斬られ役達、総攻撃をかける


 164-①


「光術……斬魔輝刃!!」


 リヴァルが魔王に向けて突進し、刀身に光を宿した獅子王鋼牙を真っ向から振り下ろすが、魔王は鋭い一撃を超スピードでかわし、瞬時にリヴァルの背後に周り込んだ。


「フッ、遅……ぬうっ!?」


 背後に回り込んだ瞬間、兜の前後が逆になっている魔王の眼前にはリヴァルの左のてのひらがあった。


「光術……退魔光弾!!」

「チッ!!」


 リヴァルの左の掌から放たれた光弾を魔王は後方に跳躍して紙一重で回避した。流石のリヴァルも魔王の超スピードには追い付けていない。だが、リヴァルは相手の次の動きを予測する事で、スピードの差を補っていた。


「……逃がさん!!」


 そして、着地地点を予測していたヴァンプが真っ向から斬りかかる。着地の瞬間を狙われ、回避は無理と判断した魔王は、剣を頭上にかかげて崩山の一撃を止めた。


「ふん、人間如きが……!!」

「……ぐっ!? な、何という怪力だ!?」


 攻撃を受け止めた瞬間こそ片膝を着いたものの、魔王は即座にヴァンプの剛力を押し戻し始めた。


「ヴァンプさん、もう少しだけそのまま耐えてください!!」


 自分の腕力では、この隙に魔王に直接雷導針を打ち込もうとしても刺さらないと判断したリョエンは、二人の周囲をぐるりと一周しながら、テンガイを使って二人を囲むように、雷導針を次々と床に打ち込んだ。


〔ジュンビ カンリョウ〕

「よし、行くぞキサン!!」

「はいっ、リョエン兄さん!!」


 リョエンは黒い手袋を右手にはめて頭上に高々と掲げ、キサンは閉じた鉄扇の先端を魔王に向けた。


「喰らえ……雷術ッッッ……大雷蛇!!」

「ヴァンプさん、ちゃんと避けてくださいねー!? レイ・オブ・デストラクション!!」


 ヴァンプが横に跳躍して魔王から離れた瞬間、ボウシン兄妹は最大級の術を魔王に向けて放った。無数の稲妻を纏った極太の破壊光線が魔王に迫る。


「……ふん!!」


 魔王は迫る光線目掛けて、手にした剣を真っ直ぐに振り下ろした。

 破壊光線が巨大な岩にぶつかった川の流れのように二つに割れて魔王の両脇を通過し、魔王の背後の壁に直撃して爆発を起こした。

 爆炎を背に佇む魔王は、凄まじい威圧感を放っている。


「何て奴だ……私とキサンの全力の攻撃を……」

「う、嘘でしょー!?」

ひるんだらアカン!! 攻め続けろ!!」

「武光、行くわよっ!!」


 今度は武光とミトが魔王に左右から斬りかかる。


〔うおおおおおっ!!〕

〔ヒャッハーーーーー!!〕

〔ハァァァァッ!!〕


 イットー・リョーダンと魔穿鉄剣、そしてカヤ・ビラキの刃が魔王に襲いかかるが、魔王は軽々と全ての斬撃をかわし、さばいた。


「この……野郎ッッッ!!」


“ガキンッッッ!!”


 武光が真っ向から振り下ろしたイットー・リョーダンと魔穿鉄剣を魔王が止めた。


「今やミト!!」

「ええ!! 秘剣……業火剣乱!!」

「……下らぬ!!」


 魔王は炎を纏ったカヤ・ビラキを振りかざして突進して来たミトに対し、左のてのひらを向け衝撃波を放った。


「キャァァァッ!?」

「ミト姫様ーーーーーぐうっっっ!?」


 ミトは、衝撃波によって弾き飛ばされ、危うく石壁に叩きつけられる所だったが、間一髪でダントが割って入り、自分の体をクッション代わりにしてミトを守った。


「ひ、姫様……ご無事ですか……ぐっ!?」

「だ、ダント!? 大丈夫!?」

「あ、あばらをやってしまったかもしれません……」

「くっ、ナジミさん……ダントの治療を頼みます!!」

「お任せください、姫様!!」


 ダントやナジミとのやり取りを聞いていた魔王はミトに問うた。


「姫様……だと? 貴様、もしやアナザワルドの血を継ぐ者か……?」


 魔王の問いに対し、ミトは仮面を投げ捨て、堂々と胸を張って答えた。


「いかにも!! 私の名は……アナザワルド王国第三王女、ミト=アナザワルド!! 初代国王にして、かつて魔王シンを倒した古の勇者、アルト=アナザワルドの血を受け継ぐ者として……再びお前を討つ!!」

「ふ……ふふ……ふはははははは!!」


 ミトの言葉を聞いた魔王は狂ったように笑い出した。


「な……何がおかしいというの!?」

「アルト=アナザワルドが……魔王を倒した古の勇者だと? …………笑わせるなァァァァァッ!!」

すきありぃぃぃっっっ!!」


“カキーーーーーンッッッ!!”


「どうや、このクソ魔お……グハッ!?」


 武光は、激昂げきこうする魔王の隙を突いて、背後からイットー・リョーダンで魔王の頭を逆転サヨナラ満塁ホームランしてやったものの、直後に裏拳でぶっ飛ばされ、背中から勢い良く石壁に叩きつけられた。


 首から上がすっ飛ばされたというのに、何事も無かったかのように魔王は続ける。



〔……良かろう、既に役者は揃っている……貴様らに教えてやろう、古の勇者と古の魔王の真実を!!〕

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