第18話
「おい、ソラ、大丈夫か⁉︎しっかりしろ!」
突如倒れたソラに、周囲からざわめきが起こる。
「大丈夫ですか?キャッスル内に救護室があるので、とりあえずそこまで運びましょう!」
ここのスタッフらしき人が数人駆け寄ってきた。
彼らは手際よくソラを担架に乗せ、救護室へと向かった。私もそれに続く。
「脈はある。呼吸もある…大丈夫ですか?聞こえてますか?」
「う……ん…」
「自分の名前を言えますか?」
「……ソラ…」
「意識も戻った…とりあえず一安心ですが、今日一日はここで安静にしててください」
「はい…」
「あの、原因とかって分かりますか?」
「…恐らくは、貧血による軽い失神かと思います。見たところ、身体の方には貧血になりそうな特徴はないので、考えられる原因は、ストレスや疲労によるものかと…」
確かに思い当たる節はあった。見知らぬ土地、見慣れた姿とは違う自分、人混みetc。
そりゃあストレスも疲れも溜まるであろう。
「その様子だと思い当たる事があるんですね?ダメですよ、動物はヒトよりもストレスに弱いんですから。それはフレンズでも同じなので、その辺を気づいてあげることが重要なんですよー」
医者はそこで言葉を切った。
「今のところは命に別状はないですから明日には治ると思いますが、今日のところは安静にしてください。あなたもソラさんのそばに居てあげてください。きっと嬉しいと思います」
「…ご主人さま…わたし…死んじゃうの…?」
「大丈夫。死なないから安心して。きっとすぐ元気になるから。そして…疲れてるのに気づかずに、あちこちに連れて行ったりしてごめん…私がもっとしっかりしてたら…」
「ご主人さまは悪くないよ…!私も、疲れてるのに我慢してたから…」
観光ができる最後の日かもしれなかったのに、大変なことになってしまった…気づいてあげられなくて本当にごめんな…ソラ…
そして、とうとう滞在最後の日が来た。
初日に来た道をまた通り、パーク管理センターへと向かう。
この7日間に出会ったフレンズたちが頭をよぎる。
迷子になったソラを見つけ出してくれたハクトウワシ、パティシエのフクロギツネ、落語家の獣遊亭百舌、イヌの仲間をソラに合わせてくれたニホンオオカミ、さまざまなフレンズで賑わっていたジャパリカフェ、ジャングルを案内してくれたキングコブラにジャングルキャット。
来た時と同じようにエレベーターに乗り、アニマルガール相談課に行く。
窓口には、相変わらず数人の人がいた。
窓口に座った私は、名前と以前相談に来た件を告げる。
「決めました。私は…」
「ごめんな、ソラ。またすぐに会いに来るから…」
「本当に行っちゃうの…?」
「大丈夫、また来るから。だから…少しだけ待ってて?」
「…うん。わたし、ご主人さまのことずっと待ってるから!」
結局、ソラはパークに預けて私は家に戻ることにした。
本当はもっとパークに居たかったが、仕事等のことを考えると、その辺りをどうにかしないとそれはできなくなる。
私はソラにまた来ることを約束し、パーク発の定期船に乗り込んだ。
「またねー!ご主人さまー!」
「また、絶対に来るからなー!」
お互いに手を振るが、船はどんどん岸から離れていく。
声が届かなくなっても、ソラが手を振り続けてるのが分かる。
さよなら、ジャパリパーク。楽しかったよ。
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