第4話
東向きの大きな窓。吹き抜け構造の天井は高く、開放的な空間が広がっていた。見慣れた光景は間違いなく、大学のカフェテリアそのものであった。学食を兼ねた建屋の2階部分にカフェテリアは設けられていた。その景観はツカサの記憶にあるものと何ひとつ変わらないものであった。手すりに沿うように、焦茶色の正方形のテーブルがいくつか並べられ、入り口から数えて、3つ目のテーブルをいつも使っていた。
案の定、シグレの<仲介者>はそのテーブルに座っていた。
デイヴィッドの言う通り、5年という刻はツカサの彼女に対する印象を変えた。シグレの<仲介者>は長く伸びた髪をひとつに束ねていた。体つきは変わらないが、彼女のまとう雰囲気は少しばかり大人びて感じた。
ツカサの<仲介者>は彼女の<仲介者>の対面に座った。テーブルには彼が普段注文するカフェラテが置かれていた。
「ツカサ、あなたは変わらないのね」シグレの<仲介者>がいった。
「君は随分と変わったようだね。なんというか、綺麗になった」
ツカサはどう反応するべきなのかが分からなかった。彼の<仲介者>は手前に置かれたカフェラテを口にした。甘く、暖かい感覚が口の中に広がっていくのを感じた。たとえ、それが機械に魅せられている錯覚だとしても、ツカサの心はあの日の懐かしさに浸っていた。
「違うわ、ツカサ。仮想会議室での見た目なんて飾りよ」
容姿は変わっても、彼女の本質は変わらない様子であった。「その気になれば好き放題に見た目を変えることができる」
シグレは間違っていない。仮想会議室は互いのナノマシンを介したコミュニケーション手段の一つでしかない。こうして向き合っている相手も現実の彼女とは異なる<仲介者>である。お互いの意思を伝えるために用意された代わりの存在。そのため、見た目は本人の意思で自由に変えられる。
しかし、社会に存在する暗黙の了解、あるいはエチケット、マナーと呼ばれる法律とは異なるものが彼らの行動を縛っている。一般に、仮想会議室での<仲介者>の姿は本人に似せることが推奨されている。
ツカサも知らず知らずのうちにその規則に従っていた。
「ということは、君は今もショートヘアなのかな。今この瞬間だけイメージを変えているのかい? 何のために」
シグレの<仲介者>は首を横に振った。「確かに、今の私たちに容姿を偽るメリットはないわ。むしろ、ありのままを伝えた方が、再会の喜びに浸ることができるもの」
彼女は角砂糖をひとつ摘んだ。
「僕は以前の−−ショートの頃の君の方が好きだ」ツカサの<仲介者>がいった。
シグレの<仲介者>は笑うと、角砂糖を口の中に入れた。「考えておくわ」
「今日はどうして、僕を呼んだんだい? 君はあの研究室には居ないのだろう?」ツカサの<仲介者>が訪ねた。「君は誰よりもこの空間を嫌っていたじゃないか」
シグレの<仲介者>はゆっくりと頷いた。「ツカサ、人は変わるものよ。確かに、3年前の私は仮想会議室が嫌いだった。でも、今は違う。この空間を好むようになった」
「何が君の心境を変えたんだい?」
しばらく考えたのち、シグレの<仲介者>が口を開いた。「人でいることが辛くなったから、かしら?」
自分の感情に自信が持てないのか、あるいは心境の変化を思い出せないのか、シグレの<仲介者>は唐突にそのようなことを口にした。それはある意味で、彼女の口癖のような言葉であった。ツカサも学生時代に何度かその言葉を耳にしている。それを口にしていながらもなお、彼女はリアルコンタクトを求めていた。その矛盾した感情がシグレの心境を変えたのだろうか。
「その結果が、仮想会議室かい? 君にしては思い切ったことをしたんだね」
シグレの<仲介者>は笑みを浮かべた。「私にとっては思い切ったことじゃないんだけどね。ある意味、私の願いのようなものだったから」
