030: 2018/00/13 「追い詰めたぞ!」/あか

めたぞ!」


ふくろこう。少女は辺りを見回すが、かべを伝うにも手をける場所すら無く、ばんきゆうすだ。


「はは、救護の女をつかまえようなんて、しゆ悪いな」


くるまぎれに発した言葉と同時に、こしのベルトに掛けていたサーベルをき、す。

男数人相手にまわすも、うでつかまれ、にぶい音の後に「あか」がぽたぽたと落ちた。


------


「っ……」


悪夢に起こされて、京子はいやな気分だった。

『まるでどこかで見たようなリアルさ』に、横向きになって大きなため息をついた。


小学生のころに、男子とケンカしたときの、古い、小さなきずあとを見る。

一応病院で見てもらった時の、父親のじゆんの心配そうな表情を思い出す。

あれだって、だれかを守ろうとした傷だから、その場面でもそうだったのだろう。


「……別に、悪いことで追い詰められたわけじゃないよな」


もし夢の中の主人公が自分だったら、と考えると、気分は晴れてきた。


「死ぬなよ、オレ」


夢の中の自分に、こぶしを差し出した。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

喫茶店フォレスタ 《ワンライ》 うらひと @Urahito_Soluton

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