聖剣、真実を語る


 18-①


 金属同士が激しくぶつかる音が聞こえて来た……既に戦闘が始まっているのだ。


 (足止めたらあかん!! 前へ……ひたすら前へ!!)


 もはやヤケクソである。今、足を止めたら恐怖で動けなくなる……!!


 追いかけて来る恐怖から逃げる為に、武光は足を動かし続けた。何かもう前向きなのか後ろ向きなのか分からないが、少なくとも……体は前に向かっている


 武光は走りながら、頼みのつなである聖剣に話しかけた。


「頼むで聖剣……敵の大群を蹴散けちらしてくれよ」

〔…………無理だ〕

「はぁ!? お前約束が違──」

〔……そうじゃない。僕は……僕は本当は……勇者の聖剣なんかじゃないんだ!!〕


 衝撃の告白に、武光は思わず前につんのめってすっ転びそうになった。


「オイオイオイオイ!! 何やそれ聖剣ギャグか!? スベってんぞ!!」

〔いいや、ギャグでも冗談でもない〕

「お前、勇者の聖剣とちゃうんかい!?」

〔僕は……古の魔王討伐に向かう勇者の為に、当時最高の技術を持っていた刀鍛冶と、最高の魔術を持った魔術師によって生み出された〕

「ほんなら……」

〔でも……勇者アルトは僕を見るなり激怒して、僕をあの杭に突き刺したんだ。勇者が僕に付けた名前の本当の意味は『無敵の聖剣』なんかじゃない、本当の意味は古の言葉で……『出来損ないのなまくら』なんだ!!」

「お前……」

〔僕は……誰の役にも立てずに朽ちていく事を恐れて小さな嘘を吐いてしまった。その小さな嘘は、年月が経つごとに次第に大きくなっていった。でも……そうなると、今度は自分が無敵の聖剣なんかじゃなくて、『出来損ないのなまくら』だという事を知られる事が怖くなってしまった。真実が知られたらゴミのように捨てられてしまうんじゃないかと……〕


 黄金騎士団が額に角のようなこぶを持つ、身長150cm程の醜悪な怪物の群れと戦っているのが見えた。


 ……あれが《オーク》か。武光は息を呑んだ。


 黄金騎士団の近くにはジャイナと、そして……ナジミもいる。奮戦しているが、数の多さに少しずつ追い詰められているようだ。


〔だからゴメン……僕には、一振りで千の魔物を滅ぼす力なんて無いんだよ!!〕

「それでも……俺にはお前が必要や、約束を守る為に!!」

〔無理だよ……だって、僕は出来損ないの……〕

「違う!! 俺のおった世界では、お前の名前に込められた意味は『出来損ないのなまくら』なんかやない……『一撃で真っ二つ』や!!」

〔一撃で真っ二つ……?〕

「そや!! その名前を持つお前なら絶対にやれる、改めて頼む!! 俺に……力を貸してくれ!!」

〔……分かった、やってみる!!〕



「よっしゃ行くで!! 聖剣……《イットー・リョーダンッッッ!!》」



 武光は、地を蹴り、ナジミに背後から襲いかかろうとしているオークの背中目掛けてイットー・リョーダンで殴りかかった!!

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