第14話

さて、何を頼もうか。メニューを手に取り、眺める。

コーヒーがなかなかに充実している…キリマンジャロ、ブルーマウンテン、モカ、コピ・ルアク…

案の定あったよコピ・ルアク…作り方がアレな上にめちゃくちゃ高い奴な…これは無いわ…

さらにメニューに目を通す。

よくあるフルーツジュースが数種類。全てパーク産100%らしい。特に珍しいものはないが、強いて言うならハチミツジュースだろうか。「ノドグロミツオシエ推薦!」とあるが、ノドグロミツオシエがどんな動物なのか分からない。

結局、アイスティーにした。


「ソラは何にする?」

「何があるの?」


ソラがメニューを覗き込む。が、よく分からなかったようですぐに顔を上げた。そういえばソラは字が読めないんだった…

説明してもいいが、私の国語力ではソラが理解できるほどの説明ができるとは思えない。


「じゃあ、私が選んだのでいいか?」

「うん、ご主人さまの選んだのならなんでもいいよ!」


コーヒーは、ソラにはまだ早い気がする。かといってジュースとかもソラには似合わない気もする(根拠ナシ)。じゃあ…間をとって(?)牛乳とか?


「ソラ、牛乳でいいか?」

「うん、いいよ!」


注文が決まったので、店員を呼んで注文する。テーブルに来たのはディンゴではなく、噂のピーチパンサーだった。


「ご注文は?」

「アイスティーと牛乳を1つずつ」

「以上でよろしいですか?」

「あ、アタイも頼んでいい?この、ハチミツジュースを1つ!」

「了解致しました」

「ねえねえ、ピーチパンサーさんってさあ、結局何の動物なの?」


注文のどさくさに紛れて、シフゾウが質問をする。


「私は私、ピーチパンサー以外の何者でもありません」

「でも、そんな動物、図鑑とかには載ってないけど?」

「俗に言うUMA、という奴でございます。この世には実在しない、想像の中の存在なのですよ」

「あ、じゃあさ、普段どんなことしてるの?滅多に見かけたって話を聞かないけど」

「すみません、そろそろ仕事に戻らないといけませんので…」

「あ、そうか…ごめんなさい…」


シフゾウの質問責めから解放されて去り際、


「減点3」


とピーチパンサーが呟くのが聞こえた気がした。気のせいだよね?


数分で注文した品がテーブルに置かれた。


「で、さっきの質問なんだけど…」

「お客様、そんなに易々と他人の素性を探るものではありませんよ」


ピーチパンサーの口調は優しいが、有無をも言わせないオーラを放っている。

これにはシフゾウも頷くしかなかったようだ。


頼んだ紅茶を飲む。香りと渋みがいい具合だ。


家畜ってアニマルガールになり得るのだろうか?ソラが美味しそうに牛乳を飲むのを見ながら考える。

ペットがなるのに家畜はならないというのも変だから、おそらくなるのだろう。

そうなると、食べ物はどうするんだろうか。もしも牛肉とかを食べてしまったら共食…いやなんでもない。ていうか家畜のアニマルガールの知り合いとか、担当飼育員とかも肉を食べづらくなるだろうな…

そういえばこの5日間、食事のために立ち寄ったレストランのメニューには、どの店も原材料名がほぼ全部明記されてたな…アレルギーとか宗教上の理由とかのためだと思っていたけれども、もしかしてあれってそういう理由なのか…?

これ以上考えると泥沼にはまりそうなので、もうこの件について考えるのをやめた。

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