ツカサの<仲介者>は訝しげな表情を浮かべた。「君の願いは叶ったのかい?」彼が尋ねると、シグレの<仲介者>は二つ目の角砂糖を取り出した。「わからないわ。まだ、模索中なのかもしれない」
彼女の<仲介者>は角砂糖を咥えた。「昔、”人間とは何か”について議論したことは覚えている?」
ツカサの<仲介者>は笑った。「君との会話は大抵、それに関する議論だったじゃないか」
二人がこうして大学のカフェテリアで会うときは、シグレが始める議論にツカサは毎回付き合っていた。議論のテーマは一貫して、”人とは何か”。時折、彼女が持ってきた科学誌や論文の話をすることもあった。しかし、頻度で言えば圧倒的に前者の方が多かった。多くの場合、ツカサがシグレの持ってきた持論を聞くのみで終わった。
シグレの<仲介者>はニコリと笑った。「あのときは私が一方的に意見を言うだけだったわよね。今日はツカサの意見を聞かせてくれないかしら?」
ツカサは訝しげな表情を浮かべた。「君はそんなことのために僕を態々呼んだのかい? はるばるA国の<アリズミー>の研究所へ行くように」
「不服だったかしら? 旅費は全て私が負担したつもりだけれども?」シグレの<仲介者が>が首を傾げた。
確かに彼女の言う通り、メッセージには航空機のチケットも添付されていた。支払いは既に済まされており、ツカサのすることと言えば強引に休暇を取得する程度のことであった。
「チケット代くらいは私を楽しませてくれないかしら?」シグレの<仲介者>がいった。
ツカサの<仲介者>は苦笑いを浮かべた。「僕は君ほど優秀ではない。博士課程にも進学できなかったしね。君を楽しませられるほどの話ができる自信はない」
シグレの<仲介者>はようやくコーヒーを口にした。「ツカサ。あなたの話が面白いかなんて、蓋を開けてみなければ分からないわ。今の私には観測することは出来ないのだもの。それにね、面白さの指標なんて、受け手が決めることよ」
ツカサの<仲介者>は小さな溜め息を吐いた。「わかったよ」
ツカサは何から話すべきか迷った。彼にとって人とは、”記憶”と”思考”、その両方を持つ存在と位置づけている。”記憶”に関しては以前、シグレと議論を交わしたものと同じだから問題はない。では、”思考”は−−。あのとき、シグレは”思考”については触れてはいなかった。彼女は記憶が人の本質の全てであり、我々の体は”記憶”を観測するための装置でしかない、と。シグレの捉え方の中に、”思考”を組み込む必要は感じられなかった。つまり、ツカサは”思考”の在り方と在るべき訳を言語化しなければならない、彼女にも分かるように。
「君は以前、人の本質は”記憶”であると言っていた。”記憶”にアクセスできるのであれば、肉体なんて、あくまで飾りに過ぎないと」ツカサはゆっくりと考えをまとめ、自らの<仲介者>に言葉を紡がせた。
「飾り、とまではいった覚えはないけれども、確かに似たようなことを口にした覚えはあるわ」
「僕は”記憶”だけでは不十分だと思う」ツカサの<仲介者>はカフェラテを口にした。「人を語るには”思考”も必要だと思う」
シグレの<仲介者>が首を傾げた。「なぜ?」
ツカサは今の考えが正しいものなのか、自信が持てずにいた。彼女に言えば笑われてしまうかもしれない。しかし、それがツカサの出せる最良の考えであった。
「紛いなりにも、人は生命の一種だからだ」ツカサの<仲介者>がいった。
彼女の<仲介者>小さく笑った。そうして、頬にかかった髪の毛を片手ではらった。「ツカサ、そのためには生命を定義付ける必要があるわ」
彼女の言葉にツカサの<仲介者>は大きく頷いた。「あぁ、君の言う通りだ」
生命が何であるか、定義付けることはそれほど難しいことではない。「生命とは”自己複製を行う計算機”、として差し支えないだろう」ツカサの<仲介者>がいった。
