2章 第2話

「明後日の夜、歓迎会を開こうかと思ってるんだけど…予定空いてる?」


飼育員として配属されてから1週間ほどして、ようやく雰囲気に馴染んで来た頃、アスダさんからこう誘われた。


「はい、空いてますよ」

「すみません、その日はちょっと用事が…」


前者は私の返事。後者は私の同期、砧くんの返事だ。

砧くんは私と同じ時期にパークに入り、部署は少し違うが同期である。真面目だが、あまり素性を明かしたがらないらしく、謎な面も多い…らしい。


「ありゃ、そうなの?実はもう予約しちゃったんだよなー…今からキャンセルってできるかな…じゃあ日にち決めたいから、都合のいい日を教えて?」

「わかりました。また、あとで確認します」


砧くんのその返事を聞き、アスダさんは仕事へと戻っていった。

さて、私も仕事に戻らなきゃ。


アニマルガール飼育員と言いつつも、実際の仕事は結構楽だ。多分、飼育対象と言葉の意思疎通ができるのが大きい。

様子に異変がないか、困っていることはないか等を聞いたりして、もしもそういうことがあれば解決をサポートするのが1番のメインだ。もちろん、身の回りとか、ヒト社会で生きていく術を教えるというのもあるが、その辺は臨機応変に対応する。


今はまだ研修期間なので、ひたすら勉強だ!

アスダさんから借りたアニマルガールについての本を読破せねば…




…おや、もうこんな時間か。そろそろ帰ってもいい時刻だよな…帰ろ。

荷物を取るため、職員用ロッカールームに向かう。

ロッカールームにつながる廊下に、人影が見える。あれは…砧くんかな?彼も帰るとこだろうか。

聞くところによると、彼はいつもいつのまにか帰宅しているという。これは…彼の知られざる一面を知るチャンスではないか?同期なのによく知らないというのも失礼だろうし。


まあそんなことを考えながら私はロッカールームの扉を開けた。


「あ…」


そこには砧くんの姿は無く、1人のアニマルガールが立っていただけだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る