと野武に言って教師にバレないように丁寧に教える。
『ほら。分かったか?』
『thank you』
ラジネスの物理学の教科書を本人に返して野武にノートを移させてもらう。
ラジネスは特に物理が苦手なようだ。
その証拠にさっきから横でウーウー唸っている。
下手すれば頭から煙が出そうな勢いだ。
だが、次の瞬間
『プシュー・・・・・・』
横ではラジネスが背もたれに寄り掛かり、口から魂が出ていた。
ラジネス、完全轟沈。
(あ~あ・・・)
まぁ、分からなくもないな・・・と少し呆れながらもラジネスのノートを自分の机に持ってきて公式やアドバイスを書き込む。
龍護は生前で大学生の為、学園の勉強内容の9割は理解し切っていた。(残りの1割は魔法関連)
キーンコーンカーンコーン
チャイムが鳴り、生徒達が一斉に席を外す。
「おーいラジネス?」
「ダ・・・ダイジョービ・・・ワタシハマダ
そう言いながら魂がラジネスの中に吸い込まれた。
「ウー・・・
「友姫ちゃんって考えるの苦手って感じするよね~」
「確かに・・・」
龍護が次の科目を見てみると数学となっている。
その事をラジネスに伝えるとイーラは半泣き状態となった。
「なに追い討ち掛けてんのよ・・・」
「えと・・・ごめん」
休み時間も終わり、再び授業になる。
担当教師が入ってきて物理の授業を進めていく。
龍護がふと、横を見てみると苦い顔をしながらも必死にノートを取っているラジネスがいた。
どうもラジネスは頭で考えるのは苦手なようだ。
「それではここは・・・ラジネスさん」
「・・・え?」
「教科書12ページの問題を前に来て解いて下さい」
今龍護達は物理学の単位の穴埋めをやっている。
ラジネスはカチコチになりながらも前に出て解き始める。
と、ここでミスが現れた。
[時間] [秒] [ ]
[ ] [メートル] [m]
[質量] [ ] [kg]
[電流] [アンペア] [ ]
[温度] [ ] [ ]
[ ] [モル] [mol]
[光度] [カンデラ] [ ]
これを穴埋めすると
[時間] [秒] [s]
[長さ] [メートル] [m]
[質量] [キログラム] [kg]
[電流] [アンペア] [A]
[温度] [ケルビン] [K]
[物質量] [モル] [mol]
[光度] [カンデラ] [cd]
となる。
だがラジネスは
[時間] [秒] [s]
[距離] [メートル] [m]
[質量] [キログラム] [kg]
[電流] [アンペア] [A]
[温度] [ドシー] [℃]
[密度] [モル] [mol]
[光度] [カンデラ] [kd]
としてしまった。
記号や単位が部分的に合わなくなる。
教師に違う事を指摘され、アワアワと慌て出したラジネス。
教師はラジネスを席に返して龍護を呼び出す。
仕方なく龍護は前に出て問題を解いた。
正解して元の席に戻る龍護。
よく見るとラジネスはシュンとしていた。
仕方ないという意味を込めて軽くポンとラジネスの肩を叩く。
その後も滞りなく授業は進んだ。
◇◆◇◆◇◆
チャイムが鳴り、物理担当の教師が課題を言い渡し教室を出た。
それと同時にラジネスが机に突っ伏す。
「・・・ダメだこりゃ・・・」
「ウウゥ・・・」
雫は冗談で生存確認の為にツンツンとラジネスをつつく。
イキテルヨ~・・・と涙目でラジネスは答えた。
「にしてもこんなに勉強が苦手なのになんで友姫ちゃんの親ってここに入れたんだろ?」
白の疑問に3人もそういえば・・・と考える。
「トイウヨリワタシハ
「そうなんだ・・・そういえば友姫ちゃんって何属性の魔法使えるの?」
「エート・・・
「へ~5属性も・・・・・・って!?えっ!?ちょっ、ちょっと待って!?5属性使えるって全国で8人位しかいなかったはずよ!?」
ラジネスの発言に白が動揺して声を荒らげてしまう。
それが聞こえてしまい、教室内がざわめいた。
『聞いた?今5属性使えるって・・・』、『マジかよ・・・』、『あの転校生すげぇ・・・』
白や周りの生徒が驚くのにも理由がある。
Sランクのみの人は世界中を集めると約20人程度。
現在5つの属性(属性の内容は問わない)を使えるのは全世界で数えて6~8人程度。
だがそれは全ランクを含めた数字。
その中で魔法適性がSランクなのはまた絞られ、3人となってしまう。
以前は極めて珍しい全属性持ちが存在していたが既に亡くなっていて現時点での属性最高所持数はラジネスのように5属性となっていた。
つまり友姫・S・ラジネスは数兆分の一に入れる才能の持ち主であり、かなり貴重で有力な存在となっているのだ。
そんなラジネスの横でホッとする龍護。
それもそうだろう。
これが学園全体に知られれば自分の存在は少しは薄れる。
面倒事に巻き込まれる心配も減るのだ。
ラジネスの貴重さを知った白と雫、野武は目を輝かせていた。
「凄い・・・私でも2属性なのに・・・」
「・・・私も」
「俺は3だな・・・確か龍護って」
「3」
龍護は闇と光、無の3属性しかないが魔法適性はSなので龍護もかなりの才能の持ち主である事に変わりは無い。
「前はダッチーが凄い注目浴びてたけど今となっては友姫ちゃんの方が優秀だね~」
「エヘへ~」
白に頭を撫でられ喜んでいるラジネス。
チャイムが鳴り、午前最後の授業が始まった。
◇◆◇◆◇◆
帰り道。
龍護とラジネスは2人で帰っていた。
「
「まさかラジネスがここまで勉強が苦手とは・・・」
「ワタシハ
「いや、それでも理論くらいはしっかりしとこうぜ?」
デスヨネ~・・・と苦い顔をする。
龍護は何かを思い出してスマホのスケジュール表を開く。
「やべ、ラジネス。今日はここでさよならだ」
「?
龍護は買い物をしなければならない事を思い出し、説明する。
そこでラジネスと龍護は別れ、ラジネスは家に、龍護は買い物へと向かった。
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