人に限らず、世間が一般に示す生命は、種を保存するため自己複製を行う。いわゆる、繁殖というものだ。そして、計算モデルは人がものを考えるときの流れをモデル化したものであるのであれば、機械といわず、計算機といったほうが正確であると思った。
「その定義だと、コンピュータ・ウィルスもまた生命に位置付けられるのではないかしら?」シグレの<仲介者>が首を傾げた。「あれを生命に含めても、あなたは問題ないというの?」
確かに、コンピュータ・ウィルスもまた自己複製をする機能を有している。感染元でコピーを生み出し、次の感染元へと移動する。そのプロセスはさながら、生命の行う種の保存プロセスそのものであった。
ツカサの<仲介者>は頷いた。「かまわないさ」
彼女の言う通り、コンピュータ・ウィルスも生命の中には含まれる。だが、ツカサの思う生命の考えの中で、コンピュータ・ウィルスが生命であるかなど、些細な問題に過ぎなかった。人とそれらを分けるひとつの指標が彼の中にはあった。
「奴らは未だに”知性”を有してはない」ツカサの<仲介者>がいった。
シグレの<仲介者>は三つ目の角砂糖を取り出した。「”知性”? それがあなたの言う”思考”なの?」
「正直な話、”知性”と”思考”が同一ものかどうかは僕にもまだ見定められていない。もしかしたら、僕の見当違いで、全くの別物なのかもしれない」ツカサの<仲介者>がいった。「僕が思うに”知性”の所在は、”己が何者であるか”を問うサブルーチンを持つことだ。別の言い方をすると、哲学という概念を有するか、どうか」
「確かに哲学は学問の起源と言われているわ」シグレの<仲介者>は角砂糖を口に入れた。そして、ゆっくりとコーヒーを口にした。「ツカサ、あなたはもしかして、対象が人であるかどうかを考えるためには、大前提として生命である必要があると言いたいの?」
ツカサの<仲介者>は頷いた。「それは君も前提にしていたことじゃないのか?」しかし、ツカサの予想に反して彼女の<仲介者>は首を横に振った。「あなたの思うほど、人が生命である必要があるか、なんて考えたこともなかったわ」
ツカサは言ってから気がついた。シグレとはそういう者だと。
「ツカサの意見を聞く限りだと、人の在り方は”記憶”や”思考”なんて些細なことに感じるわ。単純に”知性”を持った生命。それで十分なように感じられるわ」シグレの<仲介者>がいった。
ツカサは彼女の言葉を聞いて納得した。「確かにそうなのかもしれない」
”思考”の意味を、その正体を掴めないのではなかった。ツカサは”思考”の在り方を重要視してはいなかった。だから、自分の中でも明確な定義を見出せずにいた。その結論を目の前に座る少女は咄嗟に導き出してしまった。長い間、ツカサの中を渦巻いていた謎をその場で聞いてしまっただけで。
「けれども、”知性”を持った生命のすべてが人であるとは限らないわ。まだ私たちが見つけられていないだけかもしれない」シグレの<仲介者>がいった。「もしかしたら、私たちですら、”知性”を有していないのかもしれない」
ツカサの<仲介者>はゆっくりとカフェラテを飲み干した。「君の指摘はいつも的を射ている」空になったカップの底を見つめ、ツカサは考えを巡らせた。「人というものは僕らが思っているもの以上に曖昧なのかもしれない」
いつかの昼下がり、ツカサはシグレと交わした会話を思い出した。彼女は言っていた、人であるかは周囲が決めるものである、と。ツカサは人々の認識は社会からの刷り込みよって形成されている、と解釈した。二つを合わせると、人に必要なモノは個々人が持つ素質では判断できない。はじめから、人を決定づけるものは、その人は−−個人の中には何一つ存在しはしない。その者を取り囲む、”社会”こそが人の本質ではないだろうか。
