番外編 一章0話
違和感。
最初に感じたのはそれだった。
息の通りがいつもと違う。それにどこか身体も重い。
目を開ける。世界がいつもとは違って見える。全体的に鮮やかに色づいているし、前よりも遠くまではっきり見えている。
身体を起こそうとして、いつもの身体とは完全に違うことに気がついた。
細い5本の指、つやつやした肌、長い脚。
手を握ったり、開いたり、腕を伸ばしたり、肩を回したり、色々と動かしてみる。意外と自由に動かせる。
とりあえず、立ち上がってみる。
「よっ…と」
少しふらついたものの、すぐに慣れて2本の足でまっすぐ立ちあがることができた。
キョロキョロと部屋を見回すと、壁に大きな鏡が見えた。
それに向かって動くと、中にいるヒトも同じ動きをする。
もしかして、これはわたし?
「わた…し…?」
思わず口から出たその音に驚いた。前にご主人さまがよく言っていた音。それが自分の口から出た。しかも今は意味を伴っている。
この姿、この声、わたしもヒトになったの?
だとしたら、とても嬉しい。今までご主人さまに言葉が伝わらなくてもどかしい思いをしたこともあるけど、それもなくなるし、ご主人さまともっといっぱい遊べるようになるだろうし、いいことがいっぱいある。
今すぐご主人さまと外を駆け回りたいくらい嬉しいけれど、それをしたらご主人さまを起こしてしまうので、やめておこう。寝てるところを起こして叱られた前例があるしね。
そうこうしているうちに、空が明るみはじめた。しばらくすればご主人さまも目を覚ますよね。
ご主人さまはわたしを見たときにどんな反応をしてくれるだろう。
そんなことをいろいろと考えながら、わたしはご主人さまが起きるのを待っていた。
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