2章 第11話
キョウがソラの病室を出た後、入れ違いになるようにカワラバトが入ってきた。
「ソラちゃん、今日こそ私はしいくいんさんを手に入れてみせる。止めたいなら止めてみて」
「ふーん…」
かなり挑戦的なカワラバトの言葉にもソラの心は動かない。
「本当にいいの?あんなにしいくいんさんといつも一緒にいたのに?」
「いいよ…もうどうだって…わたしはもうご主人さまを大切に思えない…」
ソラのその返事を聞くと、カワラバトは病室を出て行った。
「ソラ、どうしたものかな…」
キョウは病院の駐車場を歩きながら、ずっとそのことを考えていた。
「しーくいんさーん!」
カワラバトがキョウの隣に飛んできた。
「ああ、カワラバト。どうした?何かあった?」
「ほえ、最近ソラちゃんが入院したって聞いて、しいくいんさん寂しくないかなぁって思ったから、今日はしいくいんさんと一緒にいようって思ったの」
そう言ってカワラバトは私の腕をギュッと抱きしめた。
ソラは病室の窓から外を眺めていた。
ふと、駐車場でキョウとカワラバトが一緒にいるのが見えた。
キョウの手を握り、楽しそうにキョウと喋るカワラバト。
それを見ていると、ソラは自分の中に「何か」が込み上げてくるのを感じた。
だれ? ご主人さま。
何? 大切な人。
行ってしまう。
どこへ? 他の人のところへ。
行かないで。
これ以上失いたくない。
その時、ソラの中で「何か」が爆発した。
そしてソラは、弾かれたように病室を飛び出した。
「ちょーっと待ったぁー!」
2人の前へと滑り込むソラ。
「ソラ…お前…」
「わたし、完全復活!」
ソラはピースサインを作ってニッと笑う。
「良かった…心配したんだぞ…!」
「心配かけてごめんなさい、ご主人さま!」
キョウに抱きつくソラ。
キョウの方が背が高いのでソラは背伸びする形になる。
「ほえ、いつもの調子に戻ったみたいでよかったねー」
「カワラバト、ソラが復活しちゃったけどいいのか?私と付き合いたいなら入院してる間にいくらでもチャンスあったんじゃ…(小声)」
「ほえ、ライバルがいない時に抜け駆けしたら不公平だからね。私はいつか、私の実力でしいくいんさんを振り向かせてみせる!…とりあえず今日のところはソラちゃんに譲るけどね」
そう言ってカワラバトは飛び去っていった。
すごい立派な心構えだ…
「ご主人さまー!はやくはやくー!はやく遊ぼっ!」
ソラが手招きする。
何はともあれ、ソラが普段通りに戻ったみたいでよかった。
よし、ソラが退院したらいっぱい遊んであげよう!
「うん、今行くよ」
私はソラが呼ぶ方へ歩き出した。
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