勇者、聖剣を手にする
167-①
リヴァルはゆっくりと真聖剣、ショウシン・ショウメイを手に取った。
〔ククク……そうだ、我と共に、我が主アルトの無念を晴らすのだ!! そうだな……まず手始めに、そこの男を惨殺しろ〕
魔王の鎧が武光を指差した。
「いいっ!?」
武光はコソコソと立ち位置を変えたが、鎧の指先は自動追尾装置でも付いてんのかと思うくらい、武光をピタリとマークし続けている。
「俺!? 何で俺!? 俺が何したっちゅうんじゃー!?」
〔フフフ……何も〕
「何も!?」
〔貴様の如き虫ケラなどどうでも良い……だが、貴様を殺せばそこの《役立たずのナマクラ》に、『主の生命を守れなかった』という、武具にとって最大の苦痛を与える事が出来る!!〕
「な、何やと……!!」
〔イットー・リョーダン……貴様は一度たりとも戦っていないのに、勇者の聖剣を
〔う……そ、それは……〕
〔アルト=アナザワルドによって木の杭に突き刺されたまま、誰の役にも立てずに朽ちる事を恐れたのであろう? 貴様の気持ち……同じ武具として、分からぬでもない……ある意味、貴様もあの男の被害者だ。それに……貴様がアルトの手に渡る前に、あの男に封じられていなければ、我とアルトが出会う事はなかっただろう……そこは感謝している〕
イットーの予想に反して、ショウシン・ショウメイの声は穏やかだったが、次の瞬間、それは
〔だが……それでも貴様はやり過ぎた!! 貴様の吐いた嘘が広がる度に……あの外道は勇者として
〔ほ、本当にすまない!! そんなつもりじゃ──〕
〔黙れ!!〕
イットーの言葉をショウシン・ショウメイは
〔教えてやろう……どうして
ショウシン・ショウメイは怒りと憎しみのこもった声で語る。
〔アスタトの巫女にボウシン家の末裔と………あの奸賊に陥れられたかつての仲間達の血を受け継ぐ者達がいたのはもちろん理由の一つだが、それよりも何よりも……貴様が……貴様が憎かったからだっっっ!! あの奸賊はもはや死に……我が直接手を下せるのは今や貴様しかおらぬ!!〕
〔ひっ!?〕
〔さぁ……殺れ、リヴァル=シューエン!!〕
「ちょっ、ヴァっさん!? う、嘘やろ!?」
リヴァルは真聖剣の言葉に従うかのように、ゆっくりとショウシン・ショウメイを頭上に振り上げ、そして…………切っ先を勢い良く床に突き立てた!!
〔なっ!?〕
「断るっっっ!! 私は……お前には従わない!!」
「ゔぁ……ヴァっさぁぁぁぁぁん!!」
〔な、何故だ!? お前は……アナザワルドの一族が、お前の祖先達にしてきた悪事を知って何とも思わないのかっっっ!!〕
「そんなわけないだろう。お前の話を聞いて、私は……激しい
リヴァルの言葉を聞いて、ミトは思わず
〔ならば……!!〕
「だがそれは……今に生きる罪無き人々を苦しめて良い理由にはならないっっっ!!」
〔奴らに罪が無いだと……奴らの祖先はアルトに生命を救ってもらっておきながら、アナザワルドの奸計によって、アルトが危機に陥った時に、自分達も弾圧に巻き込まれる事を恐れて、救いの手を差し伸べようとしなかった……だから子孫にその罪を
「もうやめろ……そうやって、お前が誰かを傷付ける
〔黙れ……黙れぇぇぇっ!!〕
「くっ!?」
「ヴァっさん!?」
ショウシン・ショウメイは魔王の鎧を操って、体当たりでリヴァルを弾き飛ばすと、床に刺さった自分を引き抜かせ、正眼に構えさせた。
それに対してリヴァルも獅子王鋼牙を正眼に構える。
「あくまで戦うと言うのなら……私は、勇者アルトと……お前の誇りを守る為に戦う!!」
リヴァルは剣を構えつつ、背後で俯くミトに呼びかけた。
「ミト姫様……共に戦いましょう!!」
「で、でも……私の一族は貴方の祖先にとんでもなく非道い事を……」
「そうですね……確かに、初代国王陛下は非道を行いましたし、偽物の勇者だったのかもしれません……でも、だからといって姫様の『民を救いたい』という想いまで偽物だとは私は思いません」
「リヴァル……」
「ヴァっさんの言う通りや、お前が今まで皆を救う為に頑張ってきた事は紛れも無い真実や、いつもみたいに胸張ってドーンとしてたらええねん!! ガタガタ抜かす奴は俺がシバき倒したる!!」
「た、武光……」
リヴァルと武光に励まされて、俯いていたミトは顔を上げた。
「そうね……行きましょう!! ショウシン・ショウメイを止めて、民に平和をもたらすのです!!」
「おうよ!!」
「ええ!!」
武光達は再び魔王の鎧に攻撃をしかけた。
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