第13話

 「なあアーク、その人形、どうするんだ?」


 元の部屋に戻り、テーブルの上に試作零号を置いたアークに、サイグが聞いた。


「少しやりたいことがある。まあ今日は聞いての通り動くのもやっとだから明日に回すよ」


「ふうん、しかし、まだ生きてるみたいだな……」


「人形に死は無いさ。壊されようと、作り直せばまた動く。まだコイツは死んではいないんだよ」


 アークが壊れた人形の頭をそっと撫でる。閉じられたまぶたは今にもまた開きそうだった。

 突如自分の生活圏に出現した謎の物体に興味を持った竜の赤子が頬を舐めたが、人間の肉と明らかに違う感覚に驚いていたのが、唯一それを人形であると証明しているかのようだった。


「なんだか寂しいわね、自分にとても近しい人がいなくなってしまったみたいよ、アナタの顔そのままなんだもの」


「私が死んだら、お前は同じように寂しがってくれるのかな?」


「あら、1000年近くも思い通りにならなかった人がようやく思い通りになるんだから嬉しさでショック死するほど喜ぶと思うけど?」


「オレモ喜ンデヤルゾゴ主人」


「貴様ら、誰のお陰で今ここにいられると思っているんだ……」


「美貌でアナタを籠絡した自分のお陰?」


「優秀ナ人形トシテ仕エテイル自分ノオ陰?」


「っ……はぁ、怒鳴る気力ももう無い」


「あらつまらない、もっと喋りましょうよ、弱らせて意識が朦朧としてきた所を一思いに殺してあげるわよ?」


「殺人計画を一々懇切丁寧に教えてくれる点には感謝しているよ」


 アークは心にも無いことを良いながら椅子に座り込んだ。テーブルの上の人形が騒がしさに薄く微笑んだ気がした。

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