第23話

 その後いくらかのやりとりをしてから、サイグが欠伸をしたのを合図に、今夜は遅いから寝ようということになった。吸血鬼二人は、逆に目が冴えてきたところだったため、彼(?)らを残してであるが。


「久々に会えて良かったよアーク、今日は楽しかった。どうにもここの生活は刺激が少なくてね、嫌いじゃあないんだが」


「私もだ。いや、私の方はあいつらのお陰で刺激には満ち満ちているがね」


「そうだね、面白い子達だ。しかしアーク、随分長い間あんな場所で隠居していたけど、これからどうするつもりなんだい?」


「ん、そうだな、神の領域に踏み込む準備はある。そろそろ、時期かもしれんな」


「へぇ、遂にか、良くやるね」


「ああ。まあ、神と戦うことになるかは実はまだわからんのだが」


 そのための準備はしてきたが、それで神に勝てるかは不明だ。寧ろ勝算は薄いと言える。まずは神の領域に踏み込んでどうなるか、それを調査する必要があった。


「君のいた世界の果ての淵、その向こう岸に神の領域があるという話だったね」


「ああ、所詮は地続きの世界にいる者達だ、神というのは人々が恐れる程、強大なモノでもなかろうよ」


「そうだね、案外、人や吸血鬼と変わらないのかもしれない。竜の神は実際ただの長生きしただけの竜って話だしね」


 竜はこの世界に於いてどこまでも例外的な存在だ。ある時唐突に世界に現れ、永い時を経て成長した原初の竜が、ほんの気まぐれで神の領域に踏み入った。無論人の神と光と闇の神は驚愕し、自分達の世界に降り立ったそれを排除しようとしたが、如何なる方法も原初の竜には通用せず、それは他の神に何をするでもなく神の領域に住み着いたという。神の領域に行く前に原初の竜が残した卵が、後に竜達が世界に生息するようになる要因になったと神話では語られている。


「長生きしただけで神を圧倒出来るのだから竜というのは恐ろしい。神の領域に行ったとしても、竜の神とだけは戦いたくないな」


「武運を祈るよ、明日も、いずれ来る日もね。さて、ボクもなんだか眠くなったよ、おやすみアーク。良い夢を」


「ああ、おやすみカール。良い日々を」


 そうして、かつての友人達は各々の部屋に分かれていった。

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