ツカサは一度は”社会”に委ねることを否定した。論理を否定されたような気がしてしまったから。しかし、己の考えを整理すると、結局のところは”社会”という集団意識の中でしか、自分を確立できない、そんな結論に至ってしまった。それは、ツカサもまた”社会”を構成する一員である以上、仕方のないことなのかもしれない。
ツカサは曖昧無垢な考えを一通り整理させた。そして、今抱いた考えをシグレに対してゆっくりと説明した。彼女は否定するでもなく、時折相槌を打ちながらツカサの考えを聞き入れた。
「ツカサ、あなたは”社会”なんていう曖昧なものに身を委ねるわけ?」全てを聞き終えたシグレの<仲介者>がいった。
ツカサの<仲介者>は小さく息を吐いた。「君は認めたくないのだろう」
「当たり前よ。”社会”なんて、論理を省くために構成された愚かな単位でしかない」シグレの<仲介者>は吐き捨てるようにいった。「”社会”に身を委ねる必要があるなら、人なんて辞めた方が幸せよ」
「僕らは皆、愚かだ。”社会”の中でしか生きる術を持たない」
ツカサがいくら否定しようとしても、ツカサ自身の存在は”社会”によって支えられている。その”社会”を否定することは、ひいてはツカサは自らの存在を否定することに繋がる。哀しいかな、ツカサはまともじゃないこの社会に身を委ねるしかない。
しかし、シグレの<仲介者>は首を横に振った。「違うわ、ツカサ。社会に委ねる必要はない。無理にでも認めさせてしまえば良い」
ツカサの<仲介者>は声を出して笑った。「どうするっていうんだい? まさか、すべての人を洗脳するつもりじゃないだろうな」
それは冗談とは言い切れなかった。インプラントがここまで普及した今、全員のインプラントへ特定のコードを流してしまえばその認識を刷り込むことは、あながち不可能であるとは言い難い。生きるためにインプラントに身を委ねる人が居る社会だ、そのような洗脳手段が存在してもおかしくはない。
いいや。と、ツカサは頭を振った。もしかしたら、既に為されているのかもしれない。
「長期的な刷り込みは、やがて真実なって根付く」シグレの<仲介者>がいった。「たとえ不合理なものであったとしても、人の慣れというものはそう簡単には変えることはできないわ」
「たとえそうだとしても、そのコストに見合うメリットがなければ意味はないだろう」ツカサの<仲介者>がいった。
シグレの<仲介者>は4つ目の角砂糖を取り出した。「メリットがあるかなんて、本人にしか判断できないわ」彼女の<仲介者>はそれを口に入れ、残っていたコーヒーを全て飲み干してしまった。「多くの場合、コストが高過ぎて誰もしないだけよ」
「君にはそこまでして通したい通念があるのかい?」
彼女の<仲介者>は頷いた。「あるわ。だから、あなたを呼んだのよ」
カップをテーブルに置き、シグレの<仲介者>はまっすぐにツカサの瞳を見た。「ツカサ、最初の質問に戻るわ」
「今の私は人ですか?」
彼女の言葉を耳にして、ツカサは全てを納得した。あれほど頑なであった彼女が仮想会議室での面会を希望した理由も、研究所に訪れたとき、彼女の部屋へ案内されなかった理由も。はじめから、彼女はツカサの知る尺度の人ではなかった。
人は変わるもの……とは、よく言ったものだ。
彼女−−シグレの場合はあまりにも変わり過ぎていた。彼女にとってこの空間は仮想なんかじゃない、ここは彼女にとっての現実である。
「やはり、君は人を辞めていたんだね」ツカサの<仲介者>は呆れたようにいった。
「違うわ。あくまで肉体を捨てただけよ」彼女は首を横に振った。
それは確かに、シグレが望んでいたことであった。「ツカサ、私は言ったはずよ。チャンスがあるなら飛びつくって」
「だからと言って、本当にやるとは思わないだろう。第一、元の君の体はどうしたんだい?」
「処分したわ」予め用意してあったかのように彼女は言った。「もう私には必要のないものだもの」
