第2章 Days in the park

2章 第1話

「今日からアニマルガール飼育科研修生として配属されました、今田 響(イマダ キョウ)です。よろしくお願いします」


パチパチパチ、とまばらに拍手が起こる。

今日から晴れて私はパークの職員だ…まだ見習いだけど。


「じゃあ、実際の業務の指導とかは、アスダくんにやってもらうから、何かわからないことがあったら彼に聞いてちょうだいね」


そう言ってナウさん…アニマルガール飼育員の中で1番偉い人だ…は壁に寄りかかって立っている男の人を指した。

アスダ、と呼ばれた人は、挨拶するように手の平をこちらへ向けた。


「明日田 早樹(アスダ サキ)です。よろしく!」

「よろしくお願いします」


私は頭を下げる。


「まあまあ、そんなかしこまらずに。フランクに行こうよ。あ、そういえば、キミもペットがフレンズ化したんだっけ?」

「あ、はい、そうですけど…キミ『も』…?」

「そ、キミ『も』。僕もね、最初は客だったんだよ。飼い猫を連れて来たらフレンズになってね、まあいろいろあってここで働いてるんだよ。驚いた?」


私以外にも同じ境遇の人がいたのか。 少しホッとする。


「あと1人、ペットがフレンズ化した職員がいるんだけど…あ、キノー!」

「は、はいっ!あ、こ、こんにちは…木乃 羽未(キノ ウミ)です…よろしくお願いします…」


キノさんは、それだけ言うと逃げるように去っていった。


「んー…キノは人付き合いが苦手でね…悪い奴じゃないんだけどね…ちなみに彼女が飼ってたのはニホンリスね」


そんなこんなで初日は自己紹介や設備の説明等で過ぎていった。


「アニマルガール飼育員として、最低限知っておかなければならないことを解説しよう!」


次の日、アスダさんはそう言って数冊の本を私の前に置いた。

そしてアスダさんは、フレンズとはサンドスターが動物およびその遺物に接触して誕生する存在であること、その身体はヒトとほぼ同じであること、各フレンズは生きるための「技」を持っていること、「技」を最大限まで高めたのを「野生解放」と呼ぶこと、生物学的な位置付け、法的、倫理的な問題などなど、様々な分野からアニマルガールについて解説してくれた。


「…とまあ、アニマルガールについてはこんな感じね。これは暗記だからねー。あ、そうだ。キョウくんの担当についてだけど…何か聞いてることある?」

「え…担当ですか?…いや、何も聞いてないです」

「それは好都合。じゃあ担当してもらう子を紹介するからついてきて」


担当はどんな子なんだろう。

哺乳類か爬虫類か、はたまた鳥か。

連れてこられたそこにいたのは。


「あ、ご主人さまー!」


ソラだった。


「担当してもらうのは、イエイヌのソラちゃんです!」


私は拍子抜けした。もちろん、ソラの担当が嫌だったわけではない。むしろ嬉しいくらいだ。でも、てっきり全くの他人を担当すると思っていたから驚いたのだ。


「キョウくんは元々飼い主だろ?動物の頃からソラちゃんを知ってるし、信頼関係もできてる。適任じゃん!ほら、挨拶挨拶」

「えっと…担当のイマダ キョウです…よろしく…?」

「よかった!これからもご主人さまと一緒にいられるね!」


そう言ってニコッと笑うソラ。笑顔が眩しい。


「さて、必要な知識も教えたし、担当も発表したし、あとは実践あるのみ!明日から頑張ろう!」


かくして、研修最初の2日は過ぎていったのであった。

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