第17話

ホテルに戻って荷物をまとめる。

明日からまたセントラルに戻って、決断前の最後の2日を過ごそう。

実は内心、まだ迷っている。

ソラはパークに居た方が仲間もいるし、楽しく日々を過ごせるだろう。しかし、私にも仕事や家のあれこれがある。両立は難しい…と思う。


翌朝、ホテルをチェックアウトし、私とソラはナヤゴ駅からまた電車に乗ってパークセントラルまで戻る。


明日は多分なにかと忙しくなるだろうから、今日が観光できる最後の日になるかな。おみやげとかも買うなら今日だ。

今日見る予定なのは…パークセントラルのシンボル、けものキャッスルだ。

デフォルメしたライオンやネコやキツネetcのシンボルで彩られた大きな建物。それがけものキャッスル。

中は子供用の遊び場アスレチックや、パーク史や科学的解説等が説明される博物館になっているらしい。

チケットを買って、いざ行こう!


最初の展示室は、パークが辿ってきた歴史についての展示だった。細長い部屋の壁一面に年表が書かれていた。


『海底火山の噴火により、小笠原諸島新島(現ジャパリ島)が誕生。第1調査隊が派遣』

『火山から噴出した未知の物質、サンドスターによって動物がアニマルガール(通称フレンズ)に変化する事例が発生。以降、この島を動物園とすることを決定』

『パーク職員、研究者及びその家族に限定した試験解放を実施』

『サンドスターから誕生する正体不明の生物、セルリアンによってパークセントラルが占拠される事件が発生。パークを閉鎖』

『1人の来園者と数人のアニマルガールによって、セルリアンのトップ、女王を撃退』

『パーク復興に向け、準備を進める』

『パークが正式開園。さまざまなイベントが催される』


…意外にもパークの歴史は古かった。この島自体は私が産まれたのとほぼ同じ時期に生まれてるみたいだし。

セルリアンによってパークが占拠された頃、私は中学生くらいだっただろうか。ニュースで頻繁にその事を報道していたし、謎の怪物、と言うところでクラスの何人かが話していたのを聞いたことがある。その事件も、パークが閉鎖されるにつれ、だんだん聞かなくなった。だから1人の来園者によって解決されたのは知らなかった…

アニマルガールの存在については、昔議論がなされたことを授業でも色々と習ったし、未だにネットニュースなどでよく見かける。

倫理的にどうだ、危険かもしれない、などという意見もあるが、私はそうは思わない。むしろヒトと仲良く共存していくことができる存在だと思う。アニマルガールの通称は、フレンズというらしいが、文字通りヒトの友人になれると思っている。


続いての展示は、パークの示す地理的特性を解説したものだった。

フィリピン海プレートの境目にできた火山の噴火でできたものである、とかサンドスターの謎の働きによって本来起こりえないさまざまな気候区分が1つの島に同居している、ということが書いてあった。


第1、第2展示室だけでもかなりのボリュームだったが、次の展示からはここのメインとも言っても良い、動物に関する展示だ。

リンネ氏の行った動植物の分類について、パークにいる動物の解説、アニマルガール本人によるコメント等々、かなり見応えのある展示が目白押しである。

絶滅した動物の剥製や骨格標本の展示もあったが、その場所のいくつかが空いており、

「空いている動物については、アニマルガール化が発生したため、展示を中断しております」

との但し書きが付いていた。

生きている動物からだけではなく、剥製などの標本からもフレンズ化は発生するらしい。


「この前会ったフクロギツネって、こんな動物だったんだね、ソラ」

「………」


話しかけるが返事がない。


「ソラ、大丈夫か?」

「え、あ、うん、大丈夫、大丈夫…」


そう言うとソラは膝から崩れ落ちて倒れてしまった…

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る