役者、揃う
163-①
魔王の首が……ポロリと落ちた。
あまりにも衝撃的な光景に固まる武光達と魔族の群れだったが、魔王は何事も無かったように、足元に転がる鉄仮面付きの兜を拾い上げ、胴体の上に載せた……前と後が逆だ。
そして……魔王が足下に落ちた兜を拾い上げようと上体を倒した際に、その場にいた全員が見てしまった。鎧の中が……何も無いがらんどうだという事を。
武光は悟った……何故目ん玉に雷導針がブッ刺さったはずなのにノーダメージだったのか。何故蹴りを入れた時に妙に軽く感じたのか。
ヨミは理解した。どうして魔王の心を読む事が出来なかったのか。只の金属の
「やれやれ……見られてしまったか……面倒だが、この部屋から全員生きて出すわけにはゆかなくなった……!!」
言うなり、魔王は玉座に立て掛けてあった剣を手に取り、近くに立っていた魔物の群れに襲い掛かった!!
「ま、魔王様!? 何を……ぎゃあっ!!」
「お、おやめ下さ……ぐああああっ!?」
「ひぃっ!? お、お助けを……ぎぇぇぇっ!!」
阿鼻叫喚の地獄絵図だった。五十体以上いる屈強な魔族達が次々と魔王の凶刃の前に斃れてゆく。
「こ……このままむざむざと殺されてたまるか!!」
「魔王だろうと構う事はねぇ!! 殺っちまえ!!」
「ぶち殺せぇぇぇぇぇっ!!」
魔物達が剣、槍、斧や金棒などの武器を手に魔王に襲いかかり、地術、水術、火術、風術、溶解液に毒の霧と、ありとあらゆる攻撃を魔王に対し繰り出すが、魔王はそれをものともせずに凄まじい勢いで魔物共を
謁見の間にいた魔物達は皆、魔王軍屈指の強者ばかりであったが、意識を取り戻したナジミが武光達の拘束を解くまでの、
武光達が拘束から逃れて立ち上がった時、謁見の間に残っていたのは武光達とヨミだけとなっていた。
眼前で繰り広げられた
「な、何でや……何で味方まで!? お前、何考えとんや!!」
「フフフ……慌てるな、もうすぐ役者が揃う。全てはそれからだ」
「役者……?」
その時、謁見の間が
「うわっ!? な、何や!?」
光が収まった時、そこには四人の人影があった。
「フフフ……来たか」
「あれは……っ!!」
「リヴァル戦士団、参上ッッッ!!」
リヴァル戦士団が あらわれた!
163-②
「ゔぁ……ヴァっさぁぁぁぁぁん!?」
リヴァルの姿を武光は思わず叫んだ。
さっきから背中のゾワゾワが止まらない、絶体絶命のピンチに救いの勇者が現れたのだ、叫ぶなと言う方が無理というものだ。
「武光殿、ご無事で!?」
「お、おう!!」
「良かった……見よう見まねで転移の術をやってみましたが上手くいったようです」
「ヴァっさんSUGEEEEE!?」
「さぁ武光殿、いつかの約束通り……共に力を合わせて魔王を討ち倒しましょう!!」
そう言って、リヴァルは自身の愛刀、獅子王鋼牙を正眼に構えた。
「魔王シンよ……貴様に苦しめられた人々の怒りと悲しみを思い知れ!! 生命に代えても貴様を倒し、全ての人々を恐怖と絶望から救ってみせる!!」
凡百の徒が発すれば、
「……魔王シン、貴様を討つ!!」
ヴァンプは吸命剣・崩山を背中の鞘から抜き、脇に構えた。
「バシッと決めちゃいましょー!!」
キサンは鉄扇をバサリと開くと、魔王に向けた。
「魔王の最期……しっかりと記録させて頂きます!!」
ダントは腰の剣を抜き、下段に構えた。
リヴァル戦士団の四人は大いに気炎を上げた。
「武光様、私達も行きましょう!!」
ナジミは胸の前で両の拳を強く握った。
「今こそ魔王を討ち、この国の民に平和と安寧をもたらすのです!!」
〔私もお供致します!!〕
ミトは宝剣カヤ・ビラキを胸の前で垂直に立てて構えた。
「行こう、武光君!!」
〔カットバセ アルジ!!〕
リョエンは機槍テンガイの穂先を魔王に向け、正眼に構えた。
〔ご主人様、あの魔王をギッタンギッタンのボッコボコのグッチャグチャにしてやりましょう!!〕
「よっしゃ!! 行くぞ……ん?」
武光は左手で魔穿鉄剣を鞘から抜き放ち、右手をイットー・リョーダンの
……イットー・リョーダンが震えている。武光は魔王から視線を離さないようにしつつ、イットーに小声で話しかけた。
「イットー、どないした!?」
〔僕は……僕はずっと夢見てたんだ、こうやって聖剣として勇者と共に、堂々と魔王に挑む日の事を……ッッッ!! 気が狂いそうになる程の長い時間ずっと……ずっと……もうそんな日は永久に訪れないと思っていた……それがようやく……っ!!〕
「イットーお前……泣いてんのか!?」
〔ば、バカ言うな!! まぁ、相棒が勇者じゃなくてビビリでヘタレの斬られ役なのが残念だけど……この際、
「へっ、よう言うわ。泣くんは皆で打ち上げする時まで取っとけ、俺とお前の一世一代の晴れ舞台……気ぃ引き締めろッッッ、本番や!!)
〔……応ッッッ!!〕
武光はイットー・リョーダンを腰の鞘からスラリと抜き放ち、血振りの要領で刀身に付いていた涙を振り払うと、切っ先をゆっくりと魔王シンへと向けた。
リヴァルのように格好良い
……こっちの方が自分らしい、武光は悪党っぽくニヤリと笑うと腹の底から声を出した。
「皆の者……
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