「それなら今の君の本体はどこにあるっていうんだい?」
いくら肉体を捨てたからといっても、その情報を残しておく必要がある。彼女の記憶なり、仕草なりをシミュレートするための本体がどこかに存在するはずだ。
「だから、あなたを<アリズミー>の研究所に読んだのよ」彼女はいった。「前に言ったでしょう? 人は”記憶”へアクセスする量子計算機であるって。それに最も近いものがあるのが<アリズミー>よ」
「つまり、君はSQPUに自分の”記憶”をコピーしたというのかい? 正気の沙汰とは思えない」ツカサは呆れた。確かに量子演算をシミュレートする機械であれば、人のそれに近いことが可能である。しかし、SQPUが本当にシグレの記憶にアクセスしている保証はどこにあるのだろうか。
「そもそも君は”記憶”は量子情報って、言っていたじゃないか。その時点で完璧な複製は行えないはずだろう」
「観測されない齟齬は、ないも同じよ?」彼女が言った。
それはある意味、彼女からの挑戦状のようなものだ。齟齬をみつけられるものなら見つけてみなさい。と、彼女はそう言いたいに違いない。だが、それは論点を逸らしているだけだ。彼女がツカサに問うた内容は、”今の彼女が人であるか”。すなわち、彼女にシグレとの齟齬があるからといって、それを人でない、という論拠にすることはできない。
ツカサの<仲介者>はゆっくりと息を吸った。そして、すべてを吐き出してからいった。「確かに齟齬はある。でも、些細なことだ。僕もそれを指摘するつもりはない」
この場で彼女は4つ目の角砂糖を口にしていた。シグレはいつも3つで辞めていた。それがツカサに分かる唯一の齟齬であった。とはいえ、指摘をするには不十分であった。
「正直な話、今の僕には判断がつかない」ツカサの<仲介者>がいった。「どうせ君のことだ、自己複製の対策も済んでいるのだろう」
ツカサが尋ねると、彼女は頷いた。「えぇ、これまでは化学反応で行っていたものが、情報のやり取りで済まされるだけよ」
情報のやり取りも一種の化学反応と言える。物理現象というべきかもしれない。彼女は単純な’0’か’1’の状態のやり取りを介して、社会を生きようとしている。
「君にとって、確かにこの空間はリアルだ」ツカサの<仲介者>がいった。「でも、僕の中では仮初めの、機械によって見せられている幻覚、という事実には変わりない」
すかさず彼女が言い返した。「幻覚だから、私の存在も偽りだと言いたいの?」
「偽りの現実を僕は受け入れられない」ツカサの<仲介者>がいった。「とはいえ、僕もまた愚かな”社会”の愚かな市民のひとりでしかない。僕ひとりの尺度で、君を測ることはできないよ」
もし、社会が彼女を人として受け入れるのであれば、ツカサもまた受け入れざるをえない。
今の彼女とインプラントを植えた人。その違いは、完全に機械に身を委ねたか、局所的に機械に身を委ねたか。後者は元から根付いている先入観から人だと受け入れやすい。だが、前者は? 新たな人の形を、ツカサはどう捉えるべきか分からなかった。
結果、彼は”社会”という不安定な存在に判断を委ねるしかなかった。
彼女はがっかりとした仕草を見せた。「残念、ツカサの意見を聞きたかったのに」
「どうして、僕の意見を求めたんだい?」
「あなたが私のことをよく知っているからよ」彼女は笑顔を見せた。
それがどういう意味なのか、ツカサには分からなかった。「最後に聞かせてくれてくれ」
笑う彼女にツカサの<仲介者>は真面目な顔をしていった。
「肉体を捨てた感想は?」
彼女は満面の笑みを浮かべ、とてもよく弾む口調で言った。
「生きてきた中で最高に幸せよ」
仮想会議室 天音川そら @10t
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