2章 第7話

「さっきは返事聞けなかったなぁ…しいくいんさんは私のことどう思ってるんだろう…」


とぼとぼと歩くカワラバト。


「ほえぇ…もしも嫌われてたらどうしよう…そんなことないよね…?だって、いつもあんなに助けてくれるんだもん…」


ぐるぐると色々な考えが頭を巡る。


「うーん…ソラちゃんに聞いてみようかなぁ」


カワラバトの頭に浮かんだのは、キョウの事をパークの誰よりも知っていると思われるソラだった。


「しいくいんさんの家は…たしかここだよね」


体内地図を元にキョウの家を探し出す。さすがカワラバト、とても正確だ。

一応、規定上職員寮にはフレンズは入ってはいけないことになっているので、インターホンでソラを呼び出す。


「あれ、カワラバトちゃん!どしたの?」

「ほえ、あのね…私、しいくいんさんが好きなの。でも、それを伝えた後、どうしたらいいか分かんなくて…ソラちゃんなら何か分かるかなって思って聞きにきたの」

「ご主人さまのこと?カワラバトちゃんも同じ群れに入りたいの?」

「群れ…?よくわかんないけど、多分違う…もっと、しいくいんさんのことを良く知りたいし、仲良くなりたい、しいくいんさんにとってもっと特別な存在でいたいの!」

「うーん、言いたいことは分かったけど…それは無理だよ?」

「ほえ?」

「だって、ご主人さまはわたしのだもん。わたしとご主人さまは、こっちに来るずっと前からいつも一緒に居たし、お互いによく知ってるし、だからこれからもずっと一緒なんだよ!」


笑顔でそう言い切るソラ。


「そ、そんなのっておかしいよ!私だって、しいくいんさんのこと好きなのに、昔から仲がいいってだけで譲らなきゃいけないなんて…」

「あのね、私たちイヌはね、何匹かで集まって群れを作るの。その中で、つがいになれるのは1番えらいペアだけなの。だから、私とご主人さまがつがいになるのは当然でしょ?」

「で、でもそれは…!」

「まだ何か言いたいの?だったらさ、力関係をはっきりさせてからにしようよ!」


ソラの目に野生の光が灯る。

繰り出されたソラの拳を間一髪で避けるカワラバト。

カワラバトの目にも光が灯る。




何故だ…何故…家の前で死闘が繰り広げられているんだ…何で仕事から帰ったらこんな状況になってる訳?


「いいかげん…あきらめたらッ⁉︎」

「やだ…この気持ちは…大事にしたいッ‼︎」


空を飛べる分、カワラバトの方が有利だが、ソラの攻撃は飛び立つ隙を与えない。ソラの猛攻を避けるので精一杯のようだ。カワラバトはその間をぬってどこからか羽根を取り出し、手裏剣のように投げつけるも、全てソラにはたき落とされている。


「そもそも…最近登場したばっかなのに…前回前々回と主役はってて目障りなの‼︎」

「それは作者に言って!てか1章でたくさん出番あったじゃん‼︎」

「1章でも忘れられがちだった私の気持ちが分かるかあ‼︎」


なんか論点ズレてない?…って違う!この死闘を止めないと…でもこの中入っていったら確実に怪我じゃすまない…なんとかして外から止めないと…そうだ、あのひったくりの時みたいに…


「2人とも待て!止めろ!」

「ご主人さま⁉︎」「しいくいんさん⁉︎」


ソラとカワラバトの動きが止まる。


「あ…えっと…あの…これは…」

「何があったのかは知らないけど、とりあえず周りを見ろ?」


周りにはソラのとおぼしき爪痕がくっきりとつき、カワラバトの投げた羽根が散らばっていた。

あぁ、敷金はこれで吹っ飛ぶな…


「ご…ごめんなさい…」

「どうしてこんな事になったんだ?」

「それは…ご主人さまをカワラバトちゃんが取ろうとしてたから…」

「だからいつからしいくいんさんがソラちゃんのものになったの?」

「とりあえず落ち着けお前ら」


2人の意見を合わせると、ソラとカワラバトはどちらも私に好意を寄せており、私を巡っての争いだったらしい…要するに三角関係ってこと?

マジか。三角関係なんてドラマの中の話で自分には無縁だと思っていたが…巻き込まれてしまったか…

でもなあ…どちらかに決めたらそれはそれで相手がかわいそうだし、かといって決めずにこのままの関係だとお互いに良くないだろうし…困った…どうしたらこの状況を解決に持っていけるのか、誰か教えて